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自然派ワインとは?話題の「オーガニックワイン」、「ビオワイン」、「ヴァンナチュール」の違いについて簡単解説

トピックス

自然派ワイン、ヴァンナチュールという言葉を耳にする機会が増えています。なんだか自然にも、飲む人間にも優しそうなワイン、といった印象を受けるかと思いますが、実際のところ具体的にどのようなワインのことを指すのでしょうか。このコラムでは自然派ワインについて解説します。

1.オーガニックワイン、自然派ワイン、ヴァンナチュールとは?

自然派ワインの定義とは

自然派ワインとはいったい何でしょうか。その定義は難しく、ワイン生産者やソムリエのようなワイン専門家に聞いてもその答えは三者三様と言えます。なぜなら自然派ワインに対する考え方やとらえた方が人により異なるからです。

それでも共通認識としてあるのが「自然なつくりをしたワイン」ということです。「ヴァンナチュール」とは「自然派ワイン」をそのままフランス語に訳したもの。「オーガニックワイン」とは自然派ワインの中でも「オーガニック」栽培のブドウを使ったワインのことです。また「ビオワイン」もオーガニックワインを意味します。

このほかにも「ビオディナミ」「バイオダイナミック」といった言葉も聞いたことがあるかもしれません。このコラムでは話題の自然派ワインにまつわる具体的な解説と、自然派ワイン造りで採用されることが多い製造方法を紹介します。


2.自然派ワインが登場した背景とは

「自然なつくり」とは一体何かを説明する前に、まずどういった背景でこの言葉が登場したかを説明いたしましょう。

食料需要と化学肥料の関係

時代はさかのぼり第二次世界大戦後。世界的に人口が爆発的に増え、人口増加に伴い食料として農作物を増産し、農地不適合地域でも農作物を生産する必要が出てきました。テーマは「農作物の生産能力を向上せ、産業として成り立たせる」こと。このテーマを解決する発明品が化学肥料だったのです。化学肥料は農作物を安定的に供給する助けとなり広く利用されることとなりました。

化学肥料と農薬の功罪

農作物は一緒に生えてくる雑草があると、雑草が先に肥料を吸収してしまう場合があります。この雑草の問題を解決するのが除草剤でした。しかし除草剤を散布することで雑草を駆逐することはできますが、同時にその土地に住んでいる有益な虫や動物達も駆逐してしまいます。生態系はバランスを失い、害虫や病原菌が発生します。

そしてまたそれらを駆逐するために農薬を散布します。農作物増産のために化学肥料を投入、その肥料の効果を発揮させるために除草剤を撒き、病気を防ぐため農薬を撒く。こうなると土自身で栄養を作ることはできません。そしてまた化学肥料を撒くこととなるのです。悲しいまでの悪循環です。

ブドウ作りにおける悪循環が生んだ結果とは

この悪循環は、ワイン用ブドウ造りも例外ではありませんでした。ある時、ワイン生産者たちはブドウの生産がうまくいかないことに気が付きます。そして固くなった土壌、「土の死」を目の当たりにするのです。化学肥料、除草剤と農薬が堆積した畑では固い層ができあがり、ブドウの根が地中深くまで張ることができなくなっているのです。通常ブドウの根は水と栄養を求めて土中深く根を張ります。しかしながら、この状況では根を深く張ることができず、さらに悪いことに耕運機の重みで踏みつぶされた畑はさらに固く死んでいくのでした。

悪循環からの解決策としての自然派ワイン、ヴァンナチュールとは

これらの病んでしまった畑の解決策として注目されたのが、化学的なものを使用しない自然な農法でした。今までの反省から、自然に配慮した農法を採用したワイン、自然な造りをしたワイン=「自然派ワイン」です。これがワイン界でも一大テーマとなったのです。いくつかある自然派ワインとして挙げられるものの一つが「ヴァンナチュール」です。キーワードは「持続可能な未来」「自然との共生と環境への配慮」。化学農業への反省から、次の世代、また次の次の世代まで引き継がれる環境を保つことを一番に考えたのです。ブドウ畑や醸造所がある環境への配慮、水の使用、共生する生物の多様性、生産や物流におけるエネルギーと二酸化炭素排出量、スタッフの健康からまわりの景観まで、取り巻く環境と社会に配慮した中で生み出すワインのことを指します。別の言葉で「サスティナブル」ワインと呼ばれることもあります。


3.自然派ワインの農法による分類と特徴的な醸造方法

自然派ワインとは前章で述べた反省を具現化し、生まれた農法を実践することでつくられるワインです。具体的な農法の特徴と自然派ワインづくり用いられる醸造方法について表にまとめました。

分類小分類方法特徴
農法減農薬農法ワイン減農薬農法化学肥料、除草剤不使用。農薬は最小限にとどめる。リュット・レゾネとも呼ばれる。
有機ワイン(オーガニックワイン)=ビオワイン
 
ビオロジック有機農法化学肥料、除草剤不使用。天然由来農薬、有機肥料を使用。
有機ワイン(オーガニックワイン)=ビオワイン
 
ビオディナミ生体力学農法
=ビオディナミ農法
ビオディナミカレンダーによる自然のリズムを取り入れた農作業。独自のレシピに基づいた調合剤を使用。
製造方法酸化防止剤亜硫酸(二酸化硫黄)少量もしくは無添加人体に影響の恐れがあるため使用を避ける。
天然酵母培養酵母は使用せず、天然酵母を使用畑やワイナリー、ヴィンテージの個性を表現できる。
無濾過・無清澄ワインに複雑さを出す。

4.減農薬農法ワインとは

減農薬農法の定義とは

環境に配慮したワインづくりで実践されることが多いのが「減農薬農法」です。その名の通り、できる限り農薬の使用量を減らし、ブドウとブドウ畑への影響を小さくします。フランス語では「リュット・レゾネ(lutte raisonnée)」と呼ばれ、「合理的な対策」と訳されます。ワイン用ブドウ栽培では、できる限り農薬を使用せず栽培をする農法とされます。

自然の力に任せ農作業をすること、環境に配慮したブドウ畑管理を行うことが基本理念です。基本原則として、化学肥料・除草剤は不使用。害虫や病気の被害によりこれ以上打つ手が無くなった場合にのみ農薬は使用され、最小限のみ散布されます。また処置を行った場合は、記録を取ることが必要です。

自然環境とのバランス

合理的な対策はただ農薬を減らすだけではありません。自然環境バランスを応用することも実践されます。具体的には益虫を利用した害虫の管理も対策の一つです。益虫とはブドウ栽培に被害をもたらす害虫を食事としたり、忌避したりで利益をもたらす虫のことを指します。

そもそもブドウ畑とは、極端にいうと人の手により一種類の農作物しか栽培されていない環境です。本来は多種多様な生物が共存している自然環境と比べると、かなり特殊な環境と言えるでしょう。害虫にとって環境が適せば爆発的に広がるリスクが高い状況です。

害虫に取っての天敵=益虫を畑に存在させることで害虫を管理します。そうすると益虫の食事となる害虫もあえて残しておくことが必要となってきます。どれくらい害虫を残しておいてもワイン用ブドウ栽培が成り立つのか、栽培者は見極めなければなりません。

益虫の利用以外には、特定の微生物を利用した生物農薬、植物を植えることでブドウ畑の表面をカバーし益虫の住みかとするカバークロップ、天候観察などが対策として挙げられます。

減農薬農法の認証機関

減農薬農法の認証機関として「テラ・ヴィティス(Terra Vitis)」があります。認定を受けたワインはテラ・ヴィティスの認証マークがついているので見つけやすいでしょう。実際のところ減農薬栽培はワイナリーにより考え方も実践方法も異なります。ワインの裏ラベルやホームページでワインづくりにおけるポリシーを確認するとよいですね。


5.オーガニックワインとは

オーガニックワイン?有機ワイン?ビオワイン?

オーガニックワインとは、オーガニック農法で栽培したブドウでつくられたワインです。英語の「オーガニックワイン」は、日本語で「有機農法ワイン」、フランス語で「ヴァンビオロジック」、イタリア語で「ヴィーノビオロジコ」と訳されます。「ビオワイン」という言葉は、フランス語の「ビオ」と英語の「ワイン」が合体したオーガニックワイン全般のことと認識されています。

オーガニックワインの定義と環境づくり

オーガニックワインの基本原則は、化学肥料・除草剤は不使用。化学肥料や除草剤の代わりに、ブドウの搾りかす、食べ物、動物由来の肥料を与えたり、畑に生えた草を漉き込んだりといった工夫を行います。

農薬は生物農薬やボルドー液、水和硫黄剤といった伝統的で安全が確認された農薬が使用されます。また昆虫や小動物たちとの共生が大切です。ブドウにとって害虫となる虫を食べる益虫や小動物を生かし、生態系を生かした農業を行います。

またブドウ畑では最低3年間有害な化学肥料を使用していないことが求められます。隣接する畑からやってくる化学農薬を遮断するため対策を講じることも必要です。畑作業や醸造用設備においても、環境に配慮した無害・無毒の素材の工具や殺菌剤を使わなければなりません。

オーガニックワイン認証について

公的にオーガニックワインと名乗るためには、EUの有機農業基準、日本の有機農産物日本農林規格といった各国・各地域の有機規格を遵守する必要があります。また第三者認証機関による認証もなされています。認定機関による規格はそれぞれですが、共通して求められるのは先ほど述べた通りです。

公的以外にも、オーガニック農法でワイン生産を行っている生産者はいます。なぜなら認証規格を得るために費用がかかったり(消費者に対するコスト増の回避)、生産者の哲学が沿わない場合があるからです。

またオーガニックワイン市場の高まりから、商業的にオーガニック認証を取得しているワインもまったくないわけではありません。こういった理由からあえて認証は取らずに栽培方法としてオーガニック農法を採用していると説明する生産者もいます。

公的に安心してオーガニックワインを飲んでもらいたい、一方で認証は取らなくてもプライドをもってオーガニックワインを飲んでもらいたい、いずれもワイン生産者の志がつまったオーガニックワインからはこれからも目が離せません。


6.ビオディナミワインとは

オーガニックワインと合わせてよく耳にするのが「ビオディナミワイン」です。「ビオディナミワイン」とはビオディナミ農法で栽培されたブドウを使ったワインのことです。「ビオディナミ」はフランス語で、「バイオダイナミック」は英語、日本語で「生体力学」と訳されます。

ビオディナミ農法はオーストリアのルドルフ・シュタイナーが提唱した農法です。ブドウ畑農場全体を一つの生命体(=ビオ)としてとらえ、天体や宇宙のリズムに基づいて存在するものとします。

生命体は天体や宇宙の波動の影響を受けていると定義します。ビオディナミワインの開拓者フランス、ロワールの生産者にニコラ・ジョリーは、ワイン造りにおいて宇宙・天体とブドウの波動をビオディナミ農法によって「ラジオの周波数を合わせるようなもの」と表現しています。人間も満月の日には何らかの影響を受けやすい、といった事例をイメージすると分かりやすいかもしれません。

ビオディナミワインの定義

ビオディナミワインの基本原則は、オーガニックワインづくりにさらにビオディナミ農法を取り入れたものです。化学肥料・除草剤は不使用であるのは共通です。特徴的なのは宇宙の波動を取り込むため、天体のリズムに沿った「ビオディナミカレンダー」に基づいた農作業をすること、特別な調合剤を使用することです。

カレンダーではブドウの苗植え、耕うん作業、収穫などの作業日が天体のリズムに沿って指定されています。特別な調合剤とは、雄牛の角に牛糞を詰めて土に埋めて熟成させたもの、ノコギリソウの花を牡鹿の膀胱に詰めて発酵させたものなどがあります。

ビオディナミ農法ワインの評判

ビオディナミ農法の内容については不思議な印象も受けますが、実際に飲んでみると「力を感じるワイン」であったり、「翌日、翌々日がさらにおいしい」といった、まるでワインが生きているような生命力を感じることがあります。また、おいしいワインを追及したらビオディナミ農法でできたブドウのワインであった、といった経験を持つプロのバイヤーもおり、目が離せない農法です。

「Demeter(デメター)」と「Biodyvin(ビオディヴァン)」という認証もしくは生産組合が最も有名で、ビオディナミワインを探す際の目安になります。

7.自然派ワインで用いられるワイン製造方法について

この章では自然派ワインで用いられることが多いワイン製造方法を解説します。ここで取り上げた製造方法を行っている=自然派ワインというわけではないことにご注意ください。

酸化防止剤について

ワインの裏ラベルに「酸化防止剤(亜硫酸塩)」「contain sulfites」といった表記を見てドキッとしたことがある方も多いでしょう。酸化防止剤と聞くと何やら喜ばしくないもののように聞こえますが、日本では食品添加物として表示が義務付けられており、添加物の特性も表示するため「酸化防止剤」と表記されています。

酸化防止剤である亜硫酸塩は厳密な違いはありますが形態が異なるものとして、亜硫酸もしくは二酸化硫黄とも呼ばれます。

亜硫酸塩は表示の通り酸化防止を目的として添加されるだけではなく、ワインにとって悪影響を及ぼす微生物の増殖を防ぐため使用されています。

その功罪は賛否両論です。亜硫酸はアレルギーを引き起こす原因となることが指摘されており、人体への影響がまったくないわけではないからです。各国で規制があり許容使用量は決められています。特にオーガニックワインやビオディナミワインの場合、極力使用を控えているワイン、もしくは酸化防止剤無添加と謳ったワインも多く見受けられます。

天然酵母の使用について

酵母はブドウをワインに変える重要な役割を果たすものです。酵母は大きく分けて、安定したワインづくりに適するために研究所で培養された「培養酵母」とブドウの果皮やブドウ畑、ワイナリーの空気中に自生する「野生酵母」があります。

培養酵母は常に安定した正常なアルコール発酵を起こすため、規格にそった計画通りのワイン造りを実現することができます。長年に渡り高品質のワインづくりを続けたブドウ畑から採取された酵母を純粋培養することで得られます。しかしながら、時に画一された個性に欠けたワインを生む欠点もあります。

一方、天然酵母は畑ごとや収穫ごとに働きが異なる酵母が存在するため、個性豊かなその畑や収穫年を表現したワインづくりをすることができます。そのことから自然派ワインづくりでは用いられることが多い酵母です。

しかし不安定な発酵を引き起こす欠点もあり、汚染酵母も存在することから欠陥香気をもったワインが出来上がってしまうこともあります。自然派のワインが時に「臭い」と言われるのはこのためです。

無濾過・無清澄ワインについて

ワインは醸造、熟成が終わって瓶詰めされる前に「濾過」や「清澄」を行います。ワインづくりの大仕事を終えた酵母や微生物がワイン中に残っており、これらを取り除くためです。残留物によりワインが不安定になることを防ぐのと(本来問題がなかったとしても)見た目や舌触りの問題を取り除くために行われます。

しかしながら濾過や調整をしすぎることでワインの個性を失うこともあり、自然な味を目指す自然派ワインづくりではあえて濾過や清澄を行わない=無濾過・無清澄のワインづくりをする生産者もいます。無濾過・無清澄とすることでワインに複雑さをもたせ、個性を引き立てます。

また清澄には卵白、動物の骨や皮、牛乳からの成分、魚の浮袋といった生物由来のものを用いることもあります。無清澄ワインは生物由来食物を敬遠するヴィーガンやベジタリアンとの親和性も高く、彼らから好まれることも特筆すべきことです。


最後に

この記事では分かっているようで分からなかった、自然派ワインづくりに至った歴史とカテゴリー解説、自然派ワインづくりでなされることが多い製造方法をご紹介いたしました。化学農業の反省から始まった自然派ワインと申し上げましたが、そもそもワインづくりは紀元前数千年物前から行われているものです。むしろ反省による改善というよりも、本来のブドウ栽培とワインづくりに回帰したといったほうが適しているかもしれません。

生産者の思いや考えに思いを馳せ、太古のワインづくりを想像しながらワインを飲むのもまた一興ですね。

Eriko

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ワインに携わって17年目。日本ソムリエ協会・元ワインアドバイザーのほうのソムリエ。ワインライター・翻訳家(英→日)。不器用だけど自炊と手作りが好き。好きな言...

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