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金原亭馬生師匠の人物紹介

ワイン寄席

オンラインワイン寄席でおなじみの、「金原亭馬生」一門。
今回はこの一門の総帥である、金原亭馬生師匠をご紹介します。

目次
1.金原亭馬生の落語
2.金原亭馬生一門
3.金原亭馬生の経歴
4.金原亭馬生の落語を聴く

金原亭馬生の落語

当代(11代目)金原亭馬生は、落語協会に所属し、理事を務める重鎮です。
当代金原亭馬生は1947年生まれ、団塊の世代に属する72歳です。
72歳は十分なベテランですが、落語界というところ、上にまだまだ多くの現役落語家がいます。馬生師匠にも、一層の活躍が期待されるところです。
当代馬生の師匠は、先代金原亭馬生です。
当代の芸風は比較的、師匠に近く、端正で所作の美しさが光るものです。
落語にも様々な方法論があり、ギャグたっぷりで進める落語も強い人気を集めています。
ですがそうした芸とは一線を画し、古典落語に漂う本来の面白さで満足させてもらえるのが、馬生師弟の落語です。

金原亭馬生一門

落語は、師匠から弟子へと受け継がれていく古典芸能です。
現在の金原亭馬生一門と、その成り立ちを押さえておきましょう。
「当代金原亭馬生一門」といえば、師匠である馬生を筆頭にした、その弟子たちのことです。今後孫弟子ができると、孫弟子もまた一門となります。
いっぽう、先代金原亭馬生一門というと、当代も含めたさらに大きなくくりとなります。
当代の兄弟子である五街道雲助など、弟子や孫弟子を抱える師匠もおり、大きな一門はますます大きくなっています。
さらに、「古今亭」というさらに大きな一門のくくりの中の一つでもあります。
師弟関係の流れを整理しましょう。こうなります。

5代目古今亭志ん生 ⇒ 10代目金原亭馬生 ⇒ 当代(11代目)金原亭馬生

それぞれ弟子を多く抱えるため、古今亭・金原亭がどんどん大きくなっていくのです。
昭和を代表する落語家のひとり、古今亭志ん生からこの一門は始まります。
その長男が先代(10代目)金原亭馬生。次男が古今亭志ん朝。ともに志ん生の弟子です。
破天荒な父・志ん生とは違う、先代馬生の地味ながら端正な芸風は、現代でも非常に人気の高いものです。そして、その芸をできるだけ引き継いで、後世に伝えようとする弟子たちも多いのです。
当代馬生師匠もそのひとりです。

金原亭馬生の経歴

当代金原亭馬生師匠が、その師匠である先代金原亭馬生の下に弟子入りしたのは、1969年です。
この世代はもともと数が多いうえに落語家志願者も実に多く、すんなり弟子入りできた人は決して多くありません。
入門して「小駒」の名前をもらいますが、あるとき他の弟子ふたりとともに、師匠から辞めるように言われます。
これは前座にありがちなしくじりをとがめられてのことでもなく、破門ではありません。当時落語家が増えすぎていたため、弟子たちの将来を案じたものとも思われますが、師匠の真意は当代にもわからないようです。
その後落語の道をあきらめきれず、再び師匠の元に復帰します。当代馬生のキャリアはこのため、前座から二ツ目昇進まで9年掛かっていますし、ブランクの間に多くの人に香盤(序列)を抜かれています。
苦労人なのです。
1978年に二ツ目に昇進し、馬治の名をもらいますがその後1982年に、師匠・馬生に先立たれてしまいます。
東京の落語界では、真打になっていない落語家は、師匠を喪うと別の師匠につかなければなりません。
そのため馬治も、兄弟子の金原亭伯楽門下となりました。その後、馬治のまま、1987年に真打に昇進します。
その後、先代の弟である古今亭志ん朝が、空位になっている金原亭馬生の名を継ぐように、先代の弟子たちに働きかけます。
大事な名前を活かして欲しいという要望です。10代続いた由緒ある名前(名跡)を継ぐのは落語家にとって栄誉でもあり、古今亭の総帥であった志ん朝が働きかけるのは、当たり前のことなのです。
ですが先代馬生の弟子たちは、欲のない人が多く、誰も自分が継ぐと手を挙げません。兄弟子・五街道雲助など、世間の評価の高い人も同様でした。
そこで1999年、馬治が11代目金原亭馬生を襲名することになりました。生え抜きの弟子の中でも馬治は7番目であり、本来大名跡(大きな名前)を継ぐような序列ではありません。
この経緯からもわかるように、当代金原亭馬生は、期待を一身に背負って誕生した存在ではなかったのです。
馬治自身は、若手時代から受賞歴もある人で、実力は折り紙付きでした。とはいえ当時の馬治に、馬生の名は限りなく大きいものだったでしょう。
大きな名前を継ぐというのはプレッシャーも大きなものであり、落語家の人生において必ず得をするとは限りません。
当代馬生ご本人も、自分自身の栄誉より、師匠の名前を守るために継ぐという意識が強かったようです。
しかし、結果的には、気負わずに背負った大きな名前がよかったのでしょう。名前が芸人を大きくすることも、間違いなくあるのです。
現在の馬生師匠は、真打3人、二ツ目3人、前座1人を抱えていますが、弟子たちの落語界における評判も上々です。
派手な芸風の人はおらず、地味ながら玄人好みの弟子が育っています。
一門の盛況振りも、大きな名前と無関係ではありません。

金原亭馬生の落語を聴く

実際に、当代馬生師匠の落語に迫ってみましょう。
2020年7月放映のNHK「日本の話芸」から。演目は人情噺の「唐茄子屋政談」です。
高座の前にご本人が語っていますが、先代馬生譲りの一席です。
日本の話芸の東京落語は「東京落語会」という伝統の落語会で収録されるのですが、コロナ禍で会も開かれず、無観客収録となりました。この点、オンラインワイン寄席と同様です。
ですが馬生師匠、無観客でやりづらそうな気配は一切ありません。
ベテランにとってもコロナに伴う無観客は想定外であり、この状況に慣れている芸人などひとりもいません。にもかかわらず、なんの違和感もないのはすごいことです。
クスグリに頼らず、噺をしっかり語り込む技量があってこその技といえるでしょう。
馬生師匠の所作は常にゆるやかで、完全に静止することはなく、実に自然に映ります。
その語りも、決して焦りません。じっくりと進めるうちに、聴き手に人情がじわじわ沁み込んできます。
かといって、もったいをつけるようなこともなく、やはり非常にナチュラルな味です。
主要登場人物であるおじさんも人情家であり、それほど厳しい人柄には描きません。
主人公の勘当された若旦那も、人柄のいい人物です。
落語の登場人物が、演者の分身であることがよくわかります。
当代馬生師匠の筆頭弟子、馬治、馬玉のふたりも、師匠が綺麗だったので入門したと声を揃えています。
綺麗というのは、落語にも現れる、生活全般の立ち振る舞いのことでしょう。
実に通好みの金原亭馬生師匠、ぜひじっくり向き合って、そのたまらない味を実感してください。

弁天小僧

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日頃はクレジットカード、キャッシング、カーシェア等を専門に執筆しているライターです。 落語が趣味で、週1回寄席や落語会に出向いています。

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