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Vol.6 ロワール渓谷・ジュラ・サヴォワ・プロヴァンス・コルシカ島

ソムリエ試験対策

フランスの中西部に広がるロワール渓谷、東部に位置するジュラ・サヴォワ地方、南東部を占めるプロヴァンス・コルス地方およびコルシカ島は、いずれも特徴的なワインの生産地として知られています。栽培されているブドウ品種とA.O.C.を覚え、次にワイン生産量や気候について押さえておくことが重要です。

この回では、ロワール渓谷地方・ジュラ・サヴォワ地方・プロヴァンス地方・コルシカ島、各地方の主要なA.O.C.ワイン、そして歴史や気候風土について解説します。

目次
1.ロワール渓谷地方
2.ロワール地方の各地区の特徴と主要なA.O.C.ワイン
3.ジュラ・サヴォワ地方
4.プロヴァンス地方およびコルシカ島

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ロワール渓谷地方

フランス最大の大河ロワール川(全長1,012km)によって形成された渓谷沿いに広がるロワール渓谷地方は、15もの県にまたがり、ワイン産地が広大なだけにワインの種類も幅広いのが特徴です。比較的冷涼な気候を生かした白ワインの比率が5割を占めており、ロゼが3割、赤が2割です。

ロワール渓谷地方の歴史

ロワール渓谷地方に本格的にブドウ畑が広がったのは5世紀以降で、その後アウグスティヌス会やベネディクト会の修道僧によって発展しました。中世の時代に宮廷でもてはやされたロワールワインは、領主のワイン専売権廃止に伴って市民階級の手にわたります。

フランス革命によってブドウ畑は一時荒廃した後、鉄道の発達による南仏の安価なワインとの競争にさらされ、19世紀末にはフィロキセラの災厄を被りました。そして第一次世界大戦や世界恐慌などの社会的危機の後、1936年にミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌやサンセールなどのA.O.C.が成立し、それ以降A.O.C.産地が増え、今に至ります。

ロワール渓谷地方の気候風土

ロワール渓谷のブドウ畑は、中央高地の麓から大西洋岸まで広く分布しているため、気候や土壌は地区ごとに大きな違いがあります。河口に近いほど温暖で降雨量が多めの海洋性気候ですが、上流に進むほど半海洋性、そして半大陸性へと変化し、夏は暑く冬は厳しい寒さになります。

土壌は片麻岩や片岩、花崗岩、トゥファ、石灰岩などさまざまです。

ロワール渓谷地方の経済とワイン生産量・ブドウ品種

ロワール渓谷地方は、造船業がフランス国内で1位のほか、農業や漁業、園芸業が盛んで、化粧品関連企業が集中していることでも知られています。2020年の関税総局の統計では、ロワール渓谷地方15県のワイン生産量の合計は3,152,423hℓで、うちA.O.C.ワイン生産量が2,386,531 hℓ(白53%,赤20%,ロゼ27%)ブドウ栽培面積は57,955haで、うちA.O.C.ワインの面積が47,095haです。ロワール渓谷のワインは、総出荷量のうち20%に当たる7,000万本を輸出しており、なかでもサントル・ニヴェルネ地区の輸出率が48%と高くなっています。

主要なブドウ品種は、白ブドウのMelon de Bourgogneムロン・ド・ブルゴーニュ(Muscadetミュスカデ)、Cheninシュナン(Pineau de la Loireピノー・ド・ラ・ロワール)、Sauvignonソーヴィニヨン、Chardonnayシャルドネ、黒ブドウのCabernet Francカベルネ・フラン(Bretonブルトン)、Pinot Noirピノ・ノワール、Gamayガメイ、Grolleauグロローです。

ワイン生産量やシノニムも含めて主要なブドウ品種をしっかり押さえておきましょう。

ロワール渓谷地方の郷土料理と食材

Brochet au Beurre Blanc(ナント名物のカワカマスのブールブランソース)やRillette de Tours(トゥール名物の豚のリエット)、Tarte Tatin(リンゴのタルト)などがロワールワインとの相性がいい郷土料理として知られています。

山羊乳から生産されるA.O.P.認定のチーズも多いのが特徴です。Saint-Maure de Touraine、Chavignol、Valençay、Selles-sur-Cherなどのチーズは名前だけでなく、特徴も覚えておきましょう。

ロワール地方の各地区の特徴と主要なA.O.C.ワイン

ペイ・ナンテ地区

ロワール渓谷のワイン産地の中で最もロワール川の河口に近く、ナント市を中心とする地区です。ムロン・ド・ブルゴーニュ(別名ミュスカデ)から造られる爽やかな口あたりのミュスカデで知られるペイ・ナンテ地区は、アルモリカ山塊の火山活動による火成岩や変成岩が主な土壌で、花崗岩や片麻岩なども分布しています。夏と冬の気温差が内陸に比べて小さい海洋性気候で、年間降雨量は800mmほどです。

主要なA.O.C.ワインは、Muscadetミュスカデ1(白)、Muscadet Sèvre et Maineミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ(白)、Muscadet Coteaux de la Loireミュスカデ・コトー・ド・ラ・ロワール(白)、Muscadet Côtes de Grand Lieuミュスカデ・コート・ド・グラン・リュー(白)、Gros Plant du Pays Nantaisグロ・ブラン・デュ・ペイ・ナンテ(白)、Fiefs Vandéensフィエフ・ヴァンデアン(赤、ロゼ、白)、Coteaux d’Ancenisコトー・ダンスニ(赤、ロゼ、白)です。

1最短でも収穫翌年の3月1日まで寝かせると「Sur Lieシュール・リー」の表記が可能。

アンジュ―&ソミュール地区

ロワール川河口から80km内陸に向かったアンジェ市とさらに40㎞ほど上流にあるソミュール市周辺に広がる産地です。辛口から甘口までの白や発泡性ワインなど実に多彩なワインが産出されます。アルモリカ山塊由来の片岩を母岩として、砂岩や粘板岩などが混ざっており、ソミュール地区はTuffeau(トゥファ)と呼ばれる石灰岩の炭酸塩堆積物で、場所により粘土石灰質の表土も見られます。アンジュ―地区は温暖な海洋性気候ですが、ソミュール地区は半海洋性気候のため季節ごとの気温差がより顕著です。

主要なA.O.C.ワインはAnjouアンジュー(白、赤、発泡白、発泡ロゼ)、Cabernet d’Anjouカベルネ・ダンジュー(ロゼ:半甘口)、Rosé d’Anjouロゼ・ダンジュー(ロゼ:半甘口)、Anjou Villagesアンジュー・ヴィラージュ(赤)、Anjou Villages Brissacアンジュー・ヴィラージュ・ブリサック(赤)、Coteaux de L’Aubanceコトー・ド・ローバンス(白)、Anjou Coteaux de la Loireアンジュー・コトー・ド・ラ・ロワール(白)、Savennièresサヴニエール(白:辛口~甘口)、Savennières-Roche aux Moinesサヴニエール・ロッシュ・オー・モワンヌ(白)、Coulée de Serrantクーレ・ド・セラン(白:辛口~甘口)、Coteaux du Layonコトー・デュ・レイヨン(甘口白)、Quarts de Chaumeカール・ド・ショーム(甘口白)、Bonnezeauxボンヌゾー(甘口白)、Saumurソミュール(白、赤、ロゼ、発泡白、発泡ロゼ)、Saumur-Champignyソミュール・シャンピニー(赤)、Coteaux de Saumurコトー・デュ・ソミュール(甘口白)です。

主要ブドウ品種は、白は全てChenin Blanc、赤・ロゼは基本的にCabernet Franc、例外としてRosé d’AnjouはGrolleauとなっています。

トゥーレーヌ地区

ソミュールの東から中心都市トゥールを越え、東はオルレアンに至る地域で、かつての王侯貴族が過ごした古城が多いエリアです。ワインの産地としてのトゥーレーヌ地区はアンドル・エ・ロワール、アンドル、ロワール・エ・シェールの3県に加え、ロワレ県、サルト県、ヴィエンヌ県の一部を含みます。石灰岩トゥファを母岩としています。

トゥーレーヌ地区は、海洋性気候から大陸性気候へと気候の移る中間地点で、アンジューに比べ、季節ごとの気温差が大きい地区です。

主要なA.O.C.ワインは、Touraineトゥーレーヌ(白、赤、ロゼ、発泡白、発泡ロゼ)、Bourgueilブルグイユ(赤、ロゼ)、Saint Nicolas de Bourgueilサン・ニコラ・ド・ブルグイユ(赤、ロゼ)、Chinonシノン(赤、ロゼ、白)、Vouvrayヴーヴレ(白:辛口~甘口、発泡白)、Montlouis sur Loireモンルイ・シュール・ロワール(白:辛口~甘口、発泡白)、Coteaux du Loirコトー・デュ・ロワール(白、赤、ロゼ)、Jasnièresジャニエール(白)、Coteaux du Vendômoisコトー・デュ・ヴァンドモワ(白、赤、グリ)、Chevernyシュベルニー(白、赤、ロゼ)、Cour Chevernyクール・シュベルニー(白)、Orléansオルレアン(白、赤、ロゼ)、Orléans-Cléryオルレアン・クレリー(赤)、Valençayヴァランセ(白、赤、ロゼ)、Haut-Poitouオー・ポワトゥー(赤、ロゼ、白)です。

主要ブドウ品種は、白は基本的にChenin Blancですが、例外としてTouraine、ChevernyはSauvignon、Cour-ChevernyはRomorantin100%、赤・ロゼは基本的にCabernet Francとなっています。

サントル・ニヴェルネ地区

フランスの中心部(サントル)に位置するサントル・ニヴェルネ地区は、ロワール川とシェール川流域にブドウ畑が点在しています。石灰岩や粘土石灰岩、火打石、シリカが混じった粘土質など土壌は多様です。西部は温暖な海洋性気候の影響が残り、東部は大陸性気候の影響が強く夏と冬の気温差が大きいです。

主要なA.O.C.ワインは、Coteaux du Giennoisコトー・デュ・ジェノワ(白、赤、ロゼ)、Pouilly-Fuméプイイ・フュメ(白)、Pouilly sur Loireプイイ・シュール・ロワール(白)、Sancerreサンセール(白、赤、ロゼ)、Menetou-Salonムヌトゥー・サロン(白、赤、ロゼ)、Quincyカンシー(白)、Reuillyルイイ(白、赤、ロゼ)、Châteaumeillantシャトーメイヤン(赤、グリ)です。

主要ブドウ品種は、白は基本的にSauvignon、例外としてChasselas100%のPouilly sur Loireがあり、赤・ロゼは基本的にPinot Noirとなっています。

中央高地地区

ロワール川上流域に広がるアリエ、ロワール、ピュイ・ド・ドームの3県に散在する中央高地地区は、1990年代中頃から2010年にかけてV.D.Q.S.からA.O.C.に昇格した産地が多い地区です。土壌は花崗岩をはじめ多様で、となっており、気候は夏と冬の気温さが比較的顕著な半大陸性気候で、冬は積雪もみられます。

主要なA.O.C.ワインはCôte Roannaiseコート・ロアネーズ(赤、ロゼ)、Côtes du Forezコート・デュ・フォレ(赤、ロゼ)、Saint Pourçainサン・プルサン(白、赤、ロゼ)、Côtes d’Auvergneコート・ドーヴェルニュ(白、赤、ロゼ)で、広域のA.O.C.はCrémant de Loireクレマン・ド・ロワール(発泡白、発泡ロゼ)、Rosé de Loireロゼ・ド・ロワール(辛口ロゼ)です。

各地区の主要なA.O.C.ワインの名前とブドウ品種は、教本に表でまとめられています。量が多いので、時間をかけてしっかり覚えましょう。

《教本参照》

ジュラ・サヴォワ地方

フランス東部にあるジュラ山脈やアルプス山脈の近くに広がるジュラ・サヴォワ地方は、海外への輸出比率が比較的低い産地です。ブドウ栽培面積も大きくはありませんが、特徴的なワインが生まれる地区として知られています。

ジュラ地方

ジュラ山脈の西に広がるジュラ地方は、ブルゴーニュ地方との近似性がみられる一方で、産膜酵母下で酸化的に熟成させたヴァン・ジョーヌや陰干ししたブドウから造られるヴァン・ド・パイユなどの特徴的なワインが少なくありません。ただし現在は、酸化熟成タイプのワインは減少傾向にありウイヤージュ(捕酒)をし、酸化風味を抑えたタイプのワインが主流となっている。

また、細菌学の父といわれるルイ・パストゥールは、ジュラ地方アルボワの出身で、彼はワイン醸造学に大きな功績を残しました。

紀元80年頃にはブドウ栽培が始まったとされ、フランス大革命から19世紀にかけてジュラのブドウ畑は広がりを見せました。現在は優良な土地に適した品種を植えて栽培しているため、ブドウ畑の面積は最盛期の約10分の1のみとなっています。

ジュラ地方は年間平均気温が11~13℃で、夏は暑く乾燥した半大陸性気候です。ブドウ畑の多くは南または南西向きの斜面に位置するため日当たりがよく、年間降水量は平均1,150mmです。全ブドウ畑の60~65%は灰色泥灰岩の土壌です。

2020年の関税総局の統計では、ジュラ県のみでのワイン生産量は90,486hℓで、うちA.O.C.ワイン生産量が88,246hℓ、白が78%、赤が20%、ロゼが2%を占めます。ブドウ栽培面積は2,168haでA.O.C.ワインの面積は2,063haです。

主要なブドウ品種は、白ブドウはSavagninサヴァニャン、Chardonnayシャルドネ(Melon d’Arboisムロン・ダルボワ)、黒ブドウはPoulsardプールサール(Ploussardプルサール)、Trousseauトゥルソー、Pinot Noirピノ・ノワールです。

また、主要なA.O.C.ワインは、Arboisアルボワ(白、赤、ロゼ、ヴァン・ジョーヌ、ヴァン・ド・パイユ)、Château-Chalonシャトー・シャロン1(ヴァン・ジョーヌと呼ばれる白)、L’Etoileレトワール(白、ヴァン・ジョーヌ、ヴァン・ド・パイユ)、Côtes du Juraコート・デュ・ジュラ(白、赤、ロゼ、ヴァン・ジョーヌ、ヴァン・ド・パイユ)、Crémant du Juraクレマン・デュ・ジュラ1(発泡白、発泡ロゼ)、Macvin du Juraマクヴァン・デュ・ジュラ(V.D.L.の白、赤、ロゼ)、Marc du Juraマール・デュ・ジュラ(オー・ド・ヴィ)です。

1瓶内二次発酵による醸造で、瓶内熟成期間は最低9ヶ月。

ジュラ地方の特殊なワイン

・Vin Jauneヴァン・ジョーヌ
Savagninサヴァニャンのみから醸造した白ワインを、産膜酵母下で長期熟成させたもので、色調が黄色に近いことからヴァン・ジョーヌ(黄色ワイン)と呼ばれます。ソトロンと呼ばれる芳香成分により、複雑なフレーバーが生じます。Ouillageウイヤージュ(補酒)せずに、収穫から少なくとも6年目の12月15日まで熟成させ、その間の最低60ヶ月間は産膜酵母下で熟成させます。また、Clavelinクラヴランと呼ばれる容量620mℓのボトルに詰め、収穫から7年目の1月1日以降、消費者に向けて出荷が可能となります。

・Vin de Pailleヴァン・ド・パイユ
陰干ししたブドウから造られた甘口ワインで、パイユ(藁)の上にブドウを敷いて乾燥させたことから、このように呼ばれます。認められている品種は、サヴァニャン、シャルドネ、プールサール、トゥルソーの4品種です。また、ブドウを乾燥させる期間は最低6週間、収穫から少なくとも3年目の11月15日まで熟成させ、そのうち最低18ヶ月間は木樽による熟成であることが規定されています。

ジュラ地方の郷土料理と食材

料理としては地元のワインを使ったCoq au Vin Jaune(ヴァン・ジョーヌを使ったクリーミーな鶏の煮込み) が有名です。また、牛乳から様々なタイプのチーズが生産されます。Comté(加熱圧搾)、Morbier(非加熱圧搾)、Mont-d’Or(ウォッシュ)、Bleu de Gex Haut-Jura/ Bleu de  Septmoncel(青カビ)です。Comtéとアルボワの白ワインを使ったチーズフォンデュFondue Jurassienneも確認しておきましょう。

サヴォワ地方

スイスやイタリアとの国境に接し、アルプス山脈の麓に広がるサヴォワ地方は、冷涼な気候を生かした白の比率が全体の70%を占め、次いで赤が20%、ロゼが6%、発泡性ワインが4%となっています。

サヴォワ地方では中世に修道士の手によってブドウ畑が広がり、16~18世紀には平地から標高1,000mの斜面にまで拡大しました。フィロキセラの被害や世界大戦の影響を受けながらも生産は続けられ、1942年にセイセルがサヴォワとして最初のA.O.C.を取得しました。

標高250~500mの斜面に広がるサヴォワ地方は海洋性気候で、雨が多く、気温差は小さいです。年間の日照量は1,600時間と短く、沖積質や堆積土、モラス土壌など、その土壌は多様性があります。

2020年の関税総局の統計によると、サヴォワ県とオート・サヴォワ県の合計したワイン生産量は122,356 hℓで、うちA.O.C.ワイン生産量は、98,724 hℓブドウ栽培面積は2,080ha、そのうちA.O.C.ワインの面積は1,781haです。

主要なブドウ品種は、白ブドウのJacquèreジャケール、Altesseアルテス(Roussetteルーセット)、Chasselasシャスラ、Gringetグランジェ、Roussanneルーサンヌ、黒ブドウのMondeuseモンドゥーズ、Gamayガメイ、Pinot Noirピノ・ノワールです。

主要なA.O.C.ワインは、Vin de Savoieヴァン・ド・サヴォワまたはSavoie(白、赤、ロゼ、発泡ロゼ)、Crémantクレマン(発泡白)、Roussette de Savoieルーセット・ド・サヴォワ(白)、Saysselセイセル(白、発泡白)、Bugeyビュジェイ(白、赤、ロゼ、発泡白、発泡ロゼ)ですが、ヴァン・ド・サヴォワは16の地理的名称を付記することが認められています。

サヴォワ地方の郷土料理と食材

アルプスの郷土料理としても有名なチーズフォンデュは、サヴォワではFondue Savoyardeと呼ばれています。牛乳から造られるBeaufort(加熱圧搾)、Tomme de Savoie(非加熱圧搾)やReblochon(非加熱圧搾)などのA.O.P.チーズが有名です。

A.O.C.ワインの数が少ない地方ですから、ジュラ地方とサヴォワ地方はまとめて暗記しておくといいでしょう。

プロヴァンス地方およびコルシカ島

ブドウの栽培や醸造におけるフランス最古の歴史を持つプロヴァンス地方と、その南東の地中海に浮かぶコルシカ島は、世界的な観光人気を誇るだけに、生産したワインは主に観光客によって消費されます。

プロヴァンス地方

ローヌ川の左岸からニースまでの地中海沿岸地域にあたるプロヴァンス地方は、ニースやカンヌといった世界有数のリゾート地を持ち、これらの街で消費されるロゼワインが有名です。紀元前600年ごろにはマルセイユにブドウが持ち込まれたと考えられており、マルセイユ近郊は歴史的にも古い産地であるため、1936年にカシスがプロヴァンス地方で最初のA.O.C.認定を受けたのにも納得です。全生産量の89%はロゼワインで、フランス全体のA.O.C.ロゼワインの42%に相当し、世界中で消費されるロゼの5%を占めます。

マルセイユはフランス最大の港湾都市であり、造船や食品加工、石鹸製造などの産業が発展しました。観光業は重要な産業であり、プロヴァンスワインはコートダジュールやカンヌなどで主に観光客によって消費されていますが、輸出量は2011年と2016年を比較すると4倍、ロゼワインに限っては5倍の伸びを示しています。

典型的な地中海気候であるプロヴァンス地方は、乾燥した気候なためカビ病の被害を受けにくく、認証済みの有機農法を取り入れた畑は全体の24%を占めます。

2020年の関税総局の統計によると、ワイン生産量は1,986,953hℓで、うちA.O.C.ワイン生産量は、1,319,059hℓブドウ栽培面積は39,653ha、そのうちA.O.C.ワインの面積は29,569haです。

主要なブドウ品種は、白ブドウのRolleロール(Vermentinoヴェルメンティーノ)、Ugni Blancユニ・ブラン、Clairetteクレレット、Bourboulencブールブーラン、Grenache Blancグラナッシュブラン、黒ブドウのSyrahシラー、Grenacheグルナッシュ、Cinsaultサンソー、Tibourenティブーラン、Mourvèdreムールヴェードル、Carignanカリニャン、Counoiseクーノワーズです。

主要なA.O.C.ワインは、Côtes de Provenceコート・ド・プロヴァンス、Côtes de Provence La Londeコート・ド・プロヴァンス・ラ・ロンド、Côteaux Varois en Provenceコトー・ヴァロワ・アン・プロヴァンス、Côteaux d’Aix en Provenceコトー・デクサン・プロヴァンス、Les Baux de Provenceレ・ボー・ド・プロヴァンス、Bandolバンドール、Cassisカシス、Paletteパレット、BelletベレまたはVin de Bellet、Pierrevertピエールヴェール(いずれも白、赤、ロゼ)、Côtes de Provence Saint-Victoireコート・ド・プロヴァンス・サント・ヴィクトワール、Côtes de Provence Pierrefeuコート・ド・プロヴァンス・ピエールフー、コート・ド・プロヴァンス・フレジュ(Côtes de Provence Fréjus)(いずれも赤、ロゼ)です。

プロヴァンス地方の郷土料理と食材

日本でも有名なBouillabaisse、Salade Niçoise(ニース風サラダ)、Ratatouilleが代表的な郷土料理です。特に Bouillabaisseと合わせるワインは確認しておきましょう。他にGigot d’Agneau en Croûte(仔羊もも肉のパイ包み)と、Banonと呼ばれる栗の葉に包んで熟成させたシェーヴルチーズが有名です。

コルシカ島

フランス南東部の地中海に浮かぶコルシカ島は、地中海で4番目に大きい島で、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトの生誕地としても知られています。イタリアの都市国家に支配されていた時代が長かったためイタリアの影響が色濃く残りますが、コルシカ島独自の文化も根強いです。

ブドウ栽培の歴史はプロヴァンス地方と同じく古く、紀元前600年ごろから古代ギリシャ人によって広められました。安価な大量生産ワインとみなされる時代が長く続きましたが、90年代以降に造り手が品質に目覚めました。1968年にパトリモニオがA.O.C.認定されたのを皮切りに、数種類のA.O.C.ワインが生まれています。

かつては農業と牧畜が経済の中心でしたが、現在は観光業に力が注がれています。生産されるワインは観光客が主に消費しますが、全生産量の約20%はヨーロッパをはじめ他国に輸出されています。

地中海性気候のため夏は暑く乾燥し、冬は温暖ながら、山岳地を中心に雪が降ることもあります。年間日照時間は2,470~2,885時間と長くなっています。島の西側の3分の2は花崗岩質の土壌ですが、パトリモニオのように石灰質土壌がみられる土地もあります。

2020年の関税総局の統計によると、ワイン生産量は376,046hℓで、そのうち A.O.C.ワインの生産量は、121,178 hℓです。ブドウ栽培面積は6,049haで、そのうちA.O.C.ワインの面積は3,058haです。

主要なブドウ品種は、白ブドウのVermentinoヴェルメンティーノ(Malvoisie de Corseマルヴォワジー・ド・コルス)、黒ブドウのSciacarelloシャカレッロ、Nielluccioニエルッチョ、Barbarossaバルバロッサ、Grenacheグルナッシュです。

主要なA.O.C.ワインは、Patrimonioパトリモニオ、Ajaccioアジャクシオ、Vin de Corseヴァン・ド・コルス、Vin de Corse Calviヴァン・ド・コルス・カルヴィ、Vin de Corse Figariヴァン・ド・コルス・フィガリ、Vin de Corse Sartèneヴァン・ド・コルス・サルテーヌ、Vin de Corse Porto-Vecchioヴァン・ド・コルス・ポルト・ヴェッキオ、Vin de Corse Coteaux du Cap Corseヴァン・ド・コルス・コトー・デュ・カップ・コルス(いずれも白、赤、ロゼ)、Muscat du Cap Corseミュスカ・デュ・カップ・コルス(V.D.N.白)です。

主要なブドウ品種とA.O.C.ワインは教本を参考にしっかり覚えていきましょう。

《教本参照》

コルシカ島の郷土料理と食材

島なので海と山、両方の食材が活かされています。Aziminu(コルシカ風ブイヤベース)やCivet de Sanglier(イノシシの煮込み)、羊乳と山羊乳を合わせて造られるチーズのBrocciuが有名です。また、加工肉の食材もあり、Jambon Sec de Corse(A.O.P.認定の生ハム)なども覚えておきましょう。

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