ワインやワインイベントの総合サイト | VINOTERAS(ヴィノテラス)

ワインやワインイベントの総合サイト
VINOTERAS(ヴィノテラス)

新米ヴィニュロンが語るぶどう栽培の1年に密着!4〜5月の生育期

その他

ぶどう栽培の1年はおおまかな流れは決まっているものの、ぶどうの収穫時期、土地のテロワール、品種をはじめとして、ワイナリーのフィロソフィーによってそれぞれが独自の作業を行っています。

長野県東御市のヴィラデストワイナリーでは通年どのような作業をされているのでしょうか。前回インタビューさせてもらった齋藤淳さんにお伺いしました。

前回の記事はこちらです。

日本トップレベルのコーヒーロースターがワイナリーに転職したワケ 

ヴィラデストワイナリーではワイナリー周りだけでなく、八重原地区、御堂地区の少し離れた場所にも圃場も持っており、気候・地質の様々な環境下で栽培をしています。仕立て方はごく一部を除き、垣根仕立ての長梢剪定にしており、樹勢に合わせてシングルとダブルを使い分けて栽培を行っています。

4月から5月は、サイクルでいうところの発芽・展葉のフェーズです。私の所属しているヴィラデストワイナリーでは、主に「誘引」「捕植」「畑掃除」の3つがメインの作業です。

作業その1.「結果母枝の誘引」

誘引された枝の様子。後方に見えるテープは光分解されるテープで、畑に落ちても、自然に分解されるんです!

まず、4月21日の入社後間もなく取り掛かった作業が結果母枝の誘引作業でした。(※結果母枝:花芽があってもその枝には花をつけずに、その花芽から次の枝を伸ばして花を咲かせ、結実する枝のこと)
こちらは休眠期にあたる2月、3月に整枝・剪定されたものを「ベースワイヤー」という譜面のように張られた4本のワイヤーの一番下のワイヤーに誘引する作業です。誘引には、フルーツラインを同じ高さに揃える目的があります。そうすることで、後に控えている管理から収穫迄の作業性を確保することに繋がります。

作業自体は、上に伸びている枝を垂直に倒して固定するのですが、はじめは折れないか不安でこわごわと慎重に作業に取り掛かりました。

枝の切り口から樹液がポタポタと浸み出るブリーディング現象(別名「ぶどうの涙」とも言われています)が起きてからの枝は、水分量が多く、綺麗にしなってくれます。とはいえ、何本かボキっとやってしまいました……。コツをつかむまでが本当に難しいです。

これらの作業は枝の乾燥している休眠期にはできない作業で、一日中中腰で垣根に合わせて横歩きしながら行うので、簡単に腰を痛めてしまいました。

誘引を終えた圃場の様子。すっきり綺麗に整いました。先輩は、タンポポが咲く風景を見ると
「今年もいよいよスタートだな」と思うらしいです。

まだまだ葉をつけていない丸裸な樹でも、品種毎に枝の太さや硬さが違うという感覚を枝のしなりから感じることができたのは勉強になりました。それでもやはり、畑仕事は体力がいります。(体力勝負の仕事の間のふとした気付きやそよ風等が回復薬となっています。笑)

作業自体は一人一列を担当するのですが、同時に始めるとどんどん離されていきます。先輩方のやり方をよく観察して、枝の曲げ方や、樹に対しての体の置き方などを目で見て盗むことで今では前ほど足を引っ張ることはなくなったとは思います。徐々に体力がついてきた感覚もあります。

ヴィラデストでは基本的には、垣根の樹間を1.5mに設定しています。この樹間はセオリー通りと言えますが、こうすることで結果母枝を誘引した際の芽数を7前後確保でき、かつ隙間がなく無駄の少ない畑にすることができます。樹勢が強くなってしまう傾向の日本の栽培において、結果母枝として残す芽の数を海外に比べ多くすることでコントロールしています。逆に樹間を極端に狭めて樹勢を抑える方法もありますが、後の樹間の草刈り等を考えるとどちらにも得手不得手がありそうです。

作業その2.「捕植」

乾燥しないように、切り整えた苗木はバケツの水に浸しておきます。この日は小雨でカッパを着て作業しましたが、泥だらけでした!

先に記した誘引の完了から萌芽の期間に進めたのが捕植です。こちらは枯れてしまった木を抜き、苗木を植える作業です。木は生き物ですから、害虫・害獣や病気の影響で枯れてしまうものも出てきます。

原因の一つとして挙げられるのが、コウモリガやブドウスカシバ等の虫の食害です。こちらは、発生時期がわかっていながらも、樹幹に食入する為、ぱっと見つけることができません。とはいえ、その為だけに膨大な数の株元や枝の節目等を一つ一つチェックするのは現実的ではありません。

コウモリガの幼虫の食害の様子です。今回は主幹に大きな穴を開けられてしまいました。
液体農薬のスミチオンを穴にひたひたに入れると、苦しくて出てきました。手との比較で大きさが分かるかと思います、、、、。

食入部位から、養水分の流れが衰退して枯れてしまいます。こちらに関しては、株元付近の除草を適時行ったり、ガットサイド等の農薬を主幹に塗ったり、食入孔を見つけた際に針金を使って刺殺することで被害を留める努力をしています。

殺虫剤のガットサイドSを株元に塗っています。這ってのぼる虫を予防できます。

また、ヴィラデストでは鹿の被害も多く見かけます。5月中旬から6月中旬にかけて、若い芽を食べられてしまうのですが、今年はその時期に合わせて、被害の多い圃場を中心に電柵を張ったり、ネットをかぶせたりして予防することができました。今のところ例年に比べると被害が抑えられています。近くの熟練農家さんの話では、熊が出た影響で、鹿の活動域がワイナリーから逸れているのもあるらしいです。

鹿に食べられてしまった芽の様子です。成長点と呼ばれる一番先っぽをかじって食べてしまうので、こんな形で残ります。

捕植から少々脱線してしまいましたが、苗木は苗木屋さんから買ったものに、休眠期の間に接ぎ木したものを加えて使います。全て自分達で接ぎ木でまかなえればよいのですが、接ぎ木も活着率は40%程で、作業に割ける時間も限られています。

また、苗木屋さんの苗は枝が太く、芽のふくらみがしっかりとしています。枝が太いということは、それだけの貯蔵養分を蓄えて越冬している証拠です。萌芽のそろいが良く、良好に成長していく証になります。少しいびつな自作の苗もかわいいんですけどね。

皆さんは、ぶどうは展葉の7,8枚迄は前年の貯蔵養分で生育しているということをご存じでしょうか?

ブドウは樹そのものが養分を貯蔵して、自身で蓄えた養分で枝葉を伸ばしていきます。後に、光合成が始まって根を広げていくつつましく生きる植物なんです!

苗木は、束ねてビニール袋に入れられ、ダンボール箱に梱包されて業者から送られてきます。根と穂木の部分が長い状態で送られてくるので、必要な長さに切ってバケツに水を入れて浸して準備しておきます。

苗木です。この一本が成長すると思うとわくわくします。

植穴は40cm四方、穴の中心部に掘り出した土を使って土饅頭を造って、そのてっぺんに出来るだけ根を立たせるようにして植えつけていきます。根の先端を下に向けることで、表土に根が広がることを避け、地中に伸びやすいように工夫しています。また、根の周りには土の塊をつくらずに、柔らかく細かい土をかぶせてあげることも重要な点です。最後に3回に分けて灌水して完了です。

圃場によっては、粘土質の土壌で、穴掘りで腕がパンパンになり、また、前に植わっていた樹の根が太く残っていて、掘り起こすのが大変です。

苗木の横に差しているのは、ダンポールといって、弱弱しい苗木の支柱になり、また草刈りの時の目印にもなっていきます。今年植えた樹の収穫は早くて2年後。この植え替えのサイクルをより健全にしていけるよう、努力したいと思います。

作業その3.畑掃除

きれいな景観を保つためにも畑掃除は欠かせません。

先に述べた2つの作業と違い、樹に触れるものではありませんが、非常に大切な作業だと作業開始の冒頭に先輩から念押しされました。サッカーでいうオフザボールの動きと言えば、分かりますでしょうか。

内容は、畝間を一輪台車をガラガラと引いて、枝と石を拾い集めて歩く圃場掃除と、番線に残った巻きひげを集めてカッターで切り落とす、巻きひげの除去作業です。

しつこく絡まった去年の蔓の写真です。コツをつかむ迄はカッターでも全然切れません。特にソーヴィニヨンブランが太くて大変!!

どちらの作業も結構ハードでした。

傾斜になっている圃場で台車で引きながら、中腰になって落ちている去年の枝や石を拾うのは一苦労です。畝間の掃除は、地味なのですが、今後の草刈りや農薬散布の作業性に繋がります。毎年やっている作業なのに、なんでこんな石が沢山落ちてるのか先輩に聞くと、堆肥に混じっているとのことでした。

カッターを使って太い蔓の革手もスピーディーに切って除去していきます。手袋もすぐボロボロになってしまいます。

番線の巻きひげには菌が残っている為、病気の原因となってしまいます。力づくでワイヤー端まで引っ張って集め、カッターで切り落とします。革手袋をして行いますが、すぐに穴が開くぐらい力を使います。結果母枝同様に、巻きひげも品種によって太さが異なり、ソーヴィニヨン・ブランが特に太くてなかなか切れません。

6〜7月は「芽かき」と「防除」を行います!

やはり畑でのしごとは「観察」が大事です。しっかり観察して適時に対応していくことが私たちの役割なんだと感じています。また、数多くの圃場を持つヴィラデストでは、やれることとやれないことの判断力が大切だと感じています。限られたマンパワーで最善の策を取る。天候に対応してフレキシブルに。そんなスケジューリングをやっている主任には頭が上がりません。

6〜7月は芽の成長も一段と加速します。今後は芽かきと、防除をメインに行います。残す芽の選択や、散布のタイミングが収量確保や質に直結する重要な作業が増えていきます。

また来月、新米ヴィニュロンから見えるリアルな現場をお伝えできたらと思います!

ピックアップ記事

関連記事一覧