クロージャー(ワイン栓)にはそれぞれの役割がある!


ワインの栓にはいろいろな種類がありますが一番使用されているのはコルク栓。
これに代わる天然素材は今の所なさそうですが、使用頻度は減ってきています。
新しいボトル栓としてはスクリューキャップなどがあります。
やはりコルクが良いのか?それともあたらしい方法か?
その種類とワインに与える影響について探っていきましょう。
3種類のコルク栓とスクリューキャップ
代表的なワインクロージャーの大きな特徴と役割を把握していきましょう。
①天然コルク
コルク樫の樹皮を厚く剥がして、円筒状にくり抜いたものです。
伐採はしませんが再び採取できるには約10年かかります。
生産量が限られてしまうため高価。
- 天然素材のため品質が安定しない
- 昔ながらのワイン栓として格調を重視するワインに使われている
②テクニカルコルク(圧搾コルク)
コルク樫の樹皮を細かく砕いて、圧力をかけて押し固めたコルク栓。
天然コルクで使用した残りを使用できるので、比較的安価で生産ができます。
- 材料の品質が安定している
- 一般的なワイン栓として広く流通している
③合成コルク(プラスチックコルク)
シリコンの樹脂などから作られるので樹脂製コルクとも呼ばれます。
- 初期は品質が悪く酸素透過率も高かった
- 近年では酸素透過量を抑えられて長期熟成もできるようになった
スクリューキャップ
ペットボトルのキャップのように手で回して開けられる栓です。
熟成には向かないとされていましたが
近年では酸素透過率がコントロールできる熟成タイプにも使われています。
- 消費者のイメージとして安価なワインの栓というイメージがある
- ニュージーランドワインは99%がスクリューキャップのワイン栓を使用している
他のクロージャーもある
上記のワイン栓は代表的な種類です。他にもクロージャーはあります。
- ガラス栓
その名の通りガラス製の栓です。
2004年ごろから販売されている「VINO-LOK」が有名
- ZORK
コルク栓でもなくスクリューキャップでもないスパークリングワイン用の栓です。
2002年にオーストラリアのZORK社が開発しました。
コルクを語るのに欠かせないブショネについて

コルクが原因でワインに不快な香りが生じる事を「ブショネ」といいます。
フランスでコルクを意味する「ブション(bouchon)」といい、その形容詞形がブショネ。
主に天然コルクで発生しやすい現象です。
ブショネの原因
天然コルクには多数の微生物が殺菌に使われる塩素を代謝させます。そこでTCA(トリクロロアニソール)という原因物質を生み出すのが原因。又、コルク樫自体にもTCAが含まれていることもあります。
ワイン風味が著しく損なわれる香りを発生させて「濡れたダンボール」や「腐った雑巾」のような匂いがすると言われています。
このTCAは微量でも多くのひとが感じることができる物質。又、同時に他の香り、果実味などを減退させる作用もある非常にやっかいな物質です。
現代の技術で100%ブショネを無くすことは不可能とされています。
又、醸造施設が原因物質に汚染されてブショネが起こることもあります。コルク由来であれば1本で済みますが、生産ロットごと汚染されるので大問題です。
ブショネの発生確率
近年ではブショネにあたる確率は2〜3%と言われています。
多くのワインが天然素材のコルク使用を使用している以上ブショネに当たるのは起こりうる事故と考えるのがいいと思います。
ブショネがほぼないDIAM(ディアム)コルク
原因物質をほぼ除去したコルクがあります。それがDIAM(コルク)です。
これは圧搾コルクの仲間で、原料のコルクに特殊な二酸化炭素を用いて原因物質を除去するというものです。
DIAMコルクの有用性
2013年に。Full Circle Wine Solutions(サンフランシスコを拠点に、世界的にワイン・スピリッツの教育活動を行う会社)とマスターソムリエであるEvan Goldstein氏が中心となって企画された行われたワイン栓のちがいによる比較評価では熟成も期待できると高い評価を得ました。
高級ワインにおいてはコルクを使用するのがいいと考える生産者が多くその中ではDIAMコルクはイメージ的にも熟成という観点からも注目されているコルクです。
DIAMコルクの種類
DIAMコルクをよく見てみると小さく数字が書いてあります。これはコルクの耐用年数です。
1,3、5、10、30とありコルクの密度の違いで耐用年数が変わります。
高級ワインでもスクリューキャップを使用する理由

スクリューキャップは低価格のワインのイメージがありました。
しかし近年ではブルゴーニュのジョセフ・ドルーアンやボルドーのドゥルトなどの名門がスクリューキャップを使用しています。
フランスの名門も使用するスクリューキャップとはどのような利点があるのでしょうか?
ブショネのリスクが少ない
コルクが主な原因のブショネ。スクリューキャップはアルミを使用しています。大切なワインをブショネのリスクから守ってくれます。
長期熟成が可能
以前は酸素浸透率が安定していなかったようですが、最近ではコントロールが可能です。好みの酸素浸透率が選べる様になりました。
消費者が扱いやすい
ワイン消費者が幅広くなったことでより扱いやすさがもとめられるようになりました。
開栓や閉栓が容易、ボトルが立てて保管ができるなど消費者のメリットが多くあります。ヨーロッパでも扱いやすいスクリューキャップが普及しているのは自然な流れでしょう。
まとめ
ワインのクロージャーには色々な種類があります。
コルクを使用する以上、ブショネは起こりうる問題です。しかし様々な技術進歩により確率は格段に下がってきています。
どんなワインを造るかによってふさわしいクロージャーを選ぶ。これもワイン造りの課題のひとつです。ワイン栓にも注目して飲むのもまた面白い飲み方ですね。

ライター 鎌田 陽(かまだ ひかる)
元ホテルマン。レストランを中心にソムリエとして勤務。ワインに関わって約10年、メーカーズディナーなどのイベントを企画・開催「ワインは人を幸せにする飲み物」をモットーにフリーランスライターとして活動中!