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新米ヴィニュロンが語るぶどう栽培の1年に密着!6,7月の新梢伸長期の「芽かき・新梢管理」

トピックス

徐々に気温も上がってきて、一気に芽が伸びはじめました。降雨量が多くじめじめした天候の6月は病気が出やすい環境です。慌ただしく育っていく樹の環境を整えながら、収穫まで準備を進めていきます。

畑仕事としては、先月の記事でお伝えした4,5月の作業が準備運動だったと思う程、やることが増えました。大きな水筒に3リットルの水を用意しても足りなくなる日もあるぐらいです!

6,7月の作業は、「芽かき、たくし込み、レインカット張り、摘心」です。中でもメインだった芽かきの作業を中心にお伝えしようと思います。

芽かきについて


(6月に入り徐々に花が咲いていきました。石鹸のような香りが畑に広がります。)

6月初め、展葉がどんどん進み、新梢が下から3番目のワイヤー線を超えるものも出てきました。ワイヤーは下から順に、一番下のベースワイヤーが60cm、2番線が90cm、3番線が120cm、一番上のトップワイヤーが160cmの高さに張ってあります。ベースワイヤーに誘引されている結果母枝から新梢が伸びるので、60cm以上も伸びたことになります。5月10日頃に芽が出て3週間でこんなに伸びるとは驚きでした。

芽かきの目的


(一ヶ所から2つ生えた芽で、左が副芽、右が主芽です。
副芽は養分の分散を避けて、混みあうのを避ける為に除去します。)

芽かきの目的は大きく2つ。「新梢を適正な数に調整する」こと、そして「来年の結果母枝候補を育てる」ことです。

伸びてきた芽の中で不要な芽を欠く作業が「芽かき」です。適期は展葉5,6枚で新梢(今年伸びた芽)の長さが30cm前後と言われています。芽かきを早くすれば、残された新梢に養分が集中して成長が促され、逆に遅らせれば、養分が分散して成長が抑えられます。

ヴィラデストでは、全体的にやや遅らせていて、60cmぐらいになってから行っています。樹勢の強さを抑えるのと、遅霜のリスクも考慮されているようでした。
樹勢を抑えると聞くと、なんとなく品質や収穫数が減りそうなイメージを持つかもしれませんが、結果枝の適正は8-9mmと言われています。樹勢が強い樹は、成長が盛んなので、果実の成熟よりも枝を伸ばす方にエネルギーを使ってしまい、ブドウの成熟や着色が遅れる傾向があります。太ければいいってもんではないんですね…。

この樹勢のコントロールが造り手の重要な役割で、その舵切りの役割を担う芽かきは、冬の落葉時に行う剪定作業の補完的作業とも言われています。来年以降の樹形のイメージが出来ていないと適切な芽かきは出来ません。

「新梢を適正な数に調整する」


(芽かき前の樹の写真です。下の主幹からも不定芽が多く生えているのが見えます)

まず、優先して取り除くのは副芽と奇形、不定芽です。

  • 副芽=同じ箇所から2つ芽が出ているもの
  • 奇形=文字通り奇形のもの
  • 不定芽=結果母枝以外の主幹部から予期せず伸びたもの

混みあっている場合は10cm間隔になるように優勢の芽を残して、弱い芽は除いていきます。その優劣の判断がしやすいという点からも、芽かきを遅らせる選択はメリットが多い気がしました。残された新梢には、日がしっかり当たって、風通しもよくなりました。何よりも見た目もすっきりして気持ち良いです。

「来年の結果母枝を考える」


(芽かき後の樹の写真です。混みあっていた芽がすっきりしました!)

候補になる新梢の条件は2つで、ベースワイヤーから下15cm前後のワイヤーへの誘引が容易な位置にあることと、適正の太さであることです。

樹には経歴性があるので、太い結果母枝からは太い新梢が、奇形からは奇形が発生しやすくなっています。また、太い枝は節間が長く、結果母枝にした際に芽数が取れないので、好ましくありません。背の高くなった樹はベースワイヤー下15cmに結果母枝の確保が難しくなってきます。その場合は切り戻して、樹形を作り直すタイミングを考えなければいけません。

猛暑の中、一つ一つの樹にとっての良い選択を考えながら、先輩方のスピードついていこうと必死でしたが、今回は体よりも頭がショートしそうでした…。体力はだいぶついてきたみたいです笑

芽かきが済んだら、次はたくし込みと摘心作業に入ります。

たくし込み


(たくし込み・摘心前の畝間の写真です。
垂れてしまったり、トップワイヤーから出た新梢が目立ちますね)

ワイン用ブドウの垣根では、ベースワイヤーは結果母枝を固定する為、太いワイヤーを張っていて、その上の三段は新梢を挟み込む為に2本張ってあります。その2本のワイヤーの外に飛び出している新梢の先端をワイヤーの間に入れ込んでいく作業です。この作業が遅れてしまうと、だらーっと地面に近くに垂れて、病気の原因にもなってしまいます。また、入れにくくなり、いいことがありません。樹の成長とのスピード勝負なんです!

摘心


(たくし込み・摘心後の写真です。綺麗に並ぶ樹がこちらを見ているようです。)

目的は、生長を止めることで、枝を伸ばす栄養成長にブレーキをかけて、房にエネルギーを使う生殖成長への切り替えを促します。

合わせて、副梢もカットします。副梢は、本葉の付け根から生える脇芽のことです。放っておくと、ジャングル状態になって風通しも悪く、病気になるリスクが出てきます。しかし、全てを切るのではなく、3,4枚の葉を残すのが良いとされています。葉は、老化するとだんだん光合成効率が落ちるので、小さくても若い副梢の葉の方が実は大切なんです。

この作業はベレゾンまで何度か繰り返していきます。なかなか一回でブレーキがかからない…結構、手を焼きます。

まとめ


(芽かき中に見つけた鳥の巣。畑作業の忙しい中,ほっこりした気持ちになります)

今回は芽かきと新梢管理についてご紹介しました。
入社してあっという間の2カ月でしたが、前の作業の重要性に後々気付いたり、早くも来年の同作業で改善して臨みたいことが増えてきました。今回の芽かきでは、自分なりの型みたいのを持って、やり切れた経験が大きかったと思います。

蜂に1日で2回も刺された痛い話はさておき、まもなく来月からは、整枝や摘房、除葉等の品質に大きく関わる大事な畑仕事が待っています。また病気や害虫から守る防除も大詰めです。
そう考えると、一年の全てが重要だと改めて気づかされます。ブドウと一緒に暑さに負けず、健康に頑張りたいと思います。

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