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Vol.17 チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、南アフリカ

ソムリエ試験対策

天候に恵まれワインの産地として名を馳せるチリ、厳しい経済環境下でもワインの品質改善が進むアルゼンチン、南米第4位のワイン生産量を誇るウルグアイ、360年以上もの長いワイン造りの歴史を持つ南アフリカは、それぞれ特有のワイン生産文化を持っています。

この回ではチリ、アルゼンチン、ウルグアイ、南アフリカのワイン産業における歴史や気候風土、主なブドウ品種、ワイン法、生産地域などの特徴について解説します。

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目次
1.チリ
2.アルゼンチン
3.ウルグアイ
4.南アフリカ

チリ

日本とチリの二国間の経済連携協定により2019年4月以降、ワインには関税がかからず、アメリカやオーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンなどのワインよりも有利な立場にあります。国土は、南端はパタゴニアの南氷洋、北端はアタカマ砂漠で、南北4.274kmに及びますが、東西はとても狭く90~380kmしかありません。アルゼンチンとの国境には6000m級の山々が連なるアンデス山脈があり、国土のちょうど中間部にあたる南緯27~40度の1,400kmにブドウ栽培地域が広がっています。

チリワインの歴史


チリでのブドウ栽培は、スペインのカトリック伝道者が16世紀半ばにミサ用ワインをつくるためにパイス種を植えたことに始まります。1818年にスペインから独立して以来、鉱物資源をもとに経済成長を遂げる過程で鉱山富豪が次々に誕生し、ワイン産業のスポンサーとなり、チリワインの新しい時代が始まりました。

その後、1830年にチリ政府によってフランスから招聘されたClaude Gayクロード・ゲイが、ヨーロッパから苗木(カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、リースリングなど)を輸入し、チリ政府がサンティアゴに開設した農事試験場(キンタ・ノルマル・デ・アグリクルトゥラ)の実験畑に植えました。また、クロード・ゲイの試験栽培に触発されたSilvestre Ochagaviaシルベストレ・オチャガビアは、1852年にフランスから大量のボルドー系の苗木(カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、マルベック、カルメネール、ソーヴィニヨン、セミヨン、ミュスカデル)を輸入し、マイポ・ヴァレーのタラガンテに植えました。

20世紀に入ると、イタリアから大量生産に適した栽培技術・パラール(棚栽培)が導入され、増産体制が整います。ヴィニフェラ種の栽培面積は1875年から1900年ごろにかけてほぼ倍増しますが、1960~1980年代にはチリにおけるブドウ産業は深刻な生産過剰問題を抱えることになり、栽培面積も大きく減少しました。

1979年、スペイン人のミゲル・トーレスはステンレスタンクやオーク樽といったこれまでなかった醸造機器を導入して、フレッシュでフルーティなワイン造りを広め、チリ国内のワイン産業に活気をもたらします。それまで発酵槽として使っていたラウリ(チリ原産の木)の小樽を撤去しステンレスタンクを新設・増設する工事とワイン造りを同時進行させていきました。

2000年代に入るさらに新しいステージに入り、テロワールをコンセプトとしたワイン造りが進められ、シンプルでジャムの様なヴァラエタルワインから付加価値を備えたプレミアムワイン造りへ舵を切りました。

チリの気候風土


東側にアンデス山脈、太平洋岸に海岸山脈が走っているチリでは、二つの山脈の中間部であるセントラル・ヴァレーにブドウ畑が広がっています。典型的な地中海性気候で雨は冬しか降らないので、アンデスの雪解け水を引き込むための灌漑用水路を使って水を確保します。

ブドウの生育期間を通して乾燥した気候が続くため、ボトリティスやベト病といった病気にかからないことはチリのブドウ栽培の大きな特徴です。フィロキセラ被害もこれまで出たことがないため、北米品種の台木に接木する必要がありません。

カサブランカ・ヴァレーをはじめサンアントニオ・レイダやリマリ、ウアスコ・ヴァレー、エルキ・ヴァレー、コスタなどの冷涼地は積極的に開拓されています。アンデス山脈の麓は主に火山性土壌や崩積土、中間部の平地は肥沃な沖積土、海岸山脈側は砂が多く痩せた土壌とさまざまな土壌が存在しています。

チリの主なブドウ品種


チリで栽培されているブドウ品種は80種あり、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨンがもっとも多く全体の30%を占めます。次いでグレープフルーツの香りが強いSauvignon Blancソーヴィニョン・ブラン、ジャムのような香味のMerlotメルロ、19世紀半ばにボルドーから持ち込まれメルロの一種であるCarmenèreカルメネールと続きます。その他、SyrahシラーやPinot Noirピノ・ノワール、Paisパイス、Carignanカリニャンなどがあります。

チリのワイン法と品質分類


チリのワイン製造に関するルールは法律No.18455に定められ、1986年に農業省令No.78が制定されました。ヴィティス・ヴィニフェラのブドウ果汁を発酵させたものに限り、製造工程でアルコールや糖類・人工甘味料の使用は不可、ワインのアルコール分は11.5%以上であることが定められています。

チリワインのラベル表示については、ワインの種類、製造者名と所在地、容量、アルコール含有量、原産国がチリであることが義務付けられています。さらに、当該産地のブドウを75%以上使用していれば原産地呼称(D.O.)や品種、ワインの収穫年、輸出用ワインは産地名、品種、生産年とも85%以上を使用していることがラベル記載の条件です。

チリワインの各生産地域とその特徴


チリでは、ワイン産地は複数のD.O.に区別されています。それぞれの産地について北から順に解説します。

D.O.Atacamaアタカマ フンボルト海流の影響で海風が内陸に入り込むため、海岸沿いは比較的冷涼な気候。海から20㎞の河岸段丘にブドウ畑が広がり、ソーヴィニヨン・ブランなどが栽培されている。D.O.コピアポ・ヴァレーとD.O.ウアスコ・ヴァレーがある。
D.O.Coquimboコキンボ 緯度が低く日照が強いが冷たい海風が吹き付けるため気候は冷涼。ソーヴィニヨン・ブラン(白)やシャルドネ(白)、ピノ・ノワール(赤)、シラー(赤)等のブドウ畑が増えている。D.O.エルキ・ヴァレー、D.O.リマリ・ヴァレー、D.O.チョアパ・ヴァレーがある。
D.O.Aconcaguaアコンカグア 日照量が多い地域や冷涼な海風により気温が低い地域が集まっている。D.O.アコンカグア・ヴァレー、D.O.カサブランカ・ヴァレー、D.O.サンアントニオ・ヴァレー、D.O.マルガマルガ・ヴァレーがある。
D.O.Central Vally セントラル・ヴァレー チリのブドウ栽培が始まった地域で広大な面積を誇る。乾燥が激しいため潅漑が必要。近年は新品種の栽培がさかんで、MOVIという生産者団体が組織されている。D.O.マイポ・ヴァレー、D.O.ラペル・ヴァレー、D.O.カチャポアル・ヴァレー、D.O.コルチャグア・ヴァレー、D.O.クリコ・ヴァレー、D.O.マウレ・ヴァレーがある。
D.O.Southサウス 降水量が多くエリアの90%は潅漑を必要としない。パイス種の栽培が多く醸造されるワインのほとんどは国内消費用とされる。D.O.イタタ・ヴァレー、D.O.ビオビオ・ヴァレー、D.O.マジェコ・ヴァレーがある。
D.O.Secano Interior セカノ・インテリオル クリコ、マウレ、ビオビオ、イタタの非灌漑地域で栽培したパイスとサンソーに適用される呼称。
D.O.Australアウストラル 2011年に新しく認定された原産地呼称。D.O.カウティン・ヴァレーとD.O.オソルノ・ヴァレーがあり、シャルドネ(白)やピノ・ノワール(赤)が主に栽培されている。

上記に加えて、2011年には西から東に3つの産地に分けられ、新しい原産地呼称表示が採用されています。

Costaコスタ チリの海外線沿岸の海水は真夏でも冷たく、内陸に向かって吹く風は冷たいためブドウ栽培に適している。土壌もカルシウムなど海洋性の要素を多く含んでいるため、ミネラルや塩味が強くシャープな酸味のワインが出来上がる。ソーヴィニヨン・ブラン(白)をはじめシャルドネ(白)やピノ・ノワール(赤)、シラー(赤)、メルロ(赤)なども栽培されている。
Entre Cprdilleras エントレ・コルディリェラス アンデス山脈と海岸山脈の間に位置する平坦で肥沃な地域。チリを代表する赤ワインの多くがつくられており、チリワイン生産の60%のブドウを栽培している。カベルネ・ソーヴィニヨン(赤)をはじめシラー(赤)やメルロ(赤)、プティ・ヴェルド(赤)、カルメネール(赤)などが栽培されている。
Andesアンデス アンデス山脈の斜面地域。標高や斜面の向き、斜度によって生み出すブドウには違いがあるが、いずれも品質の高いブドウが栽培されている。

各地域のD.O.の位置は教本の地図を参考にして覚えておきましょう。

《教本参照》

アルゼンチン

デフォルトの危機が懸念され、消費者物価も大きく上昇しているアルゼンチンは、ワインの国内消費量が多いだけにワイン産業にとって厳しい状況が続いています。日本のアルゼンチンワインの輸入量は2014年をピークに減少傾向で、輸送費や関税の影響を受け厳しい環境と言えますが、国内のブドウ畑や醸造所ではワインの品質改善の取り組みが進んでいます。

アルゼンチンワインの歴史


元々アルゼンチンにはワイン用のブドウ種は自生していませんでした。16世紀にキリスト教の伝道師が持ち込み、ミサ用のワインを確保するために修道院の近くに植えられたことからブドウ栽培が広まりました。チリではパイスと呼ばれる品種は、アルゼンチンではクリオジャと呼ばれました。

19世紀後半、ヨーロッパからの大量の移民がやってきたことでワイン消費者層が急増したことや、鉄道の敷設によって西部のワイン産地と消費の中心地であるブエノス・アイレスがつながったことでワイン大量生産時代に突入します。1882年に入植しブドウ畑を拡大させたルイス・ティラッソや、メンドーサ川の南にブドウ畑を拓いたイギリス人のエドムンド・ハメス・ノルトンなどによってアルゼンチンのワイン産業の礎が築かれました。

1960年代には、大規模なワイン醸造施設が整い、混植混醸のコモンワイン(ビノ・デ・メサ)と呼ばれるワインが大量に消費され、1970年のアルゼンチンのワイン消費量は一人当たり90ℓでした。

しかし1970年代後半から1980年代はじめにかけて、コーラなどの清涼飲料水やビールの市場参入によりワイン消費量は減少し、国内市場から輸出市場の開拓へと舵を切ります。適地適品種の考えに基づいてブドウ栽培が行われ、21世紀に入ってからは国際市場が生産地や風土の特性を表現したワインを求めるようになったことで、マルベックの生産に力を入れてきています。

アルゼンチンの気候風土


国土西側を南北に伸びるアンデス山脈にそって、南北2,000㎞にわたるブドウ畑が広がっています。海抜高度450~2,980mの範囲に分布しており、海岸線からは離れているため世界でも少ない大陸性気候で規模の大きなワイン産地です。

それぞれの地域のブドウ生育期における昼夜の気温差は大きく、栽培地域が他国より広いため、高品質ブドウの産地分布も比例して広いです。湿気が極端に少なく、カビよけの薬剤散布が不要なのでブドウ畑の環境は健全と言えますが、毎年降る雹の被害が大きいため防雹ネットを設置して被害を最小限に食い止めているほか、フェーン現象の一種であるソンダという強風被害も大きいです。

アンデスの豊富な雪解け水を利用できるアルゼンチンのような産地は世界中にそれほど多くありません。他の乾燥地域の産地は干ばつのリスクに常に晒されています。

アルゼンチンの主なブドウ品種


アルゼンチンの2018年のブドウ品種の栽培面積は、Malbecマルベックが最も多いです。次いでCerezaセレサ、Bonardaボナルダ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、Criollaクリオジャと続きます。

アルゼンチンのワイン法と品質分類


アルゼンチンワインに関する法律14878は1959年11月に公布され、生産されるワインを下記6つに分類しています。

①Vinos Genuinosビノス・ヘヌイノ:ススティルワイン
②Vinos Especialesビノス・エスペシアレス:Alc.15%以上のワイン。3つに小分類される。
③Vinos Espumososビノス・エスプモソス:瓶内2次発酵したスパークリングワイン
④Vinos Gasificadoビノ・ガシフィカド:スティルワインにガスを注入したスパークリングワイン
⑤Vino Compuestoビノ・コンブエスト:アルコールワインに芳香物質や甘味を加えたワイン。ヴェルモットやキニーネなど。
⑥Chichaチチャ:Alc.5%になる前に発酵を止めて甘口に仕上げ、残糖80g/L以上。濃縮果汁の使用は禁止。

また1999年10月に公布された法律25163では、アルゼンチンワインの製造と表示に関わる基準をIPワイン、IGワイン、DOCワインの3つに分類して品質管理を厳格化し、産地名称保護をめざしています。

DOCに認定されたのは、ルハン・デ・クージョとサン・ラファエルの2つのみで、その後も認定の動きは見られません。一方でIGについては新しい認証が続いております。アメリカのAVAを始めとするニューワールドのワイン産地の多くが栽培品種とワイン造りの自由裁量の大きいIG表示を採用しているため、アルゼンチンもこの傾向に向かっていると言えます。

アルゼンチンの各生産地域とその特徴


アルゼンチンの生産地域は3つに大別されています。それぞれの特徴を解説します。

ノルテ地方(北部) 3つの州を南北に縦断するカルチャキヴァレーで、手つかずの自然が広がる。年間の平均気温は15度、年間降雨量はわずか200mmで乾燥が強い。トロンテス(白)やマルベック(赤)、カベルネ・ソーヴィニヨン(赤)などを主に栽培。
クージョ地方(中央部) 南アメリカのブドウ産地の中で最大の面積を誇る。アルゼンチン全体の70%を占めるメンドーサとサン・ファン川沿いに広がるサン・ファンがある。マルベック(赤)やボナルダ(赤)、トロンテス(白)、シャルドネ(白)、ソーヴィニヨン・ブラン(白)などを栽培。
パタゴニア地方(南部) アルゼンチン国内で最南端に位置し、標高が低い。昼夜の気温差が大きく、遅霜のリスクは少ないため、成熟期間が長く早生品種向き。南西部の生産地域であるヴァルル・ルイ・トラヤンは森や草原地帯が広がり、安定した温暖な気候。砂質ソーヴィニヨン・ブラン(白)、メルロ(赤)、ピノ・ノワール(赤)、マルベック(赤)を栽培。

2017年には、この3つに加えてアトランティカ(大西洋沿岸部)が加わり4地域となっています。

それぞれの地域の位置は教本で確認して覚えておきましょう。

《教本参照》

ウルグアイ

ウルグアイは、東にブラジル、西は一部ラ・プラタ川を挟んでアルゼンチンと国境を接し、南は太平洋に面し、南米大陸コノスルの東側に位置しています。首都モンテビデオは、ラ・プラタ川河口の左岸に位置し、約200km先の対岸にアルゼンチンの首都ブエノス・アイレスを臨みます。南米大陸の中で2番目に面積が小さい国ですが、ワイン生産においてはアルゼンチン、チリ、ブラジルに次ぐ第4位と存在感を示しています。生産されるワインのうち赤ワインが78%、白ワインが22%です。牛肉の消費量が多く、ワインの消費と密接な関係があると言えるでしょう。

ウルグアイワインの歴史


17世紀末にスペインからブドウが持ち込まれ、国の南東部に植えられたのがウルグアイにおけるブドウ栽培の始まりです。最初のブドウはモスカテルだったと言われており、生食用や家庭で消費するワイン用とされておりました。1873年にスペイン系移民のフランシスコ・ヴィディエラがヨーロッパへ渡り、カベルネ・ソーヴィニョンを始めとするワイン用ブドウの苗木を持ち帰り栽培を始めました。特にフォル・ノワールの栽培が大成功をおさめました。フォル・ノワールの栽培は国内で減少傾向にありますが、ウルグアイでは彼の名にちなんでヴィディエラというシノニムで広く知られています。

19世紀後半にはワイナリーが相次いで建てられますが、フィロキセラ被害によって多くのブドウ畑が衰退しました。しかし北米産の台木に接木することで立ち直り、現在国内で栽培されているブドウ樹の98%は台木に接木されています。

近年は海外のコンサルタントを積極的に受け入れており、輸出量は年々増加傾向にあります。

ウルグアイの気候風土


温暖湿潤気候に属しており、夏は暖かく冬は寒いです。年間平均降雨量は1,000~1,400mmで、ラ・プラタ川や大西洋の影響を強く受けて湿度が高いです。そのため、風通しがよく湿気や病害に強い上に日照を確保しやすいウルグアイの伝統的なLIRA仕立てのブドウ樹が26%ほどあります。

土壌の種類が多く99種類存在していると言われ、それぞれが複雑に入り組んでいるため地域別に土壌を区別するのは困難ですが、一般的に南部には石灰粘土質土壌が広がっています。

ウルグアイの主なブドウ品種


ウルグアイ国内で栽培されているブドウ品種は、黒ブドウ品種が80%、白ブドウ品種が20%です。黒ブドウ品種のうち最も多く栽培されているのは、Tannatタナで、Moscatel Hamburgoモスカテル・アンブルゴやMerlotメルロ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨンと続きます。白ブドウ品種ではUgni Blancユニ・ブランが最も多く、次いでSauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、Chardonnayシャルドネ、Viognierヴィオニエと続きます。

ウルグアイのワイン法と品質分類


ウルグアイにはチリやアルゼンチンのようなD.O.の制度は存在しません。しかし1993年にVino de Calidad Preferenteヴィノデ・カリダッド・プレフェレンテ(VCP)という優良品質ワインの位置づけが設けられました。他にVino Comúnヴィノ・コムン(VC)と呼ばれるテーブルワインの2つのカテゴリーに分類されています。

ウルグアイの各生産地域とその特徴


ウルグアイでは、19の県のうち15の県でブドウ栽培が行われています。栽培面積が多い県を中心に特徴を解説します。

Canelonesカネロネス 首都モンテビデオの北に位置するウルグアイ最大のワイン産地。海抜25~50mと低い位置に平野が広がり、国内のブドウ栽培面積の65.2%を占めている。黒ブドウのTannatタナやMoscatel Hamburgoモスカテル・アンブルゴ、Merlotメルロ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、白ブドウのUgni Blancユニ・ブランやSauvignonソーヴィニヨン、Chardonnayシャルドネなどのほか多くの品種を栽培している。
Montevideoモンテビデオ 首都を擁し、ラ・プラタ川の河口に発達した国内第2のワイン産地。国内のブドウ栽培面積の11.6%を占め、ウルグアイ名物の牛アサードレストランが多いため観光地としても有名。黒ブドウのTannatタナ、Moscatel Hamburgoモスカテル・アンブルゴ、Merlotメルロ、白ブドウのSauvignonソーヴィニヨン、Chardonnayシャルドネなどを栽培している。
Coloniaコロニア モンテビデオの上流に位置し、国内第3のワイン産地として国内のブドウ栽培面積の6.2%を占める。ウルグアイ最古のワイナリーであるロス・セロス・デ・サン・ファンが現存している。黒ブドウのTannatタナ、Merlotメルロ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、白ブドウのSauvignonソーヴィニヨン、Chardonnayシャルドネ、Rieslingリースリングなどを栽培している。

南アフリカ

360年以上にわたるワイン造りの歴史を持ち、1973年にはアメリカよりも早く原産地呼称制度を導入するなど、ニューワールドワインを牽引する南アフリカは、海外市場に向けて積極的な取組みを続けています。この20年間で輸出量は約20倍となり、ヨーロッパやロシア、アジア、アメリカ、カナダなど輸出先も大きく広がっています。

南アフリカは、環境と人とに配慮したワイン造りを行うニューワールドワインのリーディングカントリーでもあり、2004年には、ワイン生産地の9割が含まれるケープ植物区が世界自然遺産に登録されました。

南アフリカワインの歴史


南アフリカは、ワインが初めて造られた月日が残る稀有な産地です。1659年2月2日にケープタウン最初の総領事となったJan van Riebeeckヤン・ファン・リーベックが「ケープのブドウから最初のワインを造った」と記録されています。オランダ東インド会社の初代現地法人代表でもあったヤン・ファン・リーベックが地中海性気候を有するこの場所に1655年にブドウ栽培を開始し、4年後にワインが造られました。

19世紀前半にイギリス領土となり、英仏戦争が契機にイギリス国内で南アフリカワインの需要が高まりました。英仏戦争の終結やフィロキセラ被害などでワイン産業は一時苦難の時代に入りますが、1918年にケープのワイン産業の健全な発展を図るために発足した南アフリカふどう栽培者協同組合によって、ブドウの最低価格の保障や需給調整が行われました。

1959年に発売されたシュナン・ブランを使ったセミスイートワインが大ヒットしたのをきっかけに、5年間で国内のワイン消費量は85%増加しました。1994年にアパルトヘイトが撤廃されてからは多くのワイン生産者が海外市場への輸出振興をめざします。

1971年にはワインツーリズムの先駆けとなるステレンボッシュ・ワインルートが整備され、現在はイギリスの著名なワイン評論家であるティム・アトキン氏が毎年南アフリカのワイン生産者を6段階で格付けするなど、ヨーロッパ市場では南アフリカワインの存在感がますます高まっています。

南アフリカの気候風土


国内のワイン産地は南緯27~34度に位置し、地中海性気候で、ブドウ生育期は乾燥した温暖な気候が続き、冬は冷涼ですが霜の害はほとんどありません。中でも西ケープ州はベンゲラ海流の影響を受けて冷涼な気候が続き、地表を冷やし、病害を防いでくれます。さらに、春から夏にかけては「ケープドクター」と呼ばれる乾燥した強い風が吹きます。そのため、防カビ剤や防虫剤の使用が最小限に抑えられています。ユネスコ世界自然遺産に登録された植物自然保護区でもあるため、生産者は自然と調和したワイン造りを行っています。

土壌は世界最古と言われ、度重なる地殻変動や浸食によって独特の砂岩山脈と谷が形成されています。花崗岩や砂岩など土壌は多様です。

南アフリカの主なブドウ品種


南アフリカで栽培されるブドウ品種は、白ワイン用品種が55%、赤ワイン用品種が45%です。20年前は白ワイン用品種が80%を占めていましたが、徐々に赤ワイン用品種へとシフトし、ここ数年は白ワイン用品種への回帰が見られます。

2018年のブドウ栽培面積を見ると、最も多く栽培されているのはChenin Blancシュナン・ブラン(白)です。次いでColombardコロンバール(白)、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン(赤)、Shiraz/Syrahシラー(赤)、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン(白)、Pinotageピノタージュ(赤)と続きます。

単一品種だけでなくブレンドワインも多く、赤・白ともにボルドースタイルが主流です。瓶内で9ヶ月二次発酵させて造られるスパークリングワインのキャップ・クラシックも人気です。

品種別の栽培面積や前年比の数値は教本でしっかりチェックしておきましょう。

《教本参照》

南アフリカのワイン法と品質分類


南アフリカでは、最大の輸出先であるヨーロッパのワイン法を参考にして1973年に制定されました。ラベル表記においては、品種名でも、ヴィンテージでも、該当するものを85%以上使用しなくてはならず、WOの産地名を表示する場合は、同産地内のブドウを100%使用する必要があります。

1993年の改訂では州域の単位規定を新たに制定し、6つの州が制定されています。また、ワイン法に準じた原産地呼称を持つワインは全生産量の6割を占めています。

南アフリカの各生産地域とその特徴


南アフリカの生産地域は、6つの州に分かれています。それぞれの特徴を解説します。

西ケープ州 南アフリカワインの中心産地で、ステレンボッシュやパールなど2018年の栽培面積の1・2位である地区を擁する。海からの冷涼な風と日照に恵まれ、降水量も豊富なので潅漑は必要ない。 ステレンボッシュ地区はワイン産業の中心であると同時に、ワイン教育や研究のハブエリアでもあり、南アフリカで唯一ブドウ栽培と醸造学の学位を受けられるステレンボッシュ大学がある。その他、国内最大のワイン輸出メーカー・KWVのホームタウンであるパール地区や、高品質なソーヴィニヨン・ブランの生産地であるダーリン地区などがある。 主な栽培品種は、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン(赤)、Shirazシラーズ(赤)、Merlotメルロ(赤)、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン(白)Chardonnay、シャルドネ(白)など。
ブレード・リヴァー・ヴァレー地域 ブレード川沿いに広がる地区で、降水量は少なく夏は乾燥が激しい。灌漑設備の整備や低温発酵技術の進化により商業的な成功を収めている。 石灰質が豊富なロバートソン地区や、酒精強化ワインで知られるウスター地区などを擁する。 主な栽培品種はChenin Blancシュナン・ブラン(白)、Colombardコロンバール(白)。
ケープ・サウス・コースト地域 西ケープ州の最南端にあり冷涼な気候に恵まれた地区。標高が高く冷涼な気候が特徴のエルギン地区や、国内では珍しい粘土質で高品質のシャルドネやピノ・ノワールが収穫できるウォーカー・ベイ地区などを擁する。 主な栽培品種はSauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン(白)、Chardonnayシャルドネ(白)、Pinotageピノタージュ(赤)、Pinot Noirピノ・ノワール(赤)など。
クレイン・カル―地域 年間降水量が200mm以下と非常に乾燥した地域で、有機栽培が盛んである。川沿いのエリアに加えて標高が高く冷涼なエリアへのブドウ植栽も始められている。 主な栽培品種はSauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン(白)やPinot Noirピノ・ノワール(赤)。
オリファンツ・リヴァー地域 オリファンツ川沿いに広がる比較的温暖な地域で、土壌も豊富である。キャノピーマネジメントが徹底しているため、手頃な価格で高品質なワインを生産している。 主な栽培品種はChenin Blancシュナン・ブラン(白)、Syrahシラー(赤)、Pinotageピノタージュ(赤)、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン(赤)。

各生産地域の位置は教本で目を通して暗記しておきましょう。

《教本参照》

河野ゆみこ

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ことばワークス代表。  建築インテリア・ライフスタイル・起業経営・地域情報などのテーマを中心に、紙媒体・WEB媒体の各種コンテンツや電子書籍原稿の執筆、取材...

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