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Vol.10 ドイツ、オーストリア、ルクセンブルク

ソムリエ試験対策

伝統的なワイン生産国であるドイツは、旧西ドイツの11生産地域がフランス寄りの南西部に、旧東ドイツの2生産地域がチェコ・ポーランド寄りの東部にあり、伝統的に川沿いの斜面を利用してブドウ栽培が行われています。
隣国オーストリアはドイツ語圏でありブドウ品種もドイツと共通しているため、似ているワインを造っているイメージがありますが、味わいは異なります。
そして、日本では馴染みが薄いですが2000年以上もワイン造りが行われ、政府所有のブドウ畑があるなど国を挙げてワイン生産に取り組むルクセンブルクもドイツ近隣のワイン生産国として重要です。

この回では、ドイツ、オーストリア、ルクセンブルクの歴史や気候風土、主なブドウ品種、ワイン法と国内各地の特徴について解説します。

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目次
1.ドイツ
2.オーストリア
3.ルクセンブルク

ドイツ

イギリスに次いで北に位置(北緯47~52度で樺太の緯度に相当)し、13のワイン生産地域に分かれているドイツは、近年温暖化が進みフランス系品種も毎年熟すようになってきました。しかし、優れた品質のワインは一般的に斜面にあるブドウ畑から産されており、ブドウの栽培面積は、世界第18位です。寒冷地らしく白品種の割合が高く、栽培地の66.5%は白ワイン用品種を、33.5%は赤ワイン用品種を占めています。

かつてはワインを単独で飲むスタイルが主流で、甘口白ワインの輸出も好調でしたが、近年は食事に合わせて飲むスタイルが一般的となり、辛口や中辛口の需要が増え全生産量の2/3を超えるまでになりました。

2000年頃から一部でブドウ畑の格付けが行われるなど、テロワールの表現を意識したワイン造りが盛んとなり、リースリングやブルグンダー系の品種(ピノ・ノワール、ピノ・ブラン、ピノ・グリ)、ソーヴィニヨン・ブランなどでも高品質な辛口系ワインが増えています。また、世界的な健康志向の高まりを受け、ドイツワインならではの低アルコール濃度で繊細なスタイルが見直されつつあります。

ドイツワインの歴史


ドイツワインの歴史は紀元前5~4世紀に遡り、ライン川・モーゼル川周辺のケルト人貴族が地中海産のワインを輸入していたことが明らかになっています。4世紀末の西ローマ帝国時代、アウグスタ・トレヴェロールム(現トリーア)が最盛期を迎え、ノイマーゲンで発見されたワイン輸送船の石碑や、モーゼル中流域に50ヶ所あまり発掘された3~5世紀のブドウ圧搾所の遺跡、詩人アウソニウスが詩『モゼラ』に著したブドウ畑の描写などに、当時の様子を見ることができます。

5世紀に西ローマ帝国が滅亡しましたが、当時は教会と修道院がブドウ畑を所有しワイン造りに取り組んでいました。6~7世紀には、アイルランドとスコットランドからライン川を越えてやってきた宣教団によって、キリスト教布教と共にブドウ栽培が各地へ広がりました。その後、フランク王国カロリング朝の王で800年に西ローマ皇帝の称号を得たカール大帝が、適切なブドウ栽培と衛生的な醸造を各地の所領に指示し、教会や修道院へブドウ畑を寄進したことでワイン造りの普及に貢献しました。

1136年に設立されたシトー派のエーバーバッハ修道院が、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)を本拠地のブルゴーニュから、ラインガウへ持ち込んだという説があります。12世紀以降、各地で都市が成立し市場経済が発展するのに伴ってワイン商業も盛んとなりました。水の衛生状態が悪かった南部ではワインは毎日飲む必需品となった一方で、北部では地元で醸造されたビールが日常的に飲まれ、遠距離を運ばなければならないワインは高価な嗜好品として取引されました。

1430~1680年代は断続的な寒冷期による不作や飢饉が続き、相次ぐ戦乱によって国土が荒廃していくのに伴いブドウ栽培も衰退します。18世紀に入るとブドウ栽培の改善が各地で行われれ、1720年にフルダ修道院院長の所領だったヨハニスベルクでリースリングの苗木が大量に植樹されました。1753年と1760年に、エーバーバッハ修道院が所有するシュタインベルクで貴腐ブドウの収穫が行われ、ヨハニスベルクでは1775年から貴腐ワインの醸造が毎年試みられるようになりました。

1789年にフランス革命が起き、1802~1803年ライン川流域がフランスの支配下に入ると、教会や修道院が所有していたブドウ畑を含む地所は接収され競売にかけられたり、領邦君主の管理下に置かれたりしました。その後、1867年にラインガウ、1868年にはモーゼルでブドウ畑の格付けが行われ、鉄道が敷設された19世紀後半にワイン市場が一気に拡大しました。

しかし、第一次世界大戦後のハイパーインフレや世界恐慌(1929年)に続き、ナチス政権にユダヤ人がワイン業界から追放され、国外への販路を失ったワイン産業は苦難に陥ります。その後、第二次世界大戦後の1960~1970年代には、高度成長期の甘口ワインのブームでブドウ畑が大幅に増えて好景気となりながら、1985年のオーストリアに端を発するジエチレングリコール(不凍液)混入事件によよって甘口ワインへの不信感が蔓延し、生産者は国内向けには辛口ワインに活路を求め、甘口ワインは輸出に力を入れました。1990年代末頃から、各地で若手醸造化団体が結成され、ワインの品質向上とアピールに努めており、現在のドイツワイン業界は活気に満ち溢れているといえるでしょう。

ドイツの気候風土


近年のドイツは温暖化が進み、1989年以降ほぼ毎年ブドウが熟すようになりました。そして温暖化の為、遅霜、豪雨、雹などの被害も増えております。年間平均気温は9~10度ですが、夏場には40度を超すことも珍しくないです。日照量は1,300時間から1,800時間と比較的短いです。降雨量は年間平均500~1,000mmと生産地によって開きがあります。雨が比較的多いため、水はけがよく日照効率が高い斜面がブドウ栽培には有利です。以前まではより暖かい場所での栽培が人気でしたが、近年は標高が高い畑などむしろ冷涼な栽培条件が注目されています。

ドイツの主なブドウ品種


1980年代にはわずか10%ほどだった赤ワイン用品種の栽培面積が、世界的赤ワインブームを背景に1995年には20%を超え、2005年には36.8%とピークになりましたが、その後は伸び悩み、2018年には33.5%とやや減少しています。一方で白ワイン用品種の割合が増加し、リースリングをはじめヴァイスブルグンダーやグラウブルグンダー、シャルドネ、ソーヴィニョン・ブランといった国際的な辛口白品種が増ええ、70年代~80年代初頭にもてはやされたミュラー・トゥルガウ、ケルナー、バッフス、ショイレーベなどの交配品種は減少しています。

また、2000年代に入り、有機農法に取り組む生産者が増え、赤のレゲントなど黴菌耐性品種(Pilzwiderstandsfähige Rebsortenピルツヴィダーシュタンズフェーイゲ・レープソルテン:略称PIWI)が注目を集めるようになりました。

ドイツで栽培されている主なブドウ白品種は、以下の通りです。

白ブドウ
・Rieslingリースリング=Rheinrieslingラインリースリング
・Müller-thurgauミュラー・トゥルガウ=Rivanerリヴァーナー×Madeleine Royaleマドレーヌ・ロイアル
・Grauburgunderグラウ・ブルグンダー= Pinot Grisピノ・グリ
・Weißburgunderヴァイスブルグンダー= Pinot Blancピノ・ブラン
・Silvanerシルヴァーナー
・Kernerケルナー= Trollingerトロリンガー×Rieslingリースリング
・Bacchusバッカス=[ Silvanerシルヴァーナー×Rieslingリースリング]×Müller-thurgauミュラー・トゥルガウ
・Scheurebeショイレーベ= Rieslingリースリング×Bukettraubeブケットトラウベ

赤ブドウ
・Spätburgunderシュペートブルグンダー= Pinot Noirピノ・ノワール
・Dornfelderドルンフェルダー= Helfensteinerヘルフェンシュタイナー×Heroldrebeヘロルドレーベ
・Portugieserポルトギーザ―
・Trollingerトロリンガー= Vernatschフェルナッチ= Schiavaスキアーヴァ
・Lembergerレンベルガー= Blaufränkischブラウフレンキッシュ
・Regentレゲント=[ Silvanerシルヴァーナー×Müller-thurgauミュラー・トゥルガウ]×Chambourcinシャンボールサン

ドイツのワイン法と品質分類


1871年にドイツが最初に統一され、ドイツで最初にワイン法が制定されたのは1892年です。アルコール度数を上げる目的で砂糖水を果汁に添加するのを認める一方で、添加量の上限を25%までと定め消費者を詐欺や偽造から保護する目的で制定されました。そして、1901年の改正で「ナトゥアヴァイン(Naturwein)」が定義され、自然なブドウ果汁のみから醸造したワインを保護することとなりました。

その後幾度かの改正を経て、1971年に施行されたワイン法では、肩書の基準が数値化され、収穫時の果汁糖度に応じて格が上がるという格付けシステムに変更されます。この背景には、第二次世界大戦後の経済復興に伴う甘口ワインブームがあり、どんな栽培条件のブドウ畑でも適した品種を栽培すれば肩書がつき、高く売れることを支援するものでした。その一方で、価格競争にさらされたため、20世紀末にかけて過剰生産による価格低下と小規模生産者の経営難、急斜面のブドウ畑の耕作放棄を招きました。しかし、この状況が異業種の人材や資金力に乏しい若手が銘醸畑を入手する機会を提供することにもなりました。

その後も小規模の改正が何度か行われ、2009年8月にドイツを含むEU全域で地理的呼称制度の導入が施行され、ドイツでも地理的呼称による格付けが導入されましたが、ただしその表記は任意とされ、補糖の有無と果汁糖度による肩書きは伝統的表記として維持されました。また、ワイン法にかかわらず、独自に地理的呼称範囲による品質区分を行うVDP. Die Prädikatsweingüter(プレディカーツヴァイン醸造所連盟)などの生産者団体もあります。

〈ドイツワインの地理的構成〉


ドイツには、13の「特定ワイン生産地域(Bestimmtes Anbaugebiet)」があり、QualitätsweinとPrädikatsweinは特定ワイン生産地域内でのみ生産することが出来ます。各特定ワイン生産地域は1地区から9地区の生産地区(Bereichベライヒ)に分かれ、41の生産地区(ベライヒ)に分けることができます。ベライヒと呼ばれる生産地区は更に、集合畑(Großlageグロスラーゲ)に分かれ、集合畑は複数の単一畑(Einzellageアインツェルラーゲ)に分類できます。特定ワイン生産地域の他、26のLandweinラントヴァインがあります。ラントヴァインはベライヒとは異なり、格の低い日常消費用ワインの産地ですが、ドイツでは生産の約96%がQualitätsweinかPrädikatsweinのため、目にすることは少ないです。

地理的呼称制度の導入とともに、各生産地域の州の担当部局が管理するブドウ畑登記簿(Weinbergsrolle)に登録することで、伝統的なブドウ畑(GewannまたはKatasterlage)の名前をラベルに表記できるようになりました。ラベルの表記は「村名・単一畑名・伝統的畑名」もしくは「村名・伝統的畑名」となり、ブドウ畑の区画の個性をアピールできるようになっています。

教本で指定地域についてまとめてありますのでしっかりチェックしておきましょう。

《教本参照》

〈品質分類〉


ドイツワインの品質分類は、EUによるワイン市場改革に伴う改正によって地理的表示のないワインと地理的表示付きワインとに大別されます。

A.地理的表示のないワイン(EUワイン/地理的表示のないドイツワイン(Deutscher Wein ohne Herkunftsbezeichnung))
○ベースワイン:加工用ワイン
○品種もしくは生産年表記のないワイン:従来のTafelweinターフェルヴァインに相当。
○品種もしくは生産年表記があるワイン:従来の品種もしくは生産年表記があるTafelweinターフェルヴァインに相当。

B.地理的表示付きワイン(Wein mit geschützter Herkunftsangabe)
○地理的表示保護ワイン(略称g.g.A/Wein mit geschützter geographischer Angabe)=Landweinラントヴァイン
-ラントヴァイン(指定地域)で栽培収穫されたブドウを85%以上使用。
-一部を除きトロッケン(辛口)またはハルプトロッケン(中辛口)のみ。
-亜硫酸無添加醸造など公的審査に通らないワインも該当する。

○原産地呼称保護ワイン(略称g.U/Wein mit geschützter Ursprungsbezeichung)
・Qualitätsweinクヴァリテーツヴァイン:
-13の特定ワイン生産地域のいずれか一つの地域内で栽培収穫されたブドウを100%使用。-ブドウが収穫された生産地域内で醸造。
-各地域で認可された品種を用いる。
-各生産地域で定められた値を上回る糖度の果汁から醸造。
-補糖は認められている。ワイン生産地帯A(バーデン以外):3.0%vol=24g/ℓ、ワイン生産地帯B:2.0%vol=16g/ℓ。
-最低アルコール濃度は7%。
-公的機関による品質検査を受け、公的検査番号(A.P.Nr.)をラベルに表示。下2桁はワインの検査年が表記される。

・Prädikatsweinプレディカーツヴァイン:
-補糖ができないこと以外の生産条件はクヴァリテーツヴァインの規定に準じる。
-収穫時の果汁糖度(エクスレ度)により肩書(6段階、以下参照)と、最低アルコール度数が変わる。最低アルコール濃度は7%だが、ベーレンアウスレーゼ、アイスヴァイン、トロッケンベーレンアウスレーゼは5.5%。

・Kabinettカビネット:果汁糖度70~82°Oeを超えている。熟したブドウ。
・Spätleseシュペートレーゼ:果汁糖度76~90°Oeを超えている。完熟したブドウ。
・Ausleseアウスレーゼ:果汁糖度83~100°Oeを超えている。完熟し、一部貴腐により凝縮したブドウ。
・Beerenausleseベーレン・アウスレーゼ:果汁糖度110~128°Oeを超えている。過熟か貴腐ブドウ。
・Eisweinアイスヴァイン:果汁糖度110~128°Oeを超えている。樹氷で氷点下7℃以下の寒気で凍結したブドウ。凍結した状態で圧搾し醸造。
・Trockenbeerenausleseトロッケンベーレンアウスレーゼ:果汁糖度150~154°Oeを超えている。干しブドウ状にしぼんだ貴腐ブドウ。

〈Oechsleエクスレ(Öchsle)〉


1830年代にドイツ人技師フェルディナンド・エクスレが提唱した比重計によるブドウ果汁の糖度測定法で、20℃の1ℓの水と果汁の重さの差がエクスレ度となり、潜在アルコール濃度を求めることができます。ドイツ以外では、スイス、ルクセンブルクで用いられています。
1971年のドイツワイン法の肩書きの基準でもあり、収穫時期の判断に重要な意味を持っていましたが、今日では、果汁糖度のみではなく、種の色、果肉の崩れ具合、アロマの乗り具合などで判断されるブドウの生理的成熟が重視されます。

〈Sußresereveズュースレゼルヴェ〉


収穫後の果汁の一部を未発酵のまま保存したもので、ワインの甘味調整やバランスをとるため、仕上げ時に25%以内まで加えることができます。
原則として同じ生産地域の未発酵のブドウ果汁を使用し、保存方法は、無菌濾過・無菌貯蔵、炭酸ガスによる高圧貯蔵、瞬間加熱殺菌貯蔵、高濃度亜硫酸貯蔵、0℃貯蔵などです。
クヴァリテーツヴァインやプレディカーツヴァインにも添加できますが、高品質なワインはズュースレゼルヴェを使用せず、発酵の途中に冷却し、酵母を死滅させて発酵を中断して甘味を残します。

〈スパークリングワイン〉


○Perlweinペールヴァイン:弱発泡性ワインを指し、20℃で1~2.5気圧、最低アルコール度数7%。炭酸は一次発酵に由来する場合と、スティルワインに添加したものがある。

○Schaumweinシャウムヴァイン、Sektゼクト:シャウムヴァインは広義の意味ではスパークリングワインの総称であり、品質によって以下に区分される。
 ・Schaumweinシャウムヴァイン:20℃で3気圧以上、アルコール度数9.5%以上。白・赤・生産国など異なるワインをブレンドしたベースワインを使用が許可されている。
 ・Sektゼクト/Qualitätsschaumweinクヴァリテーツシャウムヴァイン:20℃で3.5気圧以上、アルコール度数10%以上。ベースワインの基準はシャウムヴァインと同様。
  ・Deutscher Sektドイッチャー・ゼクト:ドイツ国内産で、ラントヴァインの基準をクリアしたベースワインをしよう。
 ・Sekt b.A./ Qualitätsschaumwein b.A.:13の特定生産地域で生産されたクヴァリテーツヴァインから生産。ゼクト b.A.またはクヴァリテーツシャウムヴァイン b.A.には、Winzersektヴィンツァーゼクト、Crémantクレマンの2つのカテゴリーがある。
 ・Pét-Natペット・ナット:メトード・アンセストラルで醸造するスパークリングでアルコール濃度は完全発酵しても10.5~11.5%。ビオワインの生産者により造られ、3.5気圧を超えるものは、シャウムヴァインに分類される。

〈ロゼワイン〉


・Roséweinロゼワイン/Rosé:赤ワイン用品種のみから醸造されている。
・Weißherbstヴァイスヘルプスト:単一の赤ワイン用品種から醸造された地理的表示のされたロゼワインで、クヴァリテーツヴァイン以上の品質。5%まで同一品種の赤ワインまたはマストを添加して色調を整えることが可能。白ワインのような色調のものもある。
 ・Blanc de Noirsブラン・ド・ノワール:赤ワイン用品種のブドウを白ワインのように発酵前に圧搾して得た果汁から醸造されている。外見的には白ワインで、Weißgekeltertヴァイスゲケルテルトとも呼ばれる。
 Rotlingロートリング:混醸法で、赤ワイン用と白ワイン用のブドウをそれぞれ破砕して混ぜ、一緒に圧搾醸造されている。

〈ドイツのブドウ畑の格付け〉


ドイツのブドウ畑の格付けは、VDP.Die Prädikatsweingüterディー・プレディカーツヴァインギューター(プレディカーツヴァイン醸造所連盟:通称VDP、2000年から名乗っている)が推進しています。加盟生産者は厳しい自主規制に基づいて検査され、会員数の増減があったものの近年はおおむね200で安定しています。定評があり知名度の高い生産者が多く、規模は大きくないがワイン業界への影響力は多大です。

VDPの品質基準は次の4段階に分かれています。

VDP.Gutsweinグーツヴァインエントリーレベルのエステートワイン。生産地域の典型的な品種を80%以上用い、収穫量は75hl/ha以下。
VDP.Ortsweinオルツヴァイン村名ワインに相当。生産地域の典型的な品種を80%以上用い、収穫量は75hl/ha以下。
VDP.Erste Lageエアステ・ラーゲプルミエ・クリュ相当のすぐれたブドウ畑。産地を代表する品種で交配品種や国際品種も含む。手摘みで収穫量は60hl/ha以下。
VDP.Große Lageグローセ・ラーゲグラン・クリュに相当する最上の区画。それぞれの生産地域の伝統的な規定品種を上用いる。手摘みで収穫量は50hl/ha以下。

教本にあるドイツワイン用語集も合わせてチェックが必要です。

《教本参照》

ドイツワインの各生産地域とその特徴


前述したように、ドイツ国内には13の生産地域があります。それぞれの特徴を、教本を参照しながらチェックし、覚えておきましょう。

Ahrアール ベライヒ:1 グロスラーゲ:1 アインツェルラーゲ:40ドイツ西部の最北に位置し、ライン川支流のアール川沿いの産地。 栽培面積が4番目に小さい。 赤ワイン用品種の栽培比率が最も高く80%を超える(その内約65%がシュペートブルグンダー)。 1980年代までは色が薄くほの甘い観光客向け赤ワインが盛んだったが、高品質な赤の産地へ変化。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、赤:シュペートブルグンダー
Moselモーゼル ベライヒ:6 グロスラーゲ:19 アインツェルラーゲ:478モーゼル川の支流ザール川とルーヴァー川流域の産地で、フランスリュック産地とアイフェル山地に挟まれた渓谷にある。 川の流れに沿った渓谷の斜面の約4割が斜度30度を超える急斜面の畑(=Steillageシュタイルラーゲ)で、下流の一部は急斜面に石垣を築いてテラス状に畑を仕立てている(Terassenmoselテラッセンモーゼル)。 白ワイン用品種の栽培比率が高く90%強で、リースリングが約60%を占める。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、ミュラー・トゥルガウ、エルブリング、赤:シュペートブルグンダー、ドルンフェルダー。
Mittelrheinミッテルライン ベライヒ:2 グロスラーゲ:11 アインツェルラーゲ:102ビンゲンとボンの間のライン川流域に約110㎞にわたり、ドイツで2番目に小さい地域。ローレライの歌で知られるかつての船の難所もここにあり、ビンゲンからゴブレンツまでの景観はユネスコ世界文化遺産に登録されている。 フンスリュック山地によって冷気が遮られ、ライン川から豊かに水が得られるため冬は穏やか。 ブドウ畑の60%以上が斜度30度以上の急斜面で機械化が難しい。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、ミュラー・トゥルガウ、赤:シュペートブルグンダー。
Rheingauラインガウ ベライヒ:1 グロスラーゲ:10 アインツェルラーゲ:128北緯50度に位置し、大きく3つの地域に分かれる。白ワイン用ブドウの栽培比率が85%強(内78%はリースリング)、赤ワイン用は約15%(内約12%をシュペートブルグンダー)を占める。 1136年にシトー派のエーバーバッハ修道院が設立され、彼らがシュペートブルグンダーを持ち込んだと言われている。1775年ヨハニスベルクでシュペートレーゼが発見されたことになっているが、実際は18世紀前半から貴腐のついたブドウを選りすぐることで高品質なワイン ができることが知られていた。 紀元前1~3世紀のローマ時代からワイン造りが行われ、第二次世界大戦後もドイツワインを代表する銘醸地。 若手醸造家を育成するガイゼンハイム大学があり、近年のドイツワインの新たなムーヴメントを造り出している。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、赤:シュペートブルグンダー。
Naheナーエ ベライヒ:1 グロスラーゲ:6 アインツェルラーゲ:260ラインヘッセンとミッテルラインに挟まれ、ナーエ川河口ビンゲンからモンツィンゲンに至る60Kmの流域とその支流に広がる地域。 ローマ時代からブドウ栽培が行われ、8世紀以降は修道院によるブドウ栽培が盛んだった。1980年代までは様々な交配品種が栽培され、質より量のワイン造りがなされていたが、1990年代以降は伝統品種への回帰が進んでいる。現在はリースリングが栽培面積の約29%を占め、高品質なリースリングと赤白ブルグンダー系品種が産地のポテンシャルを示している。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、ミュラー・トゥルガウ、赤:ドルンフェルダー、シュペートブルグンダー。
Rheinhessenラインヘッセン ベライヒ:3 グロスラーゲ:23 アインツェルラーゲ:414ドイツ最大のワイン生産地で、西をフンスリュック山地、北はタウヌス山地によって雨風から守られている。 1402年にヴォルムスでリースリングが「Rüssling」として最初に言及されたという説がある。また、18世紀半ばからはヴォルムスの聖母教会(リープフラウエンキルヒェ)の周囲のブドウ畑から造られたワインが、リープフラウミルヒとして有名になった。 甘口ワインブーム時に化学合成肥料や農薬やトラクターを使った農業による土壌流出・健康被害を引き起こしたことから、早い時期に有機農法を採用する生産者が現れている。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、ミュラー・トゥルガウ、ジルヴァーナー、赤:ドルンフェルダー、シュペートブルグンダー。
Pfalzファルツ ベライヒ:2 グロスラーゲ:25 アインツェルラーゲ:325ラインヘッセンの南に位置し、国内で2番目に大きな生産地。西のハールト山地からライン川に向かって続く平野にあり、南端はフランスと国境を接し、一部のブドウ畑はフランス側にある。 畜産や穀物栽培と一緒にブドウ栽培をしている農家が多かった。また、かつては容量500mℓのDubbeglasと呼ばれる独特のコップで、村々のワイン祭りでワインが供された。 現在は若手醸造家が活躍する産地として名高く、高品質なブルグンダー系ワインで注目を集めるなど、品質向上に熱心な産地へと変貌している。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、ミュラー・トゥルガウ、グラウブルグンダー、赤:ドルンフェルダー、シュペートブルグンダー。
Hessische Bergstraßeヘシッシェ・ベルクシュトラーセ ベライヒ:2 グロスラーゲ:3 アインツェルラーゲ:23ドイツのトスカーナやリヴィエラとも称される風光明媚な風景で知られ、ドイツで最も栽培面積が小さい。ユネスコが認定する「ベルクシュトラーセ・オーデンヴァルト・ジオ自然公園」の一部となっている。 元々はワイン生産地域ベルクシュトラーセだったが、1971年のドイツワイン法でヘッセン州の北半分がヘシッシェ・ベルクシュトラーセとなった。国内で最も春の訪れが早く、かつ冬の訪れが遅いためブドウが長期間かけて成熟することから、リースリングの栽培に向いている。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、グラウブルグンダー、赤:シュペートブルグンダー。
Frankenフランケン ベライヒ:3 グロスラーゲ:22 アインツェルラーゲ:275唯一バイエルン州に属す国内で6番目に大きい産地で、大きく3つのベライヒに分けられる。 他の産地が甘口を量産していた80年代以前も辛口にこだわってきた。ドイツでは残糖9g /ℓ以下がtrockenだが、独自基準で4g /ℓ以下をtrockenとし、Fränkisch trockenと称するが、ドイツワイン法ではこの呼称をラベル表記することは認められていない。ずんぐりして平板なボックスボイテルと呼ばれる伝統的なボトルも知られている。 7世紀にアイルランドの宣教師がキリスト教信仰をもたらしてからブドウ栽培が始まった。ドイツにおけるジュルヴァーナーは、1659年にカステル村にオーストリアから苗木を取り寄せて植えたのが起源である。 主要ブドウ品種は、白:ミュラー・トゥルガウ、ジルヴァーナー、赤:ドミナ、シュペートブルグンダー。
Württembergヴュルテンベルク ベライヒ:6 グロスラーゲ:17 アインツェルラーゲ:213ネッカー川の上流から中流及びその支流沿いに広がり、ボーデン湖畔に飛び地もある産地で、国内で4番目に大きい。生産されるワインの約70%は手頃な価格のワインで、ほとんどが地元で消費される。 中世には主要なワイン産地のひとつとしてネッカー川経由で各地にワインを輸出しており、三十年戦争でブドウ畑が激減したものの次第に回復し現在に至る。 栽培面積の約20%を占めるトロリンガーは食用向きでも人気がある。 主要ブドウ品種は、白:リースリング、赤:トロリンガー、レンベルガー、シュヴァルツリースリング、シュペートブルグンダー。
Badenバーデン ベライヒ:9 グロスラーゲ:16 アインツェルラーゲ:332南北約300㎞に細長く伸び、国内で3番目に大きい産地。9つのべライヒに分かれている。 べライヒ・ボーデンゼーのライヒェナウ修道院で、8世紀のブドウの種が見つかっている。13世紀以降修道院によるブドウ栽培の記録が増えている。カイザーシュトゥール周辺の生産者は1980年代からブルゴーニュを手本にした。 面積が広範囲にわたるため、生産地域により気候風土の差が大きい。ヴォ―ジュ山脈南部とジュラ山地の間の低地から温かい風が流れ込むのが特徴である。 主要ブドウ品種は、白:ミュラー・トゥルガウ、グラウブルグンダー、赤:シュペートブルグンダー。
Saale-Unstrutザーレ=ウンストルート ベライヒ:3 グロスラーゲ:4 アインツェルラーゲ:37ドイツ最北の北緯51度に位置し、1990年の東西ドイツ統一によって新たに加わった産地。中世を通じて修道院の手でワイン造りが行われ16世紀に最盛期を迎えるも、19世紀に廉価なワインの流入やウドンコ病・ベト病・フィロキセラによる被害で一時衰退した。1990年以降は個人経営の醸造所が増えている。 主要ブドウ品種は、白:ミュラー・トゥルガウ、ヴァイスブルグンダー、赤:ドルンフェルダー、ポルトギーザ―。
Sachsenザクセン ベライヒ:2 グロスラーゲ:4 アインツェルラーゲ:19ドイツ最東でポーランド国境近くに位置し、国内で3番目に小さい産地。ザクセン州の州都ドレスデンと磁器で有名なマイセンを含む。 「ザクセンコイレ」と呼ばれるボーリングピンのような形をしたボトルと、交配品種ゴルトリースリングが特産物。エルベ渓谷の影響で北緯51度にしては温暖で、春の訪れは遅いものの秋は乾燥し暖かい。 主要ブドウ品種は、白:ミュラー・トゥルガウ、リースリング、ヴァイスブルグンダー、赤:シュペートブルグンダー。

ドイツの食文化とワイン


国土の大半が内陸にあるドイツの食文化は、基本が保存食です。ソーセージやハムの種類は豊富で地方毎に伝統のレシピや食べ方があり、ソーセージだけでも1500種類以上にのぼります。1990年代までは夕食は簡易に済ませる風習だったことから、食後の語らいとともにワイン単体でも飲みやすい甘口ワインが好まれていました。しかし近年は労働環境の変化に伴い夕食の立ち位置が変わり、食事と一緒にワインを楽しむ傾向が強くなっています。
料理の付け合わせもSauerkrautザウアークラウト(乳酸発酵したキャベツ)など酸味の効いた物が多く、酸味が持ち味のリースリングに共通する嗜好を見て取ることができます。ワイン産地の居酒屋には大抵地元産のハムとチーズの盛合わせWinzevervesperヴィンツァーヴェスパーがあり、「ヴィンツァー」は農家、「ヴェスパー」は夕食の意味です。

5つの地域の代表的な郷土料理は次のとおりです。

バイエルンWeißwurstヴァイスヴルスト(ボイルした白いソーセージ、午前中に食べる習慣がある)、Semmelknödelゼンメルクネーデル(硬くなったパンを刻み、牛乳、バター、卵、炒めた玉ねぎを混ぜ団子にして塩茹でする)、Eisbeinアイスバイン(北ドイツからポーランド発祥の豚すね肉の塩漬けを茹でたもの)
フランケンNürnberger Bratwurstニュルンベルガー・ブラートヴルスト(細く白っぽい色のソーセージ)、Blaue Zipfelブラウエ・ツィプフェル(豚挽肉、香辛料を羊腸に詰め、炭火焼やスープで煮込むこともあるフランケン産、辛口のミュラー・トゥルガうやジルヴァーナーによく合う)、Rauchbierラオホビア(燻した麦芽で醸造するビール、マイン川上流が産地)
シュヴァーベン地方Maultascheマウルタッシェ(ラビオリに似た料理)、Käsespätzleケーゼシュペッツレ(卵入りの太麺に、おろしたセミハード系チーズを溶かしからめ、フライドオニオンを散らす)
ヘッセン地方Frankfurter Würstchenフランクフルター・ヴュルスチェン(燻製したフランクフルトソーセージを沸騰させずに10分間茹でる)、Handkäse mit Musikハントケーゼ・ミット・ムジーク(ワインビネガーと玉ねぎとキャラウェイシードでマリネした乳酸で凝固させたチーズ)、Apfelweinアプフェルヴァイン(アップルワイン、アルコール度数5〜7%、あっさりして素朴な辛口)
ラインラント地方Sauerbratenザウアーブラーテン(酢漬け肉のロースト、ソースに干しブドウを用いるのが特徴)、Saumagenザウマーゲン(塩ゆでした豚の細切れ、ジャガイモ、ソーセージ用ペースト、スパイスなどを豚の胃袋に詰め、熱湯で火を通し、炙って供される、ファルツ出身のヘルムート・コール元首相の大好物だった、地元産リースリング(辛口〜中辛口)が合う)

オーストリア

農地総面積の20%超がオーガニックというヨーロッパ最高比率のオーガニック農業国であるオーストリアは、ブドウに関しても全体の13.6%がオーガニック栽培であり、サスティナブルの農法を含めると21%に達します。また、生産者1軒あたりのブドウ畑面積は3.2haと少なく、小規模な生産者が多いです。ドイツ語圏でありドイツと同じ品種も多いことからドイツワインと似ていると評されがちですが、白はよりボリューム感とメリハリ感があり、赤はよりタニックでしっかりとしたフルボディタイプのワインです。

熟成されたワインが好まれる他国と違い、オーストリアでは新酒が重宝され、オーストリアの新酒のことをホイリゲと呼びます。また、ホイリゲとはワイン生産者兼居酒屋の業態(ブッシェンジャンク)の意味もあります。この業態はオーストリア全土に非常に多く、ワインが生産段階から食と共にあって食生活の一部となっているのが大きな特徴です。

オーストリアワインの歴史


5千年から1万年前の温暖な間氷期に、ドナウ渓谷を通ってブドウがオーストリアに到達したと言われています。ローマ帝国滅亡に伴ってブドウ畑は荒廃した後、再興や停滞を経て、1150年頃にバイエルン公ハインリッヒ2世が居城をウィーンと定めたことから、ウィーンでのブドウ栽培が活発になりました。

15世紀から16世紀にオーストリアのブドウ栽培面積は現在の約3倍と最大になり、全土で栽培されるようになります。17世紀に宗教戦争やオスマン帝国による侵略、途方もない高税、ビール人気の高まりによってワイン生産は後退しました。しかし、18世紀にはワイン生産が再び奨励され、1784年にヨーゼフ2世が勅令を出し、国民が生産する食糧、ワイン、モスト、ジュースなど1年を通していつでも望む価格で販売・提供できる権利を与えたことによって、現在のブッシェンシャンク・ホイリゲ文化の開花を導きました。

2001年に産地ごとのワイン委員会が設立され、産地の特徴を明確化する動きが始まります。これが同年のDAC制定につながり、2003年のヴァインフィアテルDAC発足から現在の大きな流れとなっています。

オーストリアの気候風土


オーストリアは降水量が少ない大陸性気候で、ドイツに比べると温暖です。そのため味に厚みのあるワインが造られており、辛口が主体のため食事と共に楽しめるのが特徴です。

ブドウの発芽から落葉まで生育期間は約200日に及び、暑く天気のよい夏と、長く穏やかで夜は冷え込む秋が続きます。また、北からの冷たい風、東のハンガリーのパノニア平原からの乾燥した温かい風、南にある地中海からの湿度を含んだ温かい風、西のアルプスからの冷たい風、これらの風が栽培地域の気候に大きな影響を与えています。さらにドナウ川は寒暖差を調整し、ノイジードル湖は霧を発生させ、貴腐ブドウを生み出すなどの影響もあります。

標高200m前後の土地が一般的ですが、400mの高さまで開墾されたブドウ畑もあります。極端な温度差がない温暖な気候帯にあり、フランスのブルゴーニュ地方とほぼ同じ北緯47~48度に位置しています。

オーストリアの主なブドウ品種


オーストリアでは、g.U(原産地呼称保護ワイン)とg.g.A(地理的表示保護ワイン)のワインに対し、26品種の白ブドウと14品種の黒ブドウが認可されています。ちなみに、ゲミシュター・サッツは多品種の混植を意味します。

オーストリアには、地場品種以外の品種である国際品種について主に2つのカテゴリーがあります。ひとつは、DAC認可品種または産地を代表するような国際品種で、リースリングやソーヴィニヨン・ブラン、ムスカテラー、シャルドネ、ピノ・ブラン、ピノ・ノワール、トラミーナーが該当します。もうひとつのカテゴリーは、比較的新しく導入された、一般的な国際品種で、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロが代表的です。

上記以外にもオーストリアを代表する品種として、白品種のGrüner Veltlinerグリュナー・ヴェルトリーナー、赤品種のZweigeltツヴァイゲルト(Blauer Zweigeltブラウアー・ツヴァイゲルト、Rotburgerロートブルガー)とBlaufränkischブラウフレンキッシュは覚えておきましょう。

また、白ブドウ・黒ブドウそれぞれの栽培比率については教本の表をチェックししっかり暗記しておきましょう。

《教本参照》

オーストリアのワイン法と品質分類


1995年にEUに加盟したオーストリアは、現行のオーストリアワインの国内法もEUのワイン法の枠内で運営されています。用語の面でドイツのワイン法と似ていますが、相違点がありますので混同しないよう注意して覚えましょう。

重要なのはKMW糖度という原料用ブドウ果汁の測定法です。Klosterneuburger Mostwaageクロスターノイブルガー・モストヴァーゲ(KMW)という単位を用いて、純粋な糖のみの重量%を示すものです。KMW糖度の高低がオーストリアワインの品質区分の基準になっているという点を前提として、各区分を理解する必要があります。

〈品質分類〉


EUの分類である地理的表示なしワインおよびg.U、g.g.Aという3つの大きなカテゴリーの先にはさらに分類があります。それぞれ分類名を暗記しておきましょう。

まず地理的表示なしワインは、国内で収穫されたブドウを原料としており、オーストリアまたはオーストリアワインとのみ表記できます。熟度は最低10.7°KMW、アルコール含有量は最低8.5%です。ヴィンテージや品種名を表記する場合はその特徴が表れている必要があります。ベルクワインとホイリゲの名称は使用でき、ホイリゲの場合ヴィンテージ表記は必須です。

ブドウ栽培地方名・包括的生産地域・限定的生産地域の名称は教本をチェックしてください。

次に、g.g.A(地理的表示保護ワイン)はラントワインと表示されます。単一のブドウ栽培地方のみのブドウからつくられ、使用できるのは40認可品種のみです。熟度は最低14°KMW、アルコール含有量は最低8.5%です。

最後に、g.U(原産地呼称保護ワイン)です。このカテゴリーが認められるためには国家機関による品質分析と官能味覚検査に合格する必要があります。このカテゴリーにはさらに4つの分類ができます。下にまとめましたので確認しておいてください。

Qualitätsweinクヴァリテーツヴァイン単一の生産地域内で収穫されたブドウで造られる。40認可品種のみ使用可。熟度は最低15°KMW、アルコール含有量は最低9%。
Kabinettカビネット熟度が最低17°KMW、アルコール含有量は最低9%で、残糖最大9g/ℓのクヴァリテーツヴァインが使用できる名称。補糖不可。
DACクヴァリテーツヴァインの当該産地がDACステータスを申請し、地方や国家農務省委員会を経てオーストリアサステナビリティ観光省によって承認され通達が出ると使用できる名称。
Prädikatsweinプレディカーツヴァインある特定の製法でつくられたクヴァリテーツヴァインで、Spätleseシュペートレーゼ、Ausleseアウスレーゼ、Beerenausleseベーレンアウスレーゼ、Eisweinアイスヴァイン、Strohweinシュトローヴァイン/Schilfweinシルフヴァイン、Trockenberrenausleseトロッケンベーレンアウスレーゼの6カテゴリーに分かれる。

・Spätleseシュペートレーゼ:完熟したブドウ。最低糖度19°KMW以上。
・Ausleseアウスレーゼ:未熟果やカビ果など不適切な果実を排除して粒よりしたブドウ。最低糖度21°KMW以上。
・Beerenausleseベーレンアウスレーゼ:過熟および貴腐化したブドウ。最低糖度25°KMW以上。
・Eisweinアイスヴァイン:収穫時に凍結したブドウ。最低糖度25°KMW以上。
・Strohweinシュトローヴァイン(藁ワイン)/Schilfweinシルフヴァイン(葦ワイン):完熟ブドウを藁や葦の上などで3ヶ月以上自然乾燥させ糖度の高くなったブドウ。最低糖度25°KMW以上。
・Trockenberrenausleseトロッケンベーレンアウスレーゼ:大半が貴腐化したブドウないし特に乾燥したブドウから造られ、最低糖度30°KMW以上。

〈その他の表記〉


・Riedリート/リード:Riedは畑の意味で、法的に規定された単一畑から造られるワインは、畑の前に「Ried」をつけて表記する。生産者が独自に創案したワイン名と畑名を区別し、消費者の混同を防ぐためである。

Österreichiscer Sekt g.Uオーストリアン・ゼクトg.U:3段階(Kkassik、Reserve、Große Reserve)の品質分類の条件を満たした場合に認められる、原産地呼称保護の発泡性ワイン。販売前に審査を受け、合格したワインの販売瓶に、ゼクト専用のバンデロールが付けられる。

・Sturmシュトゥルム:「嵐」の意味で、発酵途中のジュースが濁っていることから命名。発酵途中であることを前提に、収穫年の8月1日から12月31日まで販売可(発酵の人為的な遅延または停止も可能)。

・Perlweinペアルヴァイン:弱発泡性ワイン(20度でガス圧1~2.5bar)、アルコール7%以上、炭酸ガス注入法もその旨を表記すれば可能。

・Schaumweinシャウムヴァイン:発泡性ワイン(20度でガス圧3bar以上)、アルコール8.5%以上。

・Bergweinベルクヴァイン:品質分類以外の名称で、伝統的に認められてきた表記。傾斜が26%を超える段丘や急斜面に植えられたブドウ樹から収穫したブドウを原料として造られ、Reserveの表示は、アルコール13%以上のクヴァリテーツワインにのみ認められる。

オーストリアの各生産地域とその特徴


オーストリアは3つの栽培地方に分かれ、その中に9つの包括的生産地域が与えられています。そのうち特に押さえておきたい4つの生産地域を解説します。

ニーダーエスタライヒ州 ヴァッハウ独自の格付けがある。 ・シュタインフェーダーSteinfeder きゃしゃな野草 ・フェダーシュピールFederspiel 鷹狩りの道具 ・スマラクトSmaragd エメラルド色のトカゲオーストリア島北部に位置し、オーストリア全体の栽培面積の61%を占め、北をチェコ、北東をスロヴァキアと国境を接する。 最重要品種であるグリュナー・ヴェルトリーナーの本拠地で州のブドウ栽培面積の47%。アルプス山脈からドナウ渓谷を通って吹き抜ける冷風の影響が強い。 ワイン生産量は白1,535,292hl、ロゼと赤486,016hl、ブドウ栽培面積は29,119ha。 主要ブドウ品種は、白:グリュナー・ヴェルトリーナー、リースリング、ロートギプフラー、ツィアファンドラー、黒:ツヴァイゲルト。 地方料理や食材は、Marillenknoedelマリレンクヌーデル(アプリコットを小麦粉やトプフェン、卵でつくった生地に入れて茹でパン粉をまぶしたもの)、Mohnモーン(ケシの実)、Marchfelder Spargelマルヒフェルダー・シュパーゲル(マルヒフェルド産アスパラガス)。
ブルゲンラント州2001年に世界遺産に登録されたノイジードラーゼー(ノイジードル湖)に面し、ハンガリー国境に沿って、南北166㎞、東西5㎞広がる細長い州。1921年にハンガリー王国領からオーストリア領になった。東をハンガリー、北をスロヴァキア、南をスロヴェニアと国境を接する。パノニア平原からの暖気によって国内でも特に温暖で、ノイジードル湖も気温の変化を緩和する。 ワイン生産量は白308,211hl、赤422,837hl、ブドウ栽培面積は13,267ha。 主要ブドウ品種は、白:ヴェルシュリースリング、シャルドネ、ピノ・ブラン、黒:ブラウフレンキッシュ、ツヴァイゲルト、ザンクト・ラウレント。 地方料理や食材は、Esterhazy Torte エスターハージートルテ(バタークリームとアーモンドのメレンゲを層に重ねトップをフォンダンで飾ったケーキ)、Grammelpogatscherl グランメルポガチャル(豚の背脂から作った油をミルクパン生地で包んだもの)、Martini Gansl マーティニ・ガンスル(ガチョウの丸焼き)。
ウィーン州ハプスブルク帝国の帝都として栄華を極め、世界屈指の観光都市の北・北東・南にブドウ畑が広がり、産地の中心は、北にあるハイリゲンシュタット、ヌスドルフ、グリンツィング。ホイリゲが数多く存在し、ワインと食事を日常的に楽しんでいる。 北から南西にかけて丘陵で囲まれており、西と北からの冷風から守られており比較的温暖。 ワイン生産量は白21,206hl、赤5,078hl、ブドウ栽培面積は628ha。 主要ブドウ品種は、ゲミシュター・サッツ(混植混醸)、白:リースリング、ピノ・ブラン、シャルドネ、グリュナー・ヴェルトリーナー、黒:ピノ・ノワール。 地方料理や食材は、Wiener Schnitzelヴィーナー・シュニッツェル(仔牛の肉とジャガイモ、クヌーデルと呼ばれる団子やポテトサラダを付け合わせた料理)、Tafelspitzターフェルシュピッツ(茹でた牛肉にりんごのすりおろしやペーストしたほうれん草、アサツキが入ったサワークリームソースをつけて食べる料理)。
シュタイヤーマルク州スロヴェニアの北、ハンガリーの西に位置し、ウィーンに次ぐ国内第2の都市グラーツがあり、グラーツ市歴史地区は1999年に世界遺産に登録。 風光明媚で温暖なイメージがあるが気候は冷涼で、アドリア海からの湿潤な風の影響で降水量は多い。 ワイン生産量は白204,622hl、赤51,592hl、ブドウ栽培面積は4,902ha。 主要ブドウ品種は、白:ヴェルシュリースリング、ヴァイスブルグンダー、モリヨン、グラウブルグンダー、リースリング、ゲルバー・ムスカテラー、ソーヴィニョン・ブラン、トラミーナー、黒:ブラウアー・ヴィルトバッハー。 地方料理や食材は、Brettljause ブレットルヤウゼ(さまざまなシャルキュトリーやチーズ、スプレッドなどが木の板にのったもの)、Käferbohnen ケーファーボーネン(花豆)。

ルクセンブルク

フランス、ドイツ、ベルギーに国境を接するルクセンブルクは、「フランスの質とドイツの量を兼ね備えた美食の国」といわれ、国土面積は神奈川県と同じくらいですが、人口100万人あたりのミシュラン星付きレストランの数は、日本に次いで2番目に多いです。
小国ながら一人当たりのGDPは世界トップという豊かな国で、農業がルクセンブルク経済に占める割合は1%と非常に少ないが、ワイン産業は2000年以上の歴史を誇り、ルクセンブルク政府自ら5haの畑を所有しています。

ドイツとの国境に流れるモーゼル川の左岸で、南北約42㎞にわたりブドウ畑が広がっています。標高150〜250mですが、最大傾斜度60%と急斜面も多く、手作業が中心となるため、ドイツのモーゼルワインに比べ高価格になりますが、生産量の半分をベルギーなどの近隣諸国へ輸出し、国内消費にも支えられています。また、スパークリングワインの「クレマン・ド・ルクセンブルク」(瓶内二次発酵)の輸出にも力を入れています。

ルクセンブルクワインの歴史


古代ローマ時代からワイン生産が盛んで、ケルト人やゴール人、ローマ人もこの地でブドウ栽培を行いました。中世に修道院の手で国内各地にブドウ畑が切り開かれ、赤ワイン用品種が栽培されてきました。1709年の記録的冷害により、生産地は再び縮小し、19世紀から白ワイン用品種の栽培が本格しました。

1911年にルクセンブルクワイン生産者協会が設立されたものの、第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約締結でドイツ関税同盟が解体され、ドイツへの輸出に関税が課されるようになったため、競争条件が悪化し、ルクセンブルクでは高級ワイン用品種への植え替えと栽培面積の縮小が行われました。その後、1925年に「ブドウ・ブドウ酒機構」が設立され、1935年には国産製品認証制度が開始されたことを受け、ルクセンブルクワインはひとつのブランドとして認知されはじめ、現在に至ります。

ルクセンブルクの気候風土


北部はベルギーから続くアルデンヌ高原、南部はフランスから続くロレーヌ台地、東側のドイツとの国境にはモーゼル川が流れます。大陸性気候の影響を含んだ海性気候です。年間平均気温は9.6℃で年間降水量は725mmです。

ルクセンブルクの主なブドウ品種


スティルワインは伝統的に単一品種で造られます。過去にルクセンブルクで4割のシェアを誇ったリヴァネールが栽培面積の23%を占め、次いでピノ・グリが16%、オーセロワが15%、リースリングとピノ・ブランが共に13%と白ブドウ品種が上位を占めます。近年ではクレマン・ド・ルクセンブルク用に、シャルドネも栽培されるようになりましたが、シェアとしてはまだ3%に過ぎません。温暖化が進む中、生産者の努力もあり、黒ブドウのピノ・ノワールの作付面積が9.9%に増加しています。

2018年のワイン生産量は135,907hL、ブドウ栽培面積は1,248haです。

ルクセンブルクのワイン法と品質分類


ルクセンブルクでは2015年に新A.O.P.を導入し、これまでの官能試験によるポイント評価制から生産地と収穫高による格付けに移行しました。格付けは3段階に分かれています。

Côtes deコート・ドゥ調和のとれた日常ワイン。
Coteaux deコトー・ドゥグレーヴェンマッハ地区の貝殻石灰質、もしくはレーミッヒ地区の粘土質泥灰岩のコイパーの特徴が表現された優良な畑のワイン。手作業による収穫。
Lieu-ditリューデイ最上畑のワイン。手作業で選果しながら収穫。最大収量75hℓ/ha。「プルミエ・クリュ」「グラン・プルミエ・クリュ」の格付けも併記可能。

スパークリングワインは、1991年に制定された「クレマン・ド・ルクセンブルク」の品質基準(手収穫、全房圧縮、搾汁は150kgのブドウから100ℓまで、瓶内二次発酵、最低9ヶ月の瓶内熟成、デゴルジュマンによる澱の除去、二酸化硫黄含有量上限は150mg/ℓ、残糖50g/ℓ以下)を踏襲しました。2016年ヴィンテージから、瓶内熟成24ヶ月以上のものに「ミレジメ」呼称の使用が可能となりました。

ルクセンブルクのワインの産地と特徴


ルクセンブルクの南東、モーゼル川流域南のシェンゲン村から、モーゼル川北にあるヴァッセルビリグ村までの約42kmにわたる地域でワインが造られています。海洋性気候および大陸性気候をあわせ持ち、標高150〜200mに位置する南西から南東向きの畑が理想とされています。

法律では区分されていませんが、地形的・土壌的に南北2つのエリアに区分でき、スタッドブレディムスより北が「北部」とされ、レーミッヒより南が「南部」とされます。北部は、全般的に急斜面が多く、Muschelkalkムッシェルカルクという貝殻石灰岩土壌が多いため、エレガントでミネラリティ豊か、しっかりとした酸をもつワインを生みます。南部は、砂や粘土、炭化物、マールなどで構成される粘土岩(Keuperコイパー)の土壌が多く、シェンゲンから広がる丸く穏やかに傾斜した斜面から、やわらかでふくよか、奥行きのあるフルボディで調和の取れたワインが造られます。

各生産地の位置は教本の地図で確認しておきましょう。

《教本参照》

ルクセンブルクの食文化


ルクセンブルクは、近隣諸国からの移住者が人口の4割を占めることから、食文化も多様性に富んでいます。ボーヌシュルップ(さやいんげん入りスープ)、ジュッド・マット・ガールドボーヌン(豚の燻製にそら豆とジャガイモを添えたもの、家庭料理の定番)やパテ・オー・リースリング(リースリングワインで風味づけした肉汁のジュレが入ったパテのパイ包み)などがルクセンブルクの名物料理として知られています。

河野ゆみこ

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ことばワークス代表。  建築インテリア・ライフスタイル・起業経営・地域情報などのテーマを中心に、紙媒体・WEB媒体の各種コンテンツや電子書籍原稿の執筆、取材...

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