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Vol.14 日本、日本酒・焼酎

ワインの基礎知識

南北に細長い島国である日本は、ほとんどの都道府県で多様なワインが生産される国です。国産ブドウを原料とした日本ワインは国内で製造されるワインの18.1%を占め、白ワインと赤ワインがほぼ同量生産されています。ちなみに、海外産のブドウを原料として造られるワインを日本ワインとは呼びません。

この回では、日本のワイン産業における歴史や気候風土、主なブドウ品種、ワイン法、生産地域と日本酒・焼酎について解説します。

目次
1.日本
2.日本ワインの各生産地域とその特徴
3.日本酒
4.焼酎

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日本

日本の国土の総面積は3,780万haとドイツとほぼ同じ面積ですが、その75%が山間部になっています。全国各地にワイナリーがあり、多様な栽培形態や栽培品種を持つ日本ワインは、小規模生産者が多いことでも知られています。

「日本ワイン」とは国産ブドウを原料とした果実酒であるという定義は、国税庁によって2015年に法的に定められました。一方、原料が国産か海外産であるかに関わらず、日本ワインを含む、国内で製造された果実酒及び甘味果実酒は「国内製造ワイン」と呼びます。日本ワインは国内製造ワインの2割ほどで、8割は海外原料に依存しています。また、国内市場におけるワインの流通量の構成比では、輸入ワインを含めたワイン全体の5.4%が日本ワインと推計されています。

現在、北は北海道から南は沖縄までほとんどの都道府県でワイン造りが行われるようになりました。ブドウ栽培地の北限は北海道名寄市(北緯44.1度)、南限は沖縄県の恩納村(北緯26.3度)で、その差は約18度にもなります。フランスのワイン産地は、北限のシャンパーニュと南限のコルス島の緯度の差が約6度であるのを考えると、日本の産地がいかに南北に離れているかがわかります。

近年ワイナリー設立の動きが活発化しており、ワイナリー数は約100軒以上増え、国税庁のデータでは、現在のワイナリー数は413軒に達しています(日本ワインを生産していない醸造場も含む)。その内、日本ワインを製造しているワイナリー数は278軒で、2022年に発表された国税庁のデータによると、山梨県、長野県、北海道、山形県、岩手県、新潟県の順に多く、日本ワインの生産量の順位とほぼ同じになっています。また、ワイナリー数は山梨県が一番多く、全ワイナリー数の2割強を占めています。

日本ワイン全体の内、自社畑産のブドウで造られたワインは1割強です。国税庁では、原料ブドウを自営農園から最も多く受け入れているワイナリーを自営農園としており、その数は99軒に達し、100%自社管理畑のブドウでワインを造る、フランスでいう「ドメーヌ」型ワイナリーも増加傾向にあります。また、現在稼動しているワイナリーの内、約86%は年間生産量が100kℓ未満のと小規模ワイナリーでこの比率はここ数年増加している。この傾向は依然として続いており、2000年以降設立されたワイナリーだけを見ると、90%以上が小規模ワイナリーとなっています。

日本ワインの歴史

日本でのワイン造りは、明治初期に始まったとされ、1874年に山田宥教、詫間憲久が、山梨県甲府で初めて本格的ワイン造りを始めました。1877年に、現在の勝沼にあたる祝村に初の民間ワイナリー・大日本山梨葡萄酒会社が立ち上げられました。しかし、1627~1630年の間に小倉藩細川家の管轄下において、葡萄酒(ぶどうしゅ)造りがされていたという新たな見解も発表されています。

川上善兵衛は、1893年に新潟県にワイナリー「岩の原葡萄園」を設立し、1927年にはマスカット・ベーリーAやブラック・クイーンなどの日本独自の改良品種を開発しました。山梨県のワイナリーは、1926年には319軒に達し、増減を繰り返しながらも、全体としては増加傾向で39年にはその数が3,694軒に達しました。

第二次世界大戦後にワイン産業は一時低迷しますが、1960~1980年代に開催された東京オリンピックや大阪万博、高度経済成長期の影響を受けて、各地で地域振興を目的とした第3セクター、JA、地方自治体のワイナリーの設立が活発化しました。また、ワイン消費量が前年比162%と上昇した1973年は「ワイン元年」と称されています。

1980年代には、大手ワイナリーを中心に、ヴィティス・ヴィニフェラ種の本格的な栽培が始まり、2000年を過ぎてからは、個人で栽培したブドウでワインを造ろうとする動きが生まれ、小規模ワイナリーの設立が活発しました。小さなロットで仕込めるような小型タンクが普及し、適地適種の検討やワイナリー設備の刷新などの一連の動きが実を結び、この10数年で日本ワインは品質が向上しています。

日本の気候風土

日本全体みると内陸性気候のところが多いですが、北と南とで気候が大きく異なります。

北海道の後志地方は海洋性気候、空知地方は内陸性気候ですが、いずれも梅雨がなく、4~10月の降水量は全国で最も少ない一方で、秋が短く冬は積雪もあることからブドウの生育期間が短いです。宮崎県は降水量が多いものの日照量も多く、ブドウ栽培に適しているのが特徴と言えます。山形県では、庄内地方を除いて内陸性気候の栽培地が多くなっています。長野県は全ての栽培地が内陸性気候で、4月から10月の降雨量は、北海道よりは上回るものの全国平均より少なく、平均気温はフランスのディジョンとほぼ同じで、収穫シーズンに晴天が続くのも特徴です。山梨県も盆地の内陸性気候で、長野より雨が多く、日照時間は長野と同じくらいです。宮崎県は雨も多いですが、日照時間も多く、ブドウ栽培に適しているのが特徴と言えます。

日本の主なブドウ品種

日本において、ワインの原料として使われるブドウは多岐に渡ります。近年では日本ワインを海外に輸出するケースも見られ2010年には甲州、2013年にマスカット・ベーリーAがO.I.V.のリストに品種としての掲載を認められました。日本ワインの原料となるブドウは主に6つに大別されています。

東洋系品種日本固有の土着品種や中国原産の品種。甲州(白)、善光寺(白)など。甲州はヴィティス・ヴィニフェラとヴィティス・ダヴィーディの遺伝子を引き継ぐ。
欧・中東系品種(ヴィティス・ヴィニフェラ)ヴィティス・ヴィニフェラという言葉は「ワインを造るブドウ」という意。 Merlotメルロ(赤)、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン(赤)、Zweigeltツヴァイゲルト(赤)、Chardonnayシャルドネ(白)、Kernerケルナー(白)、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン(白)など。
アメリカ系品種(ヴィティス・ラブラスカ生食用として使われることが多い。独特な香りが「フォクシーフレーバー」「キャンディ香」と称される。 Delawereデラウェア(白)、Cambell Earlyキャンベル・アーリー(赤)、Niagaraナイアガラ(白)など。
日本野生ブドウ(ヴィティス・コワニティ)日本で自生している野生ブドウで山ブドウという総称で呼ばれることも多い。山で自生しているブドウを採取、それを栽培して、ワインも造られる。かなりの品種があると思われる。
日本特有の交雑・交配種日本の気候に適した品種を求め開発された品種。大半が、川上善兵衛が開発したアメリカ品種を使用したもの。
欧・中東系品種の交雑品種フランスで開発され日本にもたらされた品種。Kernerケルナー(白)、Dronfelderドルンフェルダー(赤)など。

それぞれの品種と特徴は教本のリストを確認してしっかり覚えていきましょう。

《教本参照》

日本ワインの生産概況


国税庁が調べた「国内製造ワインの概況」によれば、日本ワインの2021年の生産量は16,499kℓで、750ml換算で約2,200万本となります。日本ワインの内、白ワインが占める割合は45.0%、赤ワインは44.4%、スパークリングワイン3.8%、その他が6.7%となっています。

ワイン原料となる国産生ブドウの受入数量は、白ワイン用品種では甲州がもっとも多く、次いでNiagaraナイアガラ、 Chardonnayシャルドネ 、Delawereデラウェアと続きます。赤ワイン用品種ではMuscat Bailey Aマスカット・ベーリーAがもっとも多く、次いでConcordコンコード、Merlotメルロとなっています。国内で栽培されているワイン用ブドウ品種は日本独自の品種が多いので、生産割合についてはしっかり押さえておきましょう。

日本のワイン法と品質分類

日本でのワインに関する法律としては、酒税法と「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(酒類業組合法)」が定められています。酒税法では、酒類は、発泡性酒類(ビール、発泡酒、その他の発泡酒類)、醸造酒類(清酒、果実酒、その他の醸造酒)、蒸留酒類(連続式蒸留しょうちゅう、単式蒸留しょうちゅう、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ)、混成酒類(合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒)の4つに分類され、ワインは果実酒に、フォーティファイド・ワインは甘味果実酒に含まれます。

2015年10月、「果実酒等の製法品質表示基準」が国税庁によって定められ、「日本ワイン」の定義が明確となるとともに、ラベル表示を規定する法制度が整いました(施行は2018年10月30日)。「日本ワイン」は、国産ブドウのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒、「国内製造ワイン」は、日本ワインを含む、日本国内で製造された果実酒及び甘味果実酒、「輸入ワイン」は、海外から輸入された果実酒及び甘味果実酒、と定められています。

日本ワインの場合にのみ、「日本ワイン」の表記が可能で、地名、ブドウの品種名、収穫年も表示可能です。また、産地名の範囲内に85%以上使用した収穫地、単一のブドウ品種使用率と同一収穫年のブドウ使用率がともに85%以上であるというのがルールです。また、地理的表示制度において指定されている地域は、ぶどう酒は山梨、北海道、山形、長野、大阪の5つです。

日本ワインの各生産地域とその特徴

日本国内の生産地域は、地理上の区分を利用して確認していくと頭に入りやすいです。9地域それぞれの特徴を見ていきましょう。

北海道

長野県と並んで活気のある生産地域が北海道です。2000年以降設立されたワイナリー数は30軒を超え、現在ワイナリー数は46軒存在しています。欧・中東系品種のワインが多い上に、本州と比べて自社畑率も高いです。岩見沢や余市、北斗などは、アメリン&ウィンクラー博士によるワイン産地の気候区分においてはRegionⅠに属しています。2018年には、国税庁が「北海道」を地理的表示として指定しました。

ワインの年間生産量は3,058kℓで国内生産量の18.5%を占め、国内第3位を誇ります。主要なブドウ品種はドイツ系の白色品種で、Niagaraナイアガラ(白)やKernerケルナー(白)、ポートランド(白)、Cambell Earlyキャンベル・アーリー(赤)、Zweigeltツヴァイゲルト(赤)、Pinot Noirピノ・ノワール(赤)などがあります。北海道特有の品種としては、山幸(赤)や清舞(赤)が有名です。山幸は2020年にO .I .V.に登録されました。

東北

山ブドウから造られた酒を飲む習慣が地元民に根付いている岩手県や、古くから果樹栽培が盛んな山形県をはじめ、その他の県にもワイナリーがあります。冷涼な気候の岩手県のワイン年間生産量は596kℓで国内生産量の約3.6%、日本海側が海洋性気候で内陸部は盆地気候である山形県のワイン年間生産量は1,173kℓで国内第4位です。

主要なブドウ品種は、岩手県ではRiesling Lionリースリング・リオン(白)が多く、日本全体の95%を生産しています。その他Cambell Earlyキャンベル・アーリー(赤)やNiagaraナイアガラ(白)、Muscat Bailey Aマスカット・ベーリーA(赤)、Merlotメルロ(赤)、Chardonnayシャルドネ(白)が多いです。

山形県ではMuscat Bailey Aマスカット・ベーリーA(赤)の生産量が多く、栽培面積が国内第1位と推定されるDelawereデラウェア(白)も生産が盛んです。その他Merlotメルロ(赤)やYama Sauvignonヤマソービニオン(赤)、Black Queenブラック・クイーン(赤)、Niagaraナイアガラ(白)、Chardonnayシャルドネ(白)と続きます。

北陸

新潟県の上越市高田では明治時代からワイン造りを想定したブドウ栽培を行っていましたが、気象条件の厳しさから、現在は同市内ではワイナリーが1軒のみとなりました。新潟砂丘の一角の角田浜と越前浜にはワイナリーが集積して始めており、新潟ワインコーストと称しています。富山県に3軒、石川県に4軒、福井県には1軒のワイナリーが存在しています。

新潟県は日本のワイン産業の発展に多大な貢献をしてきました。県内初のワイナリーを立ち上げ、ブドウの交配育種に力を注いだ川上善兵衛は、現在日本で最も多く栽培されている赤ワイン用品種のMuscat Bailey Aマスカット・ベーリーAやBlack Queenブラック・クイーン、Red Millenniumレッド・ミルレンニュームなどを開発し「日本ワインの父」と呼ばれています。

新潟県の沿岸部一帯は海洋性気候、内陸部は盆地気候です。ワイン年間生産量は590kℓで国内生産量第6位となっています。ブドウ生産数量の1位と2位をChardonnayシャルドネ(白)とMerlotメルロ(赤)という欧・中東系品種で占めているのが特徴で、Muscat Bailey Aマスカット・ベーリーA(赤)、Seibel 9110セイベル(白)も多いです。

関東

7都県すべてにワイナリーがあるものの、栃木県以外は生産量が少なく、東京都と神奈川県は国税庁の年間生産量が公表されていません。最多なのは栃木県ですが、年間生産量は276kℓです。

主要なブドウ品種は甲州(白)が最も多く、Merlotメルロ(赤)やChardonnayシャルドネ(白)、Muscat Bailey Aマスカット・ベーリーA(赤)がほぼ同量で生産されています。

埼玉県ではワイナリーが4軒あり、昭和初期から続くワイナリーもあります。千葉県では6軒のワイナリーがあり、ブドウ栽培からワイン醸造まで一貫生産するところもあります。東京都では2014年以降次々と街中ワイナリーが増えて現在6軒存在しています。

甲信

日本のワイン造りにおいて、国内で最も活気のある生産地である長野県には、2022年時点で62軒のワイナリーが存在しています。一連の動きを後押ししていることのひとつに、2013年に県が発表した「信州ワインバレー構想」の影響がみられます。年間生産量は4,072kℓと国内生産量の23%を占めます。2021年には、G.I.長野の指定とともにG.I.長野プレミアムに移行しました。また、2016年4月に、長野県庁に「日本酒ワイン振興室」が設置されました。

また国内トップのワイン産地である山梨県は、2022年時点で92軒のワイナリーを擁していますが、年々ワイナリーの休止が相次ぎ、かつては全国のワイナリーの半数が山梨県にあった状況が現在2割程度と変化しています。2017年に県内の大手メーカー・サントネージュがフランス・ボルドーのワインコンクール「レ・シタテル・デュ・ヴァン 2018」で金賞を受賞し、日本ワインが世界に認められる大金星を挙げたことはよく知られています。

周囲を飛騨山脈や木曽山脈、赤石山脈に囲まれていて海に面していない長野県は典型的な盆地気候です。夏冬の気温差が大きく、年間降水量が少ないため果樹栽培に向いています。主要なブドウ品種のMerlotメルロ(赤)、Chardonnayシャルドネ(白)、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン(白)はいずれも全国1位です。近年は県内生産率が61%と高いConcordコンコード(赤)やNiagaraナイアガラ(白)のほか、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン(赤)、Cabernet Francカベルネ・フラン(赤)、Pinot Grisピノ・グリ(白)の生産量が増加傾向にあります。

本州のほぼ中央に位置する山梨県も盆地気候で、降水量が少なく風も弱いのが特徴です。主要なブドウ品種は甲州(白)とMuscat Bailey Aマスカット・ベーリーA(赤)です。甲州は2010年、マスカット・ベーリーAは2013年にO.I.V.のリストに登録されました。デラウェア(白)の生産量も多い一方で、Petit Verdotプティ・ヴェルド(赤)の栽培面積が増えてきています。

東海

日本でのワインブームの影響を受け、愛知県や三重県、静岡県にワイナリーが増えてきています。100%自社畑のブドウのみを使ってワイン造りを行うドメーヌ型ワイナリーや、廃校を利用したワイナリーなど個性的なワイナリーがあります。いずれも気象条件は厳しい地域ながら、静岡県では750mℓに換算して8.7万本、愛知県では2.3万本を生産しています。

近畿

近畿地方のうち、大阪府は日本有数の長いワイン造りの歴史を持っています。商業ベースではないものの、1930年代の最盛期には山梨県をしのぐほどワイン造りが盛んで、ワイナリーの数は110軒を超えていました。昭和時代に入ってから耕作放棄が相次ぎましたが、近年はそれらを利用した新たなブドウ園の開園や、街中にワイナリーを設置し自社レストランで提供するスタイルのワイナリーがオープンしています。

温暖な気候に恵まれている大阪府の年間生産量は128kℓで、国内全体の生産量の0.8%程度です。主要なブドウ品種はDelawereデラウェア(白)、Muscat Bailey Aマスカット・ベーリーA(赤)、Merlotメルロ(赤)、Niagaraナイアガラ(白)などがあります。

京都府、滋賀県、兵庫県、和歌山県にはあわせて11軒のワイナリーがあり、なかでも兵庫県には第3セクターのワイナリーがあり、平成初期のピーク時には年間生産量90万本を数えていたがその後激減しました。主要なブドウ品種としてはChardonnayシャルドネ(白)やRieslingリースリング(白)などが多いですが、近年はMerlotメルロ(赤)Cabernet Sauvignonやカベルネ・ソーヴィニヨン(赤)が主流です。

中国・四国

中国地方では岡山県、広島県、鳥取県と島根県、山口県の順にワイナリーの数が多くなっています。岡山県の年間生産量は454kℓで、大手ワインメーカーがワイナリーを所有しテラロッサと呼ばれる珍しい土壌が形成されていることが影響しています。広島県の年間生産量は140kℓで、2000年以降も新しいワイナリーが設立されています。四国地方では、徳島県、香川県に1軒ずつ、愛媛県、高知県にはそれぞれ2軒ずつワイナリーが存在しています。

九州

1627~1630年に「葡萄酒作りが実施されている」という小倉藩奉行所の日次記録が残されており、日本初の本格的なワイン造りが福岡県で始まったとされていますが、現在のワイン造りには結びつきませんでした。1972年に九州初のワイナリーが福岡県に設立され、以降大分県の安心院町や宮崎県都農町にブドウ園が開園しました。

現在は大分県が最もワイナリー数が多く、次いで宮崎県が多いです。日本ワインの年間生産量は九州全体で約123.4万本で大分県が15.3万本す。主要なブドウ品種は九州全体ではCambell Earlyキャンベル・アーリー(赤)の醸造量が多く、大分県ではChardonnayシャルドネ(白)のほかにPetit Mansanプティ・マンサン(赤)や小公子(赤)、熊本県ではChardonnayシャルドネ(白)が多いです。

日本酒

日本酒(清酒)は、酒税法により1.米、米麹、水を原料として発酵させ、漉したもの、2.米、米麹、水、清酒粕、そのほか政令で定める物品を原料として発酵させ漉したもの、3.清酒に清酒粕を加えて漉したもの、と定義され、いずれもアルコール度数は22度未満と決められています。飲み方は冷酒、常温、燗酒の3種類があり飲用温度が6~60℃ほどと幅広いです。近年は火入れをしない生酒をはじめ、シャーベット状になったみぞれ酒などの氷結酒も出てきています。

日本酒の特徴は、日本特有の四季の移ろいに合わせて季節ごとに味わうという点です。新酒の日本酒をひと夏熟成させ秋ごろに出荷するひやおろしは、毎年9~11月に蔵から出荷されます。夏を越すことで秋に酒質が向上することを、秋上がり、秋晴れといいます。ただし貯蔵環境が悪いと夏を越せずに質が低下することがあり、これは秋落ちと呼ばれます。

日本酒の醸造工程は複雑なため、杜氏や蔵人の技術力に酒質が大きく左右されるといわれています。さらに風土や年ごとの米の作柄の良し悪し、地元民の嗜好などにも影響を受けます。搾った酒を樽に詰め木の香りがほどよく移った時期に瓶詰を行う樽酒や、仕込み水の一部またはすべてに日本酒を用いる貴醸酒、木桶仕込みの酒などますます多様化してきています。

酒類の醸造方法は、単発酵、単行複発酵、並行複発酵という分類がありますが、日本酒は並行複発酵に属します。米に麹を加え、一つの発酵容器内で麹によるでんぷんの糖化作用と酵母のアルコール発酵を同時進行させる方法です。日本酒の醸造技術で、巧みに微生物を働かせ、段仕込みによる糖化と発酵が進められていきます。

東アジアでは多くがもち米を原料として用いるのに対し、日本酒は主食用の米と同じうるち米が中心です。代表的な酒造好適米は、水分を多く含み熟成によって奥行き深い豊かなうまみが出る兵庫県発祥品種の山田錦、淡麗で爽やかな味わいが人気の新潟県発祥品種の五百万石、江戸時代から栽培される希少品種でふくよかな味わいが特徴的な岡山県発祥品種の雄町など、延べ229、124品種が産地品種銘柄になっています。

日本酒の製法品質表示は、吟醸酒や純米酒、本醸造酒といった特定名称のほかに、醸造アルコールや精米歩合、吟醸造りの有無、地理的表示が決まっています。精米歩合とは玄米をどのくらい削り取ったかを示す数値で、たとえば精米歩合60%というのは、削り取った部分が40%という意味です。地理的表示については、2005年に白山が、2016年に山形が、2018年に灘五郷が、2020年にはりま、三重、和歌山梅酒が、2021年に利根沼田、萩、山梨、佐賀、長野が、2022年に新潟、滋賀が指定されています。

焼酎

焼酎は、所定の原料をアルコール発酵させ蒸留したお酒です。連続式蒸留機で蒸留したアルコール分36度未満のものを連続式蒸留焼酎、単式蒸留機で蒸留したアルコール分45度以下のものを単式蒸留焼酎といいます。

よく耳にする本格焼酎は単式蒸留焼酎を指しますが、単式蒸留焼酎ならどれでも本格焼酎を名乗れるわけではなく、指定の49種類の原料と麹を用いて水以外の添加物を一切加えないことが条件となっています。単式蒸留焼酎の工程については教本の図でチェックしておきましょう。

《教本参照》

世界的に見て食中酒の多くはワインやビールなどの醸造酒ですが、日本では蒸留酒である焼酎も食中酒として愛飲されます。日本酒と同じく幅広い温度での引用が可能である上に、お湯割りや水割りなどにより、味やアルコールの濃さを自由に調整できるのも特徴的です。芋や麦、米といった産地それぞれの特産物から造られ、風土や歴史的背景、風習などによって、土地それぞれの製法や酒質が伝わり、磨かれています。

焼酎の地理的表示は、玄界灘に浮かぶ壱岐島とその周辺の島々でつくられる「壱岐」(麦)、熊本県南部の人吉盆地でつくられる「球磨」(ジャポニカ米)、タイ米を原料とした沖縄の「琉球」が1995年6月に、鹿児島県でつくられる薩摩(芋)が2005年に指定を得ています。原料と表示名はセットでしっかりと覚えましょう。

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