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モルドバワイン特集 Vol.1(執筆者紹介)

東欧ワイン

今回は、全3回に分けてモルドバワインを特集します。
まず初めに、モルドバ、ルーマニア特集を執筆して頂きました「遠藤エレナさん」を紹介いたします。

モルドバ、ルーマニア特集にあたり、おそらくモルドバのワイン事情については日本で一番詳しいであろう、モルドバ出身の遠藤エレナさんに執筆を依頼しました。
遠藤エレナさんは2018年に遠藤利三郎さんとご結婚され、紅茶専門苫「マルツィショール」を運営しています。遠藤利三郎さんはワインバー「遠藤利三郎商店」のオーナーであり、ご夫婦でワイン業界で大活躍中です。今回、アペロ第2号発刊にあたり、遠藤エレナさんに取材を申し込んだところ、快くお引き受けいただきました。以下、エレナさんへの取材を元にモルドバワインと料理についてまとめました。

目次
遠藤エレナさんインタビュー
  ◎マルツィショール
  ◎来日のきっかけ
  ◎多彩なモルドバ料理
  ◎生活に密着したワイン
  ◎温暖で乾いた気候で育まれたモルドバの葡萄
  ◎モルドバワインのこれから
遠藤エレナ・プロフィール

モルドバ・ルーマニア特集を執筆
遠藤エレナさんインタビュー

◎マルツィショール


モルドバでは春の訪れを祝い、3月1日に紅白の手作りの小さなお守を胸に付けます。
また少し大きなものを家に飾ることもあり、このような風習はルーマニアやブルガリア、北マケドニアでも見ることができます。このお店はそのお守りである「マルツィショール」の名前を取り、2018年4月にオープンしました。紅茶はイギリスより早く中国からロシアヘ伝わりました。その紅茶の文化はロシア帝国時代の貴族を通じてモルドバへ伝わり、現在でも紅茶はモルドバ人の生活の一部となっています。また、昔から修道院で作られる様々なハーブ(カモミール、リンデン、ローズヒップ等) が大事にされていて、ハーブティーもたくさん飲まれています。紅茶もワインと同じ農産物。テロワールも非常に重要な要素で、香りも豊かでとても奥深い飲み物です。遠藤利三郎さんの所有するワイン、食文化の書藉、またエレナさんの所有する紅茶の書籍を様々な方に読んでもらいたくて、このお店をブックカフェのスタイルとしてオープンし、店内には約1000冊のワインを中心とする食文化の本が並んでいます。

◎来日のきっかけ


モルドバでは日本のアニメが放映されていて、日本語の発音の綺麗さに惹かれ日本語を勉強し始めました。その後、日本の文部科学省の奨学金プログラムの試験に合格し奨学金を得て2011年に来日しました。1年目は東京外国語大学で留学生向けのプログラムで日本語や日本の歴史・政治経済を勉強し、翌年一橋大学法学部に入学しました。留学生としてモルドバの文化を紹介する際に、身近な文化であるワインもしばしば登場します。大使館での仕事や様々な異文化交流のイベント、通訳を通じてワインに触れることが多くなり、ワインを勉強するきっかけとなりました。

◎多彩なモルドバ料理


モルドバは日本と同じように四季がはっきりしていて、その季節ごとの食材を楽しむ習慣があります。春から秋にかけて市場には新鮮な野菜が並び、秋には保存食用にピクルスを仕込みます。ビネガーに潰けたものではなく、野菜を乳酸発酵させたものが多く、日本のぬか漬けのイメージです。キャベツを丸ごと漬け込んだり、その他トマト、キュウリ、スイカなども使います。
スイカはサッカーボール大で丸ごと乳酸発酵させ、スイカはピクルスの素材としてとても人気があります。肉は鶏、牛、カモ、うさぎ、豚、羊など様々で、モルドバは海に面していないので、淡水魚の鯉や鯰をよく食べます。田舎の方では菜園を持っている人が多く、都会に住む親戚を訪れる時には自家製のワイン、野菜、チーズ、鶏を丸ごと持ってくることもあります。

サルマーレ Sarmale

・ひき肉と米の萄萄の葉包み
・パプリカに米を詰めたもの

上写真右の二つをトマト、ハープと共に鉄鍋で煮込んだモルドバではポピュラーな料理です。これにサワークリームをのせます。
サルマーレはそのまま食べても美味しいのですが、サワークリームをたっぷり付けるのがモルドバ風。モルドバ人はサワークリームを日本人でいうお醤油的な感覚で使います。葡萄の葉とチーズが爽やかなイメージなので、モルドバのすっきりとしたリースリングやシャルドネが自然に合います。モルドバではメルローなど果実が中心の軽めな赤ワインも好んで飲まれているので、こちらと合わせても十分楽しめると思います。

◎生活に密着したワイン


ワインは生活に密着した飲み物で、多くの人が自家製のワインを造っています。
自家農園の葡萄を使う場合もあれば、収穫の時期に市場へ行けばワイン用の葡萄を買うこともできます。発酵にはあえて酵母を加えることもなく、葡萄の皮や空気中に漂っている野生酵母で仕込みます。その方が美味しいワインができますし、発酵に失敗することもほとんどありません。免許がないと売ることは禁止されていますが、1年も経たないうちに飲みきってしまいますのでその必要はありませんね(笑)。

◎温暖で乾いた気候で育まれたモルドバの葡萄


モルドバは気候が穏やかで夏に雨が少ないのが特徴です。暖かいので葡萄がよく熟し、乾燥し風通しも良いので、家庭菜園で栽培されている葡萄でもほとんど農薬を使う必要がありません。日本ではモルドバは東ヨーロッパに位置し少し寒い気候であると思われがちですが、黒海のおかげで同じ緯度に位置するブルゴーニュよりも暖かい印象です。私たちにとってモルドバは南東ヨーロッパにある農作物も育ちやすい温暖な国です。

◎モルドバワインのこれから


第二次大戦後、ソ連向けの葡萄とワインを造ってきた歴史があり、モルドバはロシア向けに多くのワインを輸出していました。しかし2006年と2013年にロシアがモルドバワインの禁輸措置をとると、メーカーはEU向けの高品質なワインを造ることに舵を切りました。海外でワイン造りの勉強をし、おじいちゃんや父の畑の葡萄でワイン造りをする若者を中心とした中小のワイナリーも増えてきました。そのような経緯で、最近までモルドバワインはロシアの人以外にはあまり知られていませんでしたが、これから日本の皆さんにモルドバワインを知ってもらえるように頑張りたいと思っています。

遠藤エレナ・プロフィール


モルドバ共和国出身、2011年に来日。
一橋大学法学部、同法学研究科修士課程卒業。
在日モルドバ共和国大使館の設立時(2016年)から1年間勤務。現在も大使館の多くのイベントでモデレーターをこなすなど活躍。

モルドバ主要ワイナリーと信頼関係をもち、都内ワインスクールにてモルドバワインセミナーの講師を務めるなど、モルドバワインをメインとするイベント・ワイン会を多数開催。母国のモルドバの文化、料理、ワインの普及活動に積極的に取り組む。また、日本語の他6ヶ国語に堪能で、国際交流でも活躍。修士論文のテーマ:「ワインに見る地理的表示の保護に関するフランス、モルドバ、日本の比較法文化論的検討」。2018年以降の日本ソムリエ協会教本におけるモルドバの執筆を担当。
ティーサロン
マルツィショール・利三郎文暉の店主。

マルツィショール
東京都墨田区押上3丁目28-2 2
TEL 070-3129-0020

次回、モルドバワイン特集 Vol.2(ワインの歴史・現在、ワイン法)に続く

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