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ワインをうっかりこぼした! 染み抜きの対処法を教えます

トピックス

 ホームパーティーなどでワインを飲みながら楽しい時間を過ごしていると、うっかりワイングラスを倒して、気がついたら胸元にワインの染みがついていたこと、ありませんか? そんな時、何を使うとよいのでしょうか。ワインの染み抜き方法を教えます。

【ワインをこぼして慌てたことはありませんか?】
 お気に入りの服を着て、すっかりリラックスモードでワイングラスを傾けていたら、隣の人とちょっと肘がぶつかって、ワインをこぼしてしまった……。夢中でしゃべっているうちにいつの間にか赤ワインをこぼしたらしく、白いシャツにくっきり染みがついていた……。
 ふと気づいた時、あせりますよね。でも、染み抜きの方法がわかっていたら、大丈夫。ワイン愛飲家の常識として、染み抜きについてしっかり知識を学んでおきましょう。
 普通ワインの染みといわれるのは「赤ワインの染み」であることがほとんどで、「タンニン系の汚れ」に分類されています。

 タンニン系の汚れには、紅茶やビール、緑茶などの汚れも含まれていますが、クリーニングのプロに言わせると、特に厄介なのは、「赤ワインの染み」だそうです。

 赤ワインにはポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれており、赤色色素として衣類などに付着すると、濃い染みが残ってしまいます。白ワインの場合は、アントシアニンやタンニンが多く含まれる果皮と種子を除いてから醸造されているので、染みが目立たず、通常の洗濯方法で落とすことができます。

【まずは応急処置から】

 服にこぼしても、すぐに流水で流すことができれば、それだけで落とせます。乾く前であれば、簡単に落とせるのです。

 流水を使うのが難しい時には、まず、乾いたタオルやティッシュで染みの水分を吸い取り、次に、タオルに水を含ませて染みの部分に押し当てます。染みの濃度をできるだけ薄めることがコツ。ここで染みが残っても、あとで染み抜きをする時にものすごく楽になります。

 炭酸水を使うのもよいでしょう。炭酸水に含まれる二酸化炭素には汚れを分離させる性質があるので、染みの部分に炭酸水をたらし、きれいなタオルでたたいてみましょう。その際、無糖の炭酸水を使ってください。

 その場ですぐに染みを目立たなくしたい場合は、ワイン専用の染み取り剤をおすすめします。通販で入手できるものを挙げておきましょう。

 赤ワインボトルのデザインが特徴的な「ステインリムーバー シャトースピル」は、スプレータイプ(アメリカ製)。

[染み落としスプレー] ESR ステインリムーバー (赤ワイン染み用) 「シャトースピル」 120ml
ブランド: アメリカンディールスコーポレーション


ワインシミ取り剤 ウップス 100ml

自然由来の原料を使っている「ウップス」も同じくスプレータイプ(オーストラリア製)。


 携帯するのに便利な「ドクターベックマン ステインペン」(ドイツ製)

 「ステインペン」は、液体修正ペンのような形状で、先端を押し付けると液剤がしみ出てきます。10年ほど前、あるインポーターさんの比較試飲会に参加した時、お土産にいただいてから、私はずっと愛用しています。即効性では、スプレータイプにかないませんが、あとで洗濯する時にすぐれた効果を実感できます。


 ところで、「赤ワインの染みは白ワインで落とせる」という話を聞いたことはありませんか? 白ワインに含まれるクエン酸が、赤ワインのポリフェノールに作用して分解するイメージからきたのでしょう。実際には、赤ワインの染みの部分に白ワインをかけて放置したり、ぬるま湯でもみ洗いしたりすると、色はやや薄くなるようですが、染みが除去できたと言えるほどではありません。

 白ワインにも、少ないとはいえタンニンなどのポリフェノールが含まれていますし、香り成分も含まれています。これは、あまりおすすめできる応急処置ではなさそうです。

【時間がたってからの染み抜きは?】

 では、ある程度時間がたってから、赤ワインの染みを落とすのにおすすめの方法をご紹介していきましょう。

1)まずは、台所用洗剤でトントン

 染みの部分に台所用洗剤をつけて、あて布をしてから衣類を裏返し、歯ブラシなどで軽くトントンたたきます。染みがある程度薄くなってきたら、40~45℃のぬるま湯で洗います。

 家庭のキッチンにある台所用洗剤(弱アルカリ性洗剤)は油分を素早く取り除く力があり、その効力は染み抜きの時にも発揮されます。台所用洗剤には洗濯用洗剤に含まれる蛍光剤が入っていないので、染みに反応して不自然な色落ちをしないというメリットもあります。

 これで染みが取れなければ、次の段階2)に進みましょう。

2)セスキ炭酸ソーダをふりかけ、さらに酸素系漂白剤を加える

 セスキ炭酸ソーダは、重曹と炭酸ナトリウムで構成されたアルカリ剤。石油系の合成洗剤に比べると環境負荷が低いので、最近は、ナチュラルクリーニングの素材として人気が出ています。通販はもちろん、百円ショップでも入手できますし、水に溶かしてスプレー洗剤のように使えるので重宝します。

 染みの部分にセスキ炭酸ソーダ(アルカリ)をふりかけ、さらに酸素系漂白剤を加え、熱湯をゆっくりかけて10分ほど放置しましょう。最後に、アルカリが残ったままだと衣類を傷めてしまうので、クエン酸水で中和します。染みが取れたら、洗濯機で洗うとよいでしょう。

3)酸素系漂白剤を単体で使う

 洗剤を扱うメーカーの多くが、赤ワインの染みをしっかり落とす方法として、酸素系漂白剤の使用を勧めています。

 酸素系漂白剤として市場に出ている製品の主成分は、過炭酸ナトリウム。アルカリに酸化力が付加された成分であり、環境にも優しいことで様々な用途で使用されています。

 応急処置のところで、ワイン専用の染み取り剤として「ドクターベックマン ステインペン」をご紹介しましたが、同じメーカーから「ドクターベックマン ステインデビルス」という、ホームサイズの赤ワインの染み専用洗剤が登場しています。この主成分も、過炭酸ナトリウムです。

ドクターベックマン 50g

赤ワインをはじめコーヒー・果汁・紅茶・去年のシミも落とすという凄腕のシミとり剤。

 では、具体的に染みの落とし方を説明しましょう。

 まず、赤ワインが染みになって時間があまり経過していない場合です。染みの部分に酸素系漂白剤をかけ、40~50℃の湯をゆっくりと注ぎ、10分ほど放置します。過炭酸ナトリウムが湯と化学反応を起こし、汚れをはがすように落としていきます。

 一方、数日経過している場合は、アントシアニンが酸化して簡単には落とせない状態になっています。中性洗剤で数回すすぎ洗いをしてから、湯に漂白剤を入れてつけおきします。衣類の素材によっては傷んでしまうこともあるので、つけおきするのは心配という方は、タオルを漂白剤入りの湯に浸して軽く絞り、染みの部分になじませていってもよいでしょう。特に、ウールやシルク、動物性繊維の衣類は要注意です。

 最後に、赤ワインの染みを落とす際の注意点を簡単にまとめておきます。

①衣類についている洗濯表示を必ず確認する。目立たない部分でテストしてから、本格的な染み抜きをすることをおすすめします。

②生地が傷むので、無理に強くこすったり、高温過ぎる熱湯を使ったりしない。

③なるべく当て布をする。

④洗剤などを湯や水で薄めた場合、残った液体を放置しない。

⑤主成分が「次亜塩素酸塩」の漂白剤に他の漂白剤を絶対混ぜない。

【ワインを飲んで楽しく過ごすために】  コンパクトな染み抜き剤を常にバッグやカバンにしのばせておくと、なんだか安心ですね。もちろん、使わないですむ方がいいに決まっていますが、ワインを飲んで楽しくなってしまうと、ついつい……。万が一のことに備えてパーティーにのぞめば、いま以上に、思う存分楽しめるのではないでしょうか。 


ライター 永峰 好美

新聞記者出身のライター/シニアワインエキスパート。80年代後半、取材で訪れたパリの「トゥール・ジャルダン」で、フランス人招待主が分厚いワインリストを手にソムリエと楽しそうに会話して選んだワインがとてつもなく美味しかったことが、ワインにはまるきっかけに。2020年末までギリシャ大使の夫に伴い、アテネ在住。宴席のワイン・日本酒セレクションの担当も。ワインを通してつながるご縁を大切にしていきたいです。

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