イタリアワインの基礎知識【トスカーナ編】
誰でも一度は聞いたことがあるイタリアワインの産地トスカーナを分かりやすく解説。トスカーナの歴史と特徴、品種の個性、おすすめワインをご紹介します。
目次
1.トスカーナの歴史と特徴
2.トスカーナワインの格付け制度について
3.トスカーナ州でよく食べられる郷土料理とは?
4.トスカーナの主要ワイン用ブドウ品種
5.おすすめトスカーナワイン 10選
トスカーナの歴史と特徴
トスカーナ州は、イタリアの中部に位置し10県を有する州です。州都としてフィレンツェがあり、ワインはもちろんのこと、自然が豊富にありカルスト台地が広がる州立公園や20以上に及ぶ温泉リゾート、毎週日曜日に開催されるカーニヴァル、夏には海水浴を楽しめるにぎやかな街です。
そんなトスカーナのワインは、どのような歴史と特徴があるのでしょうか?また、ワインの格付け制度、トスカーナ州で食べられている郷土料理についてご紹介致します。
トスカーナの歴史と特徴とは?
トスカーナ地方は、大変歴史のある州で古代ローマ時代まで遡るほど長い歴史の街です。また、中世に経済や文化面でさまざまな影響力をもった都市が存在しています。
その中心地にあったのがフィレンツェで経済的にも芸術的にも栄えていたため、ルネサンス芸術が大きく展開されていきました。
トスカーナは、イタリアの中でも観光のメッカといっても過言ではありません。フィレンツェはローマに次ぐ観光地とも呼ばれ、有名なピサの斜塔などもあり花の都とも言われています。
また、トスカーナの代表的なものといえばワインです。トスカーナで造られるワインは、イタリアを代表するワインが非常に多いです。トスカーナ地方では、ワインはお酒という意味合いだけではなく、歴史や文化の一つとしてとらえられています。
味や香りのバリエーションが非常に多く、トスカーナ州で造られるワインは世界中のワイン通を唸らし続け、愛飲家も非常に多くいます。
トスカーナワインの格付け制度について
イタリアワインには、フランスワイン同様に格付け制度があります。イタリアワインは、4種類の格付けで分類されております。
ここでは、イタリアワインの格付け制度について紹介いたします。
D.O.P.(D.O.C.G.)
イタリアワインの格付けの中で最も厳しい設定を設けられているのがD.O.C.G.です。また、設定が厳しいが故にイタリアワイン法の中でも最上位に格付けをされています。
日本語に直すと「保証付き統制原産地呼称ワイン」と呼ばれます。このD.O.C.G.を名乗ることができるエリアになるためには、D.O.C.認定をされてから最低10年以上経過していることが条件となっております。
トスカーナ地方にはD.O.C.G.に位置するワインが豊富にあり、そのどれもが一度は飲んでみたいワインとしても有名です。
D.O.P.(D.O.C.)
イタリアワインの中ではD.O.C.G.に次ぐ格付けです。「統制原産地呼称ワイン」と呼ばれており、指定地区で生産されているブドウを100%使い、生産過程の条件を満たすことでD.O.C.という称号を獲得することができます。
I.G.T.
I.G.T.は3番目に位置する格付けです。しかし、3番目だからといって品質が低いわけではなく、D.O.C.G.やD.O.C.に認定されない品種を使いワイン造りを行い、あえてI.G.T.でワイン造りを行う生産者もいます。
それにより、格付けの規制にとらわれずリーズナブルで品質の高いものが多く存在します。
Vino(V.D.T.)
一番下の格付けに位置するのがV.D.T.です。特別な規定が少なく、好きなブドウ品種・生産地で造ることができます。
D.O.C.G.やD.O.C.の様に厳しい規定が設定されていないこともあり、生産者が自由にワイン造りを行えます。リーズナブルで、非常に美味しく質の高いワインが造られていることもあります。価格帯も高級志向ではなく普段飲み用のテーブルワインから美味しい一本を見つけることが出来るということで、ワイン通には非常に人気が高いです。
トスカーナ州でよく食べられる郷土料理とは?
トスカーナ州は、トスカーナ大公国やメディチ家の影響で、高級料理の伝統の名残りがあります。
しかし、一般家庭で食べられる郷土料理は非常にシンプルな物が多いです。単純に、「焼く」「煮込む」だけの料理が主流で、塩と胡椒、オリーブオイルを使い素材の良さを引き出した調理法が多くあります。
ここでは、トスカーナで食べられることが多い郷土料理を紹介いたします。非常に簡単な料理もあるので、自宅でも気軽に作れますので参考にしてはいかがでしょうか。
トリッパ アッラ フィオレンティーナ
こちらの料理は、牛の胃(ハチノス)のトマト煮込みです。フィレンツェでは、トリッパは代表的な郷土料理でレストランでおすすめを注文するとトリッパが出てくるなんてことは良くあります。
作り方は非常に簡単なので、レシピを紹介いたします。
材料/4人分
ゆでたトリッパ・・・800g
玉ねぎ・・・1個
鷹の爪・・・1~2本
白ワイン・・・大さじ2
ローリエ・・・2枚
コンソメ・・・適量
トマト缶・・・1缶
にんにく・・・2欠け
オリーブオイル・・・大さじ4
塩、こしょう・・・適量
おろしたパルミジャーノ(無ければ粉チーズでも良し)
1.下茹でして柔らかくしたトリッパを食べやすい大きさに切り分けます。
2.みじん切りにしたニンニクを弱火で香りが出るまで炒める。
3. ニンニクの香りが出たら、玉ねぎを鍋に入れてしんなりするまで炒める。
4.玉ねぎがしんなりしたら、トリッパと鷹の爪を加える。
5.玉ねぎとトリッパを5分程炒めて、トマト缶を加える。白ワイン、コンソメ、ローリエ、塩、こしょう、コンソメをして味を整えて蓋をする。中火で水気が出なくなるまで煮込む(約1時間)
6.トマトソースが全体的にとろりした状態になったら、火を止めてパルミジャーノ(若しくは粉チーズ)大さじ2を散らして、全体になじませ5分ほど休ませる。
7.最後に塩、こしょうで味を整える。更に盛り付けて、お好みでパルミジャーノとオリーブオイルを振りかけて完成です
トマトのさっぱりした味わいとトリッパのこってりした味わいが、キャンティクラシコなどの酸味があるワインと相性が抜群の料理です。
パンツァネッラ(トマトとパンのサラダ)
トスカーナ地方では、パンを非常に良く食べます。そのため、固くなってしまったパンでさえも美味しく食べることができるレシピもあります。それが、パンツァネッラ(トマトとパンのサラダ)です。
この料理を覚えておけば、固くなってしまったバケットを再利用して無駄無く食べることが出来ますので是非覚えておきましょう。
材料/4人分
バゲット・・・1/2本
トマト・・・1個
きゅうり・・・1/2本
たまねぎ・・・1/2個
バジル・・・5枚
水・・・250cc
エクストラバージンオリーブオイル・・・大さじ3杯
ワインビネガー・・・大さじ3杯
塩・・・小さじ1
こしょう・・・適宜
1.固くなって余ったバゲットを包丁で切る。
2.切ったバゲットを、ワインビネガー大さじ1を入れた水250ccに20分ほど浸ける。
3.湯むきしたトマトを半分にキリ、種を取り除きダイス状に切る。玉ねぎは薄くスライスをして水にさらす。きゅうりは薄く輪切りにする。全てをボウルに入れて、塩、こしょう、ワインビネガーを加える。
4.漬けておいたパンを手でちぎり、切って味付けをしておいた野菜のボウルに入れ、バジルとオリーブオイルを加えて、軽く混ぜます。
冷蔵庫に入れて30分ほど寝かせます。味が全体的に馴染んだら更に盛って完成です。しっかりと味が馴染んだ冷たいサラダが、キリっと冷やした白ワインとピッタリの一品です。
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ
トスカーナの代表的な名物料理といえば、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナです。この料理を自宅で作るのは、かなり厳しいでしょう。
まず、必要なのはTボーンステーキです。Tボーンステーキは、骨の境目でロースとフィレに分かれている巨大なステーキです。
牛肉を焼くときは炭を使います。網にのせるときに肉を縦にした状態でないと美味しいビステッカにはならないとされています。
キャンプで数人で集まって作るならできるかもしれませんが、近所でTボーンステーキを購入するのは中々難しいもの。どうしても食べたいのであれば、イタリアレスントランに電話をして予約をしておけば食べれるでしょう。
この、豪快なステーキに合わせるワインはブルネッロディモンタルチーノやバローロなどパワフルな赤ワインがピッタリでしょう。
トスカーナの主要ワイン用ブドウ品種
トスカーナで造られるワインには、どんなブドウが使われることが多いのでしょうか?この記事では、主要ワインのブドウ品種を詳しく解説します。
サンジョベーゼ
サンジョベーゼは、赤ワイン用のブドウ品種でトスカーナはもちろんのことイタリア全土で栽培されている、最もメジャーなブドウです。
タンニンと酸のバランスの良い赤ワインを造ることが多いブドウですが、品質や熟成度によって様々な味わいを発揮するワインが出来ます。年数が経ち熟成されたワインは、酸味が柔らかく、渋みがまろやかになります。
トレッビアーノ
トレッビアーノは、白ワイン用のブドウ品種です。イタリアはもちろんフランスでも多く栽培されています。フランスでは、ユニブランと呼ばれる品種でイタリアは世界で二番目の栽培量を誇ります。
酸味が豊かで、アルコール度数が低いワインが多く造られています。柑橘系の爽やかな香りでほのかな甘みと苦味を感じられる、フレッシュで辛口な味わいを楽しむことができます。
カベルネ・ソーヴィニョン
カベルネ・ソーヴィニヨンは、イタリアのみならず世界中で造られているブドウ品種です。サンジョベーゼがメインで造られることの多いイタリアワインですが、トスカーナ地方ではカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしてワイン造りに使用されています。
イタリアのカベルネ・ソーヴィニヨンは、スーパータスカンと呼ばれトスカーナ沿岸部・ボルゲリで大成功を収め、世界中のワイン通を唸らしています。
イタリアのカベルネ・ソーヴィニョンは、温暖な気候で育っているため成熟度が高く、重厚で力強い素晴らしいワインが造られます。
メルロー
イタリアで造られているメルローは、トスカーナ地方とヴェネト地方で栽培されています。味わいは、非常に上品で力強さも兼ね備えている個性的なワインを造っています。
メルローらしい華やかでまろやかな味わいを楽しむことから、フランスのボルドーにも負けないほどに品質が高いです。
カナイオーロ
カナイオーロは、イタリアのみで造られている土着品種です。イタリアで代表的なワインの一つである、キャンティに使用されることが多く、酸やタンニンが強いサンジョベーゼに柔らかさや厚みを与える役割があります。
カナイオーロ100%で造られたワインもあります。香りは強くはありませんが、まろやかな味わいを楽しませてくれるワインです。
おすすめトスカーナワイン 8選
トスカーナ州で造られているワインは、手頃な価格から高価格帯まで沢山の種類があります。ここでは、おすすめのトスカーナワインを10選をご紹介いたします。
アンティノリ ヴィラ・アンティノリ・ロッソ
トスカーナの名門ワイナリーの一つ、アンティノリが造る赤ワインです。世界的な影響力を持つワイン・スペクテーターにおいて92点を獲得した、コストパフォーマンスの高い一本です。
スパイシーでチョコレート、スミレの花、赤い果実など複雑で凝縮感のある香り。酸味は少なくタンニンも穏やかでバランスの非常に良いワインです。
カザマッタ ロッソ
世界中のワイン通から認められているワインメーカーのテスタマッタ社で造られている低価格・高品質な赤ワインです。カザマッタは味わいに複雑さを与える為に、複数のヴィンテージワインをブレンドして造っています。
複数ヴィンテージをブレンドしているにも関わらず、味わいは非常に安定していて常に美味しいワインが楽しめる非常に素晴らしい一本です。
サッシカイア
スーパータスカンの元祖として30年以上も圧倒的な存在感を放つサッシカイア。ボルドーワインや他のトスカーナワインにも多大な影響を与え続け、イタリアワイン界で頂点に君臨する赤ワインです。
この2016年ヴィンテージは、パーカーポイント100点を獲得した最高の出来栄えです。ハーブやスパイス、なめし皮のニュアンスが漂い、ブラックベリーの強烈な果実の香りを複雑に醸し出してくれます。
口当たりは力強さとエレガンスを備え、しっかりとしたタンニンが深い味わいをもたらしてくれます。一口、一言で語るのは難しいですが人生の中で大きな喜びを得たときに飲みたい一本です。
ベリーニ キアンティ フィアスコボトル
トスカーナを代表するエリアの一つ、キアンティ。そのキアンティ地区では屈指のルフィナに本拠地をおくカンティーナ・ベリーニ社が造っているワインです。
今では、珍しくなったフィアスコボトルで伝統的な味わいを楽しめるキアンティですが、品質は非常に高い仕上がりです。
味わいは、ラズベリー、イチゴ、ベリーを思わせる香り。キアンティらしい生き生きとした酸味と程よいタンニンで、色々な料理に合わせやすい親しみのあるワインです。
ルーチェ2014
ルーチェは、スーパータスカンを代表する代名詞的存在です。ルーチェは、サンジョベーゼとメルロをブレンドしたワインです。この2品種をブレンドしたのは史上初とも言われ、他にはない味わいのワインを楽しむことができます。
ブラックチェリーやプラム、チョコレートやバニラ、シナモンやクローヴなどのハーブの香りを複雑に放っています。味わいは強い果実味と豊富でエレガントなタンニン、長く続く余韻が飲んだ後まで楽しませてくれます。
入荷するたびに完売するワインでもあるので、特別な日のために早めに手に入れても良いでしょう。
バンフィ コル・ディ・サッソ トスカーナ
サンジョベーゼとカベルネ・ソーヴィニョンで造られたバランスの良いワインです。サンジョベーゼらしい、ベリー系とスパイシーな香り。
フレッシュで飲みやすい口当たりは、トマト系の料理とピッタリ合います。
サンジョベーゼ・トスカーナ・アレティーノ
キャンティ生産者であるアレティーノ社が造る赤ワインです。サンジョベーゼが主体で造られます。
こちらのワインは果実味がやさしく広がり、酸味とタンニンのバランスが非常に優れています。キレの良い飲み口が牛などの赤身のお肉の食事とピッタリ合うワインです。
ゴヴェルノ アッルーゾ トスカーノ ポッジョチヴェッタ2016
ブドウの収穫を2回に分けて別々に醸造するワインです。味わいは、タンニンがしっかりとして、濃厚なレッドベリーのアロマとかすかに樽からくるバニラの要素を感じることができます。
イタリアのトップ生産者であるファルネーゼが手掛け、コストパフォーマンスの高いトスカーナワインが飲みたいというリクエストに応えて造られたワインです。
この記事では、イタリアワインの代表格であるトスカーナ地方の基礎知識について解説を致しました。さまざまな生産者が素晴らしいワインを造っている地方ですが、リーズナブルな価格で美味しいワインが飲めてしまうというワイン好きにとってはたまらない産地です。
トスカーナのワインに興味がある方は、上記で紹介したワインを飲むととても幸せになれることでしょう。是非、一度ご覧になって頂ければと思います。