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新米ヴィニュロンが語るぶどう栽培の1年に密着!8月前半「整枝・除葉・防除」

その他

梅雨ってあったっけ?というぐらい雨が少なかった6月から7月中旬は畑作業がスムーズに進んだのはよかったですが、今年植えた苗木がぐったりしていて、思わず「雨降れー!!」と願ってしまいました。

気象庁の過去のデータによると、「例年に比べて〇〇」という表現がすごく難しいことに気付きました。雨量の合計や平均気温だけでは判断できないことがあまりにも多いからです。とはいえ、より詳細なデータを分析して仮説を立てていくことは非常に重要です。調べてみると東御市では2018年に似た数字が出ていることがわかりました。
今年は急な雨と晴天の繰り返しによる高湿によって病原菌にとってうってつけの気候条件が長く続きました。開花・結実を終えた今、私達はこれを死守していくことが全ての作業の大前提になっていきます。有機栽培の圃場では一気に病気が広がってしまいましたが、「過ぎたことを気にしている暇があるなら、今できることを!」という先輩達の必死さがひしひしと伝わってきます。

8月前半の作業は整枝・除葉・防除がメインでした。

整枝 〜新梢の間隔を整理〜

隣の垣根から先輩を隠し撮り。伸びた新梢を1本1本丁寧にまっすぐに直して、

テープナーで固定していきます。

先月の記事で、「たくし込み・摘心」を行いましたが、その後に行ったのが「整枝」です。

まだ、お読みでない方はこちらもあわせて読んでみて下さいね。
新米ヴィニュロンが語るぶどう栽培の1年に密着!6,7月の新梢伸長期の「芽かき・新梢管理」

「整枝」とは、伸びた新梢を誘引して固定することで新梢の間隔を整理する作業のことを指します。ブドウはそのままでは自立できないので、放っておくと風で横に倒れたり、折れてしまうこともあります。また、風通しを良くして、満遍なく日光が当たるように整える必要があります。

今年は新人の私が芽かき作業で足を引っ張ったこともあり、遅れを取っていたのでしっかりと時間を割くことができませんでした。今年は摘心・副梢切りで各圃場を周る際に、少しづつ手を加えて整えています。大きく横に倒れて隣の新梢とクロスしたものを、ワイヤーに対して垂直に直したり、2本のワイヤーの間に入っていない新梢を入れ込んでいきます。

12haの畑を持つヴィラデストでは、全ての作業を手作業で行うことはできません。そのため一度ハサミで摘心した後は、随時トラクターにバリカンをアタッチメントして回ります。ゆえに誤って新梢が切られてしまったり、短く刈られてしまうこともあります。機械だと人の手に比べて精度が落ちるのは分かっていたものの、誤って切られた新梢に房がついていたのを見ると心が痛くなりました。

トラクター摘心の導入は今年が2年目になるそうで、来年以降はより害を少なくする工夫や作業スケジュールをチーム皆で構築していくようです。

整枝ができているのとできていないのでは、その後の作業効率や、ブドウの質に大きく影響します。来年以降は整枝作業の時間を確保できるように先輩方のスピードについていけるように頑張りたいです!

除葉 〜房回りの葉を取る〜

除葉すると房回りがスッキリして、観察しやすくなりました!!

文字どおり、房回りの葉を取る作業です。徐葉に関しては生産者によってさまざまな考えがあります。ひと昔前は、フルーツゾーンの葉は全て取り除いて、房がしっかり見える状態が良いとされていたようですが、それによって葉の光合成がなくなってしまい、糖度が上がらないという問題があります。そのため、品種や生産者の造りたいワインのスタイルに合わせて選択されています。

作業目的は、風通しを良くすることと、房に日光を当てることの2点です。

風通しが良くなることで、病気にかかりにくくなるのと、農薬散布時に、房にもしっかり当たるようになります。また、日が当たることで着色の促進や、ピーマン香の原因となるメトキシピラジンという物質の減少などが味わいに大きく影響しますが、日焼けや酸の過剰な低下のリスクもあるため、難しい選択です。

ヴィラデストでは、白ブドウとピノノワールは垣根の東側のみ、赤ブドウは両側の房より下の葉を1本の樹に対し6~8枚除葉します。房の前に生えている葉を中心に除くイメージです。中腰になり、目線を合わせながら足を止めずに両手を慌ただしく動かして除去していきます。スピード重視の中、葉柄に残った栄養も無駄にならないように、できるだけ葉だけを摘むように意識して除葉しました。
アメリカ等の大きなワイナリーでは、機械でやっているところもあるようです!

防除 〜生物からの害を防ぐ〜

糖度が上がってきて、小動物が味見にきたようです。電柵設置を急ぎます!

防除とは、生物からの害を防ぐことで、大きく4つの部類があります。化学的防除・耕種的防除・物理的防除・生物的防除です。今回は、この中の耕種的防除と物理的防除についてお話します。その他の防除は下記を参照ください。
化学的防除=農薬散布による化学薬剤を使用した防除
生物的防除=加害する虫の天敵を導入する防除

●耕種的防除について

耕種的防除とは、作物が置かれている環境を栽培上の工夫で、病害発生のしにくい環境にすることです。ブドウ栽培においては、草刈り等によって圃場衛生を整えたり、雨滴を通して広がる病害を抑える為に雨除けを設けたりする作業が挙げられます。ヴィラデストでは除開花時期に、ピノノワール品種の圃場にレインカットを設置しています。房のあるフルーツラインの雨除けに2番線を利用して、両側に約30cm程のポリシートを張ります。
長い垣根に張られるポリシートは、設置するのも回収して洗うのも一苦労ですが、品質には代えられません!
どうやらポリシートを洗って巻き取る機械を自分達で自作したらしく、だいぶ時短になったそうです。創意工夫を楽しみながら、樹と向き合う時間を少しでも多くとるようにします。

●物理的防除について

物理的防除とは、袋掛けや柵の設置によって、物理的な侵入加害を物理的に防ぐことです。収穫期の今では、甘くなってきたブドウを野生動物が見過ごす訳がありません。ヴィラデストでは、電柵を圃場周りに設置して、食害を防除しています。

ヴィラデストの周りでは、主にハクビシン、タヌキ、イノシシによる害が多く、それぞれの鼻の高さに合わせて、3本の電柵を張っています。傾斜のある広い圃場の周りを3周するだけでも大変じゃないかとイメージされるかと思いますが、大体3m間隔で立てた電柵柱に括りつけながら低い姿勢で動くので、農業トレーニングでたくましくなった私にはちょうどいい運動でした。一日中やり終えた日の夜は、お尻が擦れてミミズ腫れになったのは良い笑い話です。

来月はいよいよ収穫です!!

ピノノワールの若木も、ようやく小さな房を付けました。

小さいけれど、沢山のエネルギーが詰まっています。

委託醸造を受けた千葉県産のブドウ(標高が低く成熟が早い)の仕込みをいち早く行われ、いよいよ収穫を迎えることに緊張とともにワクワクしています。

ヴィラデストでは、徐々にベレゾン(色付き)始めてきたところで、収穫は来月中旬以降、早い品種から始まっていきます。

よく、ワイン用ブドウは美味しいのか?と聞かれますが、巨峰などの生食用ブドウの糖度は18度前後に対して、ワイン用ブドウの糖度は21~24度で断然甘いです。定期的に味をチェックしながら、成熟度合を追っていきたいと思います。

来月はいよいよ収穫、選果となります。品種ごとのブドウの写真を沢山ご覧いただけると思うので、お楽しみに!

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