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落語の小噺

ワイン寄席

落語の小噺とは、字の通り小さな噺。短い落とし噺をいいます。
「姐さんイキだねえ」「あたしゃ帰りだよ」。これだけで立派な小噺です。
やや長めの小噺もあって、短い持ち時間の高座で、単独で掛けられることもあります。
このタイプでは、「味噌豆」「からぬけ」「たけのこ」などが知られていて、ちゃんと演題も付いています。
一般的な小噺としては、さらに短いものが主流を占めています。落語本編の付属として、本編の前に振られるものです。
落語の本編と同系統の小噺が選ばれます。大事な役割を担っているので、ウケなくなっても残っていたりもします。
そんな落語の小噺を、ジャンル別に見ていきましょう。
タイトルは確立しているとは限りません。便宜上付けているものもあります。

目次
1.粗忽の小噺
2.酒の小噺
3.泥棒の小噺
4.稽古屋の小噺
5.幽霊の小噺
6.夢の小噺
7.ケチの小噺
8.ノンジャンル
9.セクハラ気味の小噺

粗忽の小噺

粗忽(そこつ)という言葉も日常生活ではあまり使いませんが、落語の世界では定番で、うっかりものの意味です。
落語に出てくる粗忽者は、うっかりというより、頭のネジが緩んでいるか、最初から締まっていないような人物ばかり。
自分が誰なのかすら、うっかりすると忘れてしまうような人たちです。
この系統の落語には、次のものがあります。

・堀の内
・粗忽の釘
・粗忽長屋
・粗忽の使者
・松曳き

最後の二つは、粗忽な武士の噺です。
落語の世界では町人だけでなく、武士にも粗忽者がいるのです。
粗忽噺の前に振る、小噺を見てみます。

身内も忘れる


「向うに知ってる人がいるよ。あ、こっち見てるな。誰だったかな、会ったことあるけど思い出せないな、ああ、もうこっち来ちゃった。・・・こんにちは」
「なんだ」
「・・・お見それしまして。どちらさまでしたっけ」
「お前の親父だ」

ついで


「定吉、ちょっと郵便局まで行っとくれ」
「へーい」
「あ、用も聞かないで飛び出してったよ」
「旦那、戻りました」
「郵便局どうだった」
「特に変わったことはありませんでした」
「手紙を出してもらおうと思ったんだがな」
「なあんだ。なら、ちょうど今行ったところだったのに」

酒の小噺

「飲む打つ買うは男の三道楽三拍子」と言いますが、このうち「飲む」はお酒のこと。
お酒の落語は今も昔も大人気です。
お酒のマクラを振ってから、こんな噺に入ります。

・親子酒
・試し酒
・替り目
・禁酒番屋

ちなみに本物の酒飲みより、下戸の噺家の中に、意外と酒の噺の上手い人が多いです。
自分が飲めない分、酔っ払いの様子を冷静に観察し、落語に活かすわけです。

ぐでんぐでん


居酒屋から出てきた、いいご機嫌の二人連れ。
空に上がっているのがお日さまか、月かもわからない。論争になり、通りすがりの人に訊いてみる。
訊いた相手もぐでんぐでん。「あたしゃこの辺のもんじゃないからわからない」。

居酒屋で


居酒屋にて。男二人が会話をしている。
「よくお見掛けしますけど、このあたりにお住まいですか」
「あたしの家は、向うの角を曲がって3軒目です」
「? 角を曲がって3軒目? それ、あたしのうちですよ」
「なに言ってるの。あたしん家だよ」
・・・
「いいのあそこ、なんだか揉めてるけど」
「いいんですよ、親子なんですから」

泥棒の小噺

泥棒ものは、寄席で掛からない日のない人気の演目。
「お客様のふところを取り込む」といって縁起ものです。
泥棒の噺は非常に多いのですが、ごく一例です。

・鈴ヶ森
・夏泥
・締め込み
・出来心
・転宅

泥棒小噺のおなじみのフレーズ。
「落語には石川五右衛門なんて人は出ませんで、その子分の二右衛門半とか、一右衛門なんていうのが出てきます」
実際には誰も出てきません。

足の速い泥棒


逃げ足の速い泥棒を、町内一足の速い男がつかまえる。
「急いでどこ行くんだい」
「泥棒捕まえるんだ」
「泥棒なんていねえじゃねえか」
「後から追っかけてくんだ」

杭盗人


「お前さん、台所でガタガタ音がするよ。泥棒じゃないかい。」
「確かに音するけど、ねずみだろ」
「・・・チューチュー」
「ねずみより、大きくないかい」
「猫かな」
「・・・ニャーン」
「もっと大きいんじゃないかい」
「馬かな」
「・・・ヒヒーン」
「もっともっと大きいよ」
「象かな」
「ゾウ?・・・こりゃいけねえ。逃げよう」
「あ、泥棒だった。池に飛び込んだよ。あそこに影が見えるけど、泥棒かな、杭かな」
旦那が竿で泥棒をつついて、「杭か、泥棒か」。
思わず泥棒「クイクイ」

仁王


浅草の観音様に泥棒が入り、賽銭箱を担いで表から出ていった。
門番の仁王さまが泥棒を捕まえ、地面に叩きつける。
さらに大きな足で泥棒の腹を踏みつけたので、泥棒たまらず一発、「ブッ!」
仁王「くせものー」
泥棒「におうか」

※泥棒噺に入るつなぎとして便利なものの、ウケない小噺の代表として、これ自体ギャグになっています。

稽古屋の小噺

落語の世界では稽古が盛ん。
通うのは、女師匠を目当てにしている町内の若い衆です。
東京だと稽古の噺はもっぱら「あくび指南」です。他には「稽古屋」「汲み立て」など、たまに掛かります。

女師匠と男師匠


どこの町内にも1軒は稽古屋がある。なんでも教える五目の師匠。
師匠はなんといっても女に限る。
「今度来たお師匠さん、小股の切れ上がったいい女。二十しっぱち三十でこぼこ。婆やと雌猫1匹だけだとよ」
「本当か、ありがてえ」
なにがありがたいかわかったもんじゃない。
これに比べると、男の師匠は人気がなかった。
「今度の師匠、女かい」
「ううん、男」
「男オ? 水でもぶっかけとけ」
犬かなんかと間違えてるという。

こたつ


稽古屋で、女の師匠と弟子どもが一緒にこたつを囲んで休憩中。
こたつ布団の下を探っていると、師匠の手に触れた。
思わずぐっと握ってしまうと、なんと握り返してきた。
そこに奥から、師匠のおっかさんの声が掛かる。
「お昼できたから先に済ませちゃいな」
「はーいおっかさん。じゃ、みなさんちょっと失礼します」
「・・・あれ、師匠いなくなっちゃった。これ、誰の手だ・・・お前か!」
「まあ、いいじゃねえか。せっかくだから腕相撲でもしよう」

幽霊の小噺

夏になると、怪談噺が掛かります。
東京には、牡丹灯籠や真景累ヶ淵など、本当に怖いものもありますが、寄席で掛かる多くは「なんちゃって怪談噺」です。
「お菊の皿」(皿屋敷)が多いです。
あとは「へっつい幽霊」など。

昼間出る幽霊


「誰だお前」
「・・・幽霊で」
「まだ昼間じゃねえか」
「・・・夜は怖いんで」

昔の怪談噺


昔の怪談噺は、続き物であり、連夜掛けた。終わりのセリフは毎日決まって、「げに恐ろしき、あ、執念じゃなあ」
毎日来ていた子供が覚えてしまい、「げに恐ろしき」といつものセリフに入るところで声を出す。
「おじさん、今日も執念だろ」
「・・・妄念じゃなあ」
また翌日同じ子供が、「おじさん、今日は執念かい、妄念かい」
「・・・残念じゃなあ」

夢の小噺

夢は落語では、設定として使われることが多いのです。
「目が覚めたら夢だった」というだけで、さまざまなドラマを生み出せます。有名なところでは「芝浜」や「鼠穴」など。
夢そのものを扱った落語もいくつかあり、有名なのは「天狗裁き」です。
最近、「夢の酒」という噺が流行っていて、天狗裁きをしのぐ勢いです。これも、小噺からできた落語です。

酒飲み


ある男、いい酒をもらったので燗をつけて一杯やることにする。
いい感じに燗がついて、さあ飲もうと思ったところで目が覚めた。
「ヒヤで飲めばよかった」

※ 「夢の酒」の原型です。

ケチの小噺

ケチの落語も「味噌蔵」「片棒」など多数あります。
主人公はだいたい、ケチで身代を築き上げた「赤螺屋ケチ兵衛」さんです。
赤螺はあかにしと読み、ふたを固く閉じた貝です。「握ったら離さない」たとえとして使われています。

金づち


「釘が出てるよ。着物引っ掛けるといけないから打ち込んじゃおう。お隣行って金づち借りといで」
「行ってきました」
「貸してくれたか」
「金の釘を打つと、金づちがすり減るからダメだって言われました」
「なんてケチな野郎だ。もういい、うちのを出して使え」

もらえるものは


「ケチ兵衛さん、あんたなんでももらうって本当かい?」
「ええ、なんでもいただきますよ」
「じゃ、俺の『屁』をやろう。もらってくれるかい」
「ええ、せっかくですから頂戴します」
ケチ兵衛さん、手のひらに屁を受けて、しっかり握り、自分の畑へ行って手を開きます。
「ただの風よりましだろう」

ノンジャンル

小噺の中でも短いものを、ジャンルを問わずご紹介します。


「お前さんに吊ってもらった棚だけどね、昨日落ちたよ」
「落ちた・・・ことによると、なんか乗せてねえか?」

漢字


「魚屋のおやっさん、『司』って漢字はどう書きましたかいな」
「『同じ』ちゅう漢字を2枚におろした骨付きのほうや」

ねずみの大きさ


ねずみを捕え、箱の中。
「このねずみ、ずいぶん大きいな」
「なに、小さいよ」
「大きいよ」
「小さいよ」
中でねずみが「チュウ」。

狐と狸


狐と狸が化け比べ。
狐が御殿に化けた。狸は宮殿に化けた。
五点と九点で狸の勝ち。

飯炊きの権助


奉公人の権助はいつも無愛想。隣の主人に「今日は寒いね」と挨拶されても「おらのせいでねえ」。
権助の主人が挨拶を教えたので権助、「寒いね」に対して「このぶんでは、お山は雪だんべ」と話を合わせられるようになる。
ある暑い日、隣の主人に「権助さん、今日は暑いね」と声を掛けられた権助、「このぶんでは、お山は火事だんべ」。

見世物小屋


「ええ、穴が三つで歯が二つの化け物だ」
見にいくと、下駄。
「六尺の大いたちだよ」
見にいくと、大きな「板」に「血」がついている。
「ええ、べなだよ、べな」
見にいくと、鍋をひっくりかえしたもの。

セクハラ気味の小噺

古典落語というものは、昔のことを語っているようで、実際には現代を語るものです。
ですから、掛けられる時代に応じて変わっていきます。小噺も同様です。
最後に、現代ではやや、女性に対するセクハラがひどいかもしれない小噺を集めてみました。
これらの小噺が生き残るかどうかはひとえに、大きな比重を占める女性のお客さん次第です。

美術館


美術館にて。学芸員にこれはルノアールでしょ、ゴッホでしょと問いかけるが、ことごとく外れている奥様。
「これはわかるわ。ピカソでしょ」
「奥様、鏡でございます」

お気の毒に


「隣の奥様、交通事故に遭って、顔がめちゃくちゃになったんですって」
「まあ、お気の毒に」
「でも医療の進歩はすごいわね。手術で元に戻ったんですって」
「お気の毒に」

犬の散歩


犬散歩中の女性に向かい、話しかける男がいる。
「珍しいな。豚なんか連れて」
「失礼ね、犬よ」
「俺は犬に言ってるんだ」

酔っ払い


電車で酔っ払いが女性に絡んでいる。
「うわー、すげえブスだな。こんなひどいブス見たことないぜ」
「失礼ね。あたしだって、あなたみたいなひどい酔っ払い見たことないわ」
「なに、俺の酔っ払いは一晩寝たら直るんだ」

弁天小僧

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日頃はクレジットカード、キャッシング、カーシェア等を専門に執筆しているライターです。 落語が趣味で、週1回寄席や落語会に出向いています。

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