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ぶどうを圧搾した搾りかすはどこへ?資源になる?

トピックス

ぶどうの搾りかすといえば、フランスではマール、イタリアではグラッパと呼ばれる蒸留酒の原料として利用されているのは有名ですよね。
芳醇なワインを生み出した後の搾りかすはぶどうそのものであり、様々なものに変わり意外なものとして再利用されている資源です。

ぶどうの果汁を絞った後に残る絞りかすは 皮、種、梗からなり、その多くが産業廃棄物として処分されています。
しかし絞りかすには、ワインに多く含まれることで有名なポリフェノールをはじめ、さまざまな機能性成分が含まれており、その資源としての可能性が注目されています。

一つの役目を終えたぶどうの搾りかすは、その後どこへ行くのでしょうか。

目次

  1. 搾りかすの再利用法
  2. 飼料価格高騰への対策だけではない!ブランド肉として注目
  3. 家畜の堆肥で悪臭を抑制。土壌や地下水を浄化する薬剤
  4. 環境に良いサスティナブルな資源の再利用

搾りかすの再利用法

圧搾はワインとなるための大切な工程ですが、果汁と別れ告げた果皮・種子を含むブドウの搾りかすはどこへ行くのでしょう?再利用はしているだろうけど、どういったものになっていくのでしょうか?

ワインの副産物として有名なもののひとつにグレープシードオイルがあります。
グレープシードオイルはその名の通りぶどうの種から採れるオイル。種に含まれるオイルの量は約10%前後ととても少ないので大量の搾りかすが必要になり、ワインの生産地ではよくつくられているオイルです。このオイルにはビタミンEが豊富に含まれており、その量はオリーブオイルの約2倍。
無味無臭でクセの無いオイルですが、最近はあえてぶどうの風味を持たせたオイルの開発も進んでいます。

ぶどうの搾りかすは「ワインパミス」とも呼ばれ、ポリフェノールはワインの約2倍、ぶどうの皮に含まれる成分でワインには移行しないというオレアノール酸にはアンチエイジング効果や口腔環境を整える効果が期待されています。
各メーカーからワインパミスを使用したチョコレートなどの食品が発売されており、食品以外にもシャンプーやハンドクリームなどの美容品も数多く登場しています。

飼料価格高騰への対策だけではない!ブランド肉として注目

畜産の分野でもワインの搾りかすは再利用されています。
アメリカ・オレゴン州の農場では、その土地で収穫されたピノ・ノワールの搾りかすを牛に与えると、非常に柔らかく霜降りの良い肉になることがわかりました。

日本国内でもワインの生産地では搾りかすが大量に出るので、原料・飼料として再利用しやすいように乾燥させ粉末にするなどの研究がされ、保存や管理がしやすくなることによって再利用の輪が広がり、
とある農場では地元のワイナリーで廃棄されたワインの搾りかすを牛の飼料として与えたところ、
その味わいの良さからブランド化することに成功。

飼料の価格を抑えるだけでなく良い味わいづくりにも搾りかすは効果を発揮し、この他にも養鶏や魚の養殖などでも搾りかすを飼料として与える循環型農業が広まっています。

家畜の堆肥で悪臭を抑制。土壌や地下水を浄化する薬剤

家畜の排泄物にぶどうの搾りかすを加えたところ、排泄物由来の悪臭を抑える効果が期待できるという研究結果が報告されています。
家畜の排泄物は不適切な管理をしてしまうと悪臭の元となり汚染を招く要因となってしまいますが、適切な処理を行えば堆肥として活用できる資源にもなります。
さらに、ぶどうの搾りかすを原料にした汚染された土壌を浄化する薬剤の研究も進んでおり、
搾りかすに含まれる成分によって微生物を活性化させ、微生物に汚染を分解させる薬剤で、環境や人体に悪影響が無く3割ほどのコスト削減に成功しました。

ますますぶどうの搾りかすの再利用法に関心が集まりそうです。

環境に良いサスティナブルな資源の再利用

サスティナブルの基本は廃棄物の削減とその再利用で、ぶどうの搾りかすはワインづくりにおいて最大の廃棄物です。
その量はワイン6リットルごとに平均1キロの搾りかすが生産されると言われており、ワイン業界にとって廃棄量を減らしていくのは大きな課題といえるでしょう。

地球温暖化の影響は着実にワインづくりに影響を与え、これまでぶどう栽培を考えられなかった産地での栽培が始まるなどの嬉しい変化もある反面、暑さに弱い品種は今まで通りの栽培方法では品質を維持するのが難しくなってくるという大きな弊害があります。
食品業界ではぶどうの搾りかすの他にも、バナナやリンゴの皮、コーヒー豆の粕などを資源として再利用する働きや、プラスチックの緩衝材を削減しようという動きから紙製ボトルの開発も進んでいます。

美味しいワインが飲める日常や素晴らしいワイン文化が後世にも引き継がれていくよう、今後のワイン業界の変化に目が離せません。

佐藤

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地方都市在住 下戸のソムリエ。 お酒はあまり飲めないが、お酒が持つ歴史や雰囲気が好きで20歳からバーで勤務。 中年になりさらにお酒が飲めなくなったが日々勉強...

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