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今見直されている!「コンクリートタンク熟成」

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ワインを発酵・貯蔵するときに用いる容器には種類があり、2022年のソムリエ教本には5つの容器が紹介されています。
その中でも、近年よく見かけるのはステンレス製のタンクではないでしょうか。

温度管理の行き届いたステンレスタンクが主流となっている中、コンクリートタンクが見直されています。
温度管理の必要がない事にワインへの影響はないのか?またステンレス・コンクリート・樽それぞれのコストは?

近年利用されているコンクリートタンク(コンクリート・エッグ ドリア・タンク)の形状について。またコンクリート・タンクを採用しているワイナリー。

大事な工程である発酵・貯蔵担う容器。今回はその中でも「コンクリートタンク」に焦点を当てていきます。

目次

  1. コンクリートタンクとは?
  2. コンクリートタンク熟成がなぜ見直されている?
  3. 銘醸ワインも採用しているその魅力について
  4. 進化を続ける発酵・貯蔵容器

コンクリートタンクとは?

収穫されたブドウがワインになるまでには様々な工程があり、
貯蔵の際に重要視されるのは、ワインが極力空気に触れず変質しない事です。

発酵・貯蔵容器の種類
  1. 素焼きの壺(アンフォラ・クヴェヴリ)
  2. 木桶
  3. オーク樽
  4. コンクリートタンク
  5. ステンレスタンク

19世紀からコンクリートタンクはワインの醸造に使用されてきました。
以前のコンクリートタンクは、建物の一部として設置されており、木樽のように移動させる事はできず、内部の容量も決まっているため、収量によってサイズを変えることはできませんでした。そして、他の貯蔵容器と比較すると熟成が遅い傾向にあったようです。

しかしメリットもあり、外気温の干渉を受けず内部の温度が一定に保たれること、
木製タンクに比べ内部の清掃がしやすいこと、コンクリートには香りが無いのでワインに香りが残らない、ヨーロッパの新樽は非常に高いが、コンクリートは耐久性もあり比較的安価である という利点から、多くのワイナリーで使用されていました。

しかし、1960年代に有名生産者が使用し始めたことで普及した、ステンレスタンクの登場によって
コンクリートタンクの需要は次第に少なくなっていきます。
ステンレス製タンクは何よりも衛生管理がしやすく、温度管理も容易、そして錆に強く丈夫で長持ちする事から、ワイナリーにとって生産コスト下げる上で大きなメリットとなったのです。

コンクリートタンク熟成がなぜ見直されている?

2001年にフランス・ローヌの名門 シャプティエがフランスのタンクメーカーに製作を依頼したことで開発された「コンクリート・エッグ」の登場が大きなきっかけとなりました。

「コンクリート・エッグ」は瞬く間に世界中に広まり、現在ではフランスをはじめ多くのワイン生産国で使用されています。
コンクリートタンク自体は以前からありましたが、「卵の形」はとても革命的でした。

「コンクリート・エッグ」のメリット
  • 卵型にすることで、内部で自然対流が発生し温度が均一になる。
  • ステンレス鋼と比較して、ワインのボリューム、口当たり、柔らかさが増す。
  • 木樽よりも少ないが微量の空気を通すので、旨味や複雑味を増す効果を得られる。
  • ワインの蒸発がほとんどない。
  • 木製と比較すると衛生管理がしやすい。
「コンクリート・エッグ」のデメリット
  • 重量があるため輸送費がかかってしまう。
  • コンクリートは酸に弱く、ワインの酸による腐食から保護する必要がある。

数々の有名生産者が「コンクリート・エッグ」を使用していることから、2010年には製作したフランスのノンブロ社は同製品のパイオニアとなっており、
この他に、連続的な渦を内部に生成させるアンフォラ型の「ドリア・タンク」や、
長く穏やかな発酵に適している伝統的な木製樽をモデルにした「円錐型モデル」など、様々な形状のコンクリートタンクを販売しています。

近年では日本企業の国産まゆ型コンクリート・タンクも販売され、日本のワイナリーでも使用する生産者が増えています。

銘醸ワインも採用しているその魅力について

「コンクリート・エッグ」のコンクリートには添加物を使用せず、洗浄されたロワール砂、砂利、塩素処理されていない湧き水、セメントが使用されており、
従来のコンクリートタンクのように、表面をエポキシ樹脂やタイルでのコーティングをしないので使用前に酒石酸溶液で処理する必要があります。(2〜3シーズンのうちに内部に酒石酸の層が形成されます。)

コンクリートは木樽と同様に微量の空気を通すため、発酵中のワインに微細な空気が送られます。
オーク樽のように熟成させながら、バニラやスパイスを思わせる樽由来の香り与えること無く、
ステンレスのようにフルーツのフレーバーやアロマを引き出すことが出来ます。

この他にもコンクリートはどのような形にも加工ができる事から、ワイナリーにあった形状、サイズで製作することができ、別の素材のタンクや樽との併用も容易なため世界中のワイナリーに普及したと考えられています。

進化を続ける発酵・貯蔵容器

使用される容器の形状や素材は時代と共に変化していきます。

古くはローマ時代から使用されていたというジョージアの「クヴェヴリ」ですが、
木桶や木樽が登場し普及するにつれ、重く壊れやすい素焼きの壺は使われなくなっていきました。
しかし、ジョージア発祥の伝統的手法は再び注目を集め、現代の生産者の力で蘇り、2013年には無形文化遺産として世界遺産に登録されています。

今見直されているコンクリートタンクも同様に、再注目されることでまた一つ醸造技術は進化を遂げました。

ピュリニー・モンラッシェの名門 ドメーヌ・ルフレーヴも「コンクリート・エッグ」を取り入れ、
更にセラー自体を卵型にするというこだわりを見せており、同じくフランスのタランソー社では2010年に「木製の卵形バレル」を発売。
シャンパーニュのドラピエが史上初の「卵形のバレル」を使用してワインを生産するなど、素材の他に「卵型」という形状にも注目が集まっています。

自然農法と同様に、発酵の過程でも出来るだけ人の手を加えずに自然に作り上げる製法と、
温度管理をせず、酸素を透過させるというリスクはありながら、ワインが呼吸できるコンクリートタンクにますます期待が高まりそうです。

コンクリートタンクで造られたワインは、ステンレスタンクと比べると素朴で柔らかな味わいになると言われており、フランスやイタリア、アメリカ、チリ、スペイン、南アフリカ等、世界各国で使用されています。

今後も普及していくと考えられており、ぜひそのワインを一度味わってみたいものです。
採用しているワイナリーにも注目していきたいですね。

佐藤

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地方都市在住 下戸のソムリエ。 お酒はあまり飲めないが、お酒が持つ歴史や雰囲気が好きで20歳からバーで勤務。 中年になりさらにお酒が飲めなくなったが日々勉強...

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