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新米ヴィニュロンが語るぶどう栽培の1年に密着!9月「防除・工場準備・収穫」

トピックス

9月に入り、寒暖差がしっかり出るようになりました。日の短さと、朝と夜の冷え込みにいよいよブドウ栽培も大詰め!ブドウの糖度の上昇を見ながら、収穫のスケジュールを組んでいきます。

糖度が上がると病気が広がりやすくなるうえ、害獣や蜂、蟻による食害も増えるようになります。そうなると収量を落とすだけでなく、収穫の時に病果取りの手間が増えるため作業スピードが遅くなっていきます。糖度が上がりきらずに収穫をすると、アルコール度数も上がらず、品種の個性や複雑味の印象の薄いワインになってしまうので塩梅が難しい時期です。

それらを天秤にかけて、天気予報の更新を食い入るように見ながら判断します。
我らが醸造責任者の小西さんも毎日分析作業をして、蓄積されたデータを基に指示を出されていました。リリースするワインの本数や味わいのイメージを造っていく実直な姿勢に背筋が伸び、収穫にも精が出ます。

防除 「科学的防除のメリット」

初回で坂に落ちかけましたが、少し運転に慣れた農薬散布のスピードスプレイヤー略してSSの写真です。

前回の記事で防除について簡単にまとめましたが、今回は「化学的防除」について少しだけ深堀りします。

私が勤めているヴィラデストワイナリーは有機栽培している圃場は2つだけで、基本的には化学農薬を使用して防除を行っています。目的は、安定した収量を確保する為です。有機栽培に対して慣行栽培と言われますが、この一年の経験から、耕種的防除に避けるリソースが現段階で圧倒的に足りていないという体感も含めて、選択としてメリットが多いと思います。

実際に、有機の圃場は今年は収量が半分以下になりそうですし、去年はミノムシによる害が酷かったりと、毎年毎年違った害に対してよりフレキシブルに対応していかなければなりません。
農薬散布の年間計画を防除暦と言い、蓄積された経験から、より適切なタイミングで適材を散布できるように、各ワイナリー独自の防除暦があります。根本的には3大病気の「べと病・晩腐病・灰色カビ病」に対応する殺菌剤と、各シーズンの害虫に対応する殺虫剤を組み合わせてスケジュールを組みます。

ヴィラデストだと、萌芽シーズンから始まり、収穫3週間前迄の期間で9回の防除暦を組んでいます。今年は特にタイミングがうまくハマって病気の広がりを最小限に抑えられたため、良い収穫時期を迎えることができました。

工場準備「メンテナンスも大事な仕事」

イタリア製のプレス機。こちらの中で各ブドウに合ったプログラムでバルーン式にて圧搾が行われます。

ワイン用ブドウの収穫はタイミングがきたら一気に収穫して、一気に仕込みを行います。そのブドウ達、仕込んだワイン達を受けいれる場所や作業スペースの確保を行います。使う機材のメンテナンスや洗浄も丁寧に用意しておきます。ヴィラデストでは、大きなステンレスタンク4000ℓが2つ、2000ℓが4つ程あります。(小さなタンクはもっと多くあります)これらをどう使って仕込みを進行していくかもスケジュールが必要となります。

今年は慌ただしくてとにかくタンクに樽にとひたすら洗いまくり、工場の隅まで床を綺麗に清掃することしかできませんでしたが、マシンの扱いやメンテナンスも来年以降に少しづつ学ばせてもらう予定です。コンプライアンスの関係上、工場内の写真はお見せできませんが、ワイン醸造用のマシンも用途毎に沢山あって、とんでもなくお金がかかってます。

収穫「待ちに待った収穫!」

ロゼ用に早摘みしたピノノワールの房です。小ぶりで顆粒も小さめで可愛いです!

いよいよ一年間の畑仕事の集大成として収穫を迎えました。
ヴィラデストワイナリー周りと、八重原地区、御堂地区の合わせて12haの畑のブドウを順番に収穫していきます。最初は植樹して4年目で、初収穫を迎えた御堂地区の畑の収穫から始まり、ロゼ用のピノノワール、ソーヴィニヨンブラン迄収穫を終えたところです。今現在(10月1日)で15%程収穫を終えたという状況です。

収穫日が後に伸びていくと仕込みのスケジュールがずれてしまうので、大雨でも収穫しています。まさにロゼ用のピノノワールは土砂降りの中で行われました。毎回毎回、先輩方が早送りに見えるくらい、スピードについていけていないのですが、収穫も同様です。

手さばきやハサミの入れる角度、病果の摘出まで一連の動作に無駄がないです。私は病果が汚くて気にしすぎてしまう性格もありますが、目の前のブドウに時間を掛けすぎて、後に控えるブドウに病果が広がったら本末転倒になってしまうので、スピードをより意識してやっています。
休日に手伝いにいったヴィンヤードの方が使っていた収穫ハサミを気に入って買いました。マイハサミ持参で頑張ってついていこうと思います!

新米ヴィニュロンのチャレンジは続く

ソーヴィニヨンブランの房は青々しくて、顆粒が多く、ぎゅっと詰まって重たいです!

この記事では萌芽から収穫までを記事にしてまいりました。新米ヴィニュロンの私ですが、今年のシーズンは作業に体を慣らすだけで一年があっという間に過ぎてしまったと感じております。この後は、温度の低下と共に落葉して、来年に向けて垣根の修正を行ったり、越冬の補助する為に幼木には藁巻きをしていきます。また、来季に使う結果母枝の剪定作業して、今シーズンを終えることになります。

もともとワインショップで販売員だった時にワイン資格の勉強でブドウ栽培の一通りの流れは把握しているつもりでしたが、いざ生で体感すると、本に載った内容は本当に世界基準の表面的な話でしかないと感じました。日本独自と言いますか、長野県の東御市独自と言いますか、その畑毎でも特徴がしっかりることがわかりました。

今回の一連の記事を通して、一人でも多くの皆さんにワイン用ブドウ栽培に興味を持っていただけたら嬉しいです。私は名実共に着実にレベルアップして、いつか皆さんに私のワインを飲んでいただける日を目標にこれからも、より畑姿のしっくりくるヴィニュロンになれるように精進していきます。

新米ヴュニュロンが語るぶどう栽培シリーズはこれにて完結となります。ありがとうございました!!

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