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Vol.16 オーストラリア、ニュージーランド

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さまざまな土壌特性と気候区分を持ち多様性豊かなワインを生産しているオーストラリア、ブドウ栽培が始まったのは19世紀に入ってからとワイン造りの歴史が浅いながらも世界的な注目を浴びるニュージーランドは、ヨーロッパの影響を受けながら独自のワイン文化を培っています。

この回では、オーストラリアとニュージーランドのワイン産業における歴史や気候風土、主なブドウ品種、ワイン法、生産地域などの特徴について解説します。

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目次
1.オーストラリア
2.ニュージーランド

オーストラリア

ヨーロッパ全体のおよそ7割に当たる国土の広さをもっています。南緯31~43度の間にブドウ畑が分布し分布し、東端のニュー・サウス・ウェールズ州から西端のニシオーストラリア州まで3,000km以上に渡りワイン産地が点在しています。最も南に位置し近年生産ワインの人気が高まっているタスマニア州をはじめ6州にブドウ畑が点在しており、オーストリア全体での栽培面積は、ボルドー地方よりも大きく、カリフォルニアより小さいです。

2018年におけるオーストラリアワインの生産量は1,290万hℓで、輸出が全ワイン販売量の6割を占めています。国内にさまざまな土壌があり気候区分も異なるため、同一品種でも味わいに違いがあるなど多様性のあるワインが生産されています。

オーストラリアでは140を超える国からの移民を受け入れています。そのため、様々な食文化を取り入れ、一つの文化として花開いています。メルボルンは食の都としての地位を確立しており、世界のベストレストラン50の表彰式が行われたこともあります。

かつてオーストラリアで、ユニークなワイン文化として知られたBYO(Bring Your Own=酒販免許を持たないレストランでサービスの一環として行われたワインの持ち込み)は、ワインの品ぞろえに自信のあるレストラン、ワインバーの増加もあり、一般的ではなくなってきています。

オーストラリアワインの歴史


オーストラリアに初めてワイン用ブドウ樹が持ち込まれたのは1788年でした。ニュー・サウス・ウェールズ州の初代総督であった英国海軍Arthur Phillipアーサー・フィリップ大佐が、南アフリカの希望峰とブラジルからシドニーに持ち込んだとされています。

その後ブドウ栽培は内陸部に移動し、1825年にJames Busbyジェームズ・バズビーによってニュー・サウス・ウェールズ州ハンターヴァレーに本格的なブドウ園が開設されました。ジェームズ・バズビーは、「オーストラリアのワイン用ブドウ栽培の父」と形容されています。彼は、4ヶ月かけて欧州をめぐり、680本のブドウ樹や枝をニュージーランドに持ち帰り、これを王立シドニー植物園で栽培しました。後に、バズビーもたらしたブドウ樹は「バズビー・クローン」と呼ばれ、その一例としてピノ・ノワールのMV6 が挙げられます。

1840年代には、バロッサ・ヴァレーに現ドイツ周辺から宗教的迫害を逃れてきた人々が入植し、ワイン造りを始めました。1877年にヴィクトリア州ジロング近郊で初めてフィロキセラが発見され、この頃から、ブドウ栽培やワイン醸造は南オーストラリア州に傾斜していきました。オーストラリア最古のワイン用ブドウ樹は、バロッサ・ヴァレーのLangmeil Wineryラングメール・ワイナリーが所有する1843年植樹のシラーズと言われています。南オーストラリア州はいまだにフィロキセラ被害を受けた経験がないため、他州からの来訪者は注意が必要とされています。

第二次世界大戦を経た1950年以降はドイツの低温発酵技術を導入し、リースリングを使った白ワインが人気を博しました。一方赤ワインは、1940年代後半に欧州に渡り、ボルドーのワイン造りに影響を受けたマックス・シュバートが、オーストラリアならではの赤ワイン造りを発想した。それは①複数の異なる畑のシラーズ100%を用い、②アメリカンオークを使用し、③樽内で発酵、熟せさせる。この3つの過程がオーストラリアの赤ワインのエッセンスと言われています。

ワイン造りは2方向で確立されており、一つは複数の地域や区画のブドウをアサンブラージュして生産する「アサンブラージュ主義」と、単一地域や区画で高齢樹のブドウを用いて生産する「単一畑主義」のワインです。こちらも、オーストラリアワインの大きな特徴の一つとなっています。

各州で頻繁に開催される品評会「ショーシステム」は、オーストラリアワインの品質向上に大きく貢献しています。中でもロイヤル・メルボルン・ワインショーにおいて、仕込みから1年後の赤ワインで競う「「Jimmy Watson Trophyジミー・ワトソン・トロフィー」は、醸造家にとって最も権威のある賞の一つとされています。

オーストラリアの気候風土


オーストラリアは、世界7大陸の中で最も古い大陸で、様々な地質年代の土壌が見られます。カベルネ・ソーヴィニヨンに適していると言わるテラロッサ土壌は、クナワラやライムストーン・コーストに広がり、その土壌は鉄分を含んだ赤土と石灰岩質の白土から構成されます。タスマニアで特徴的な水捌けのよいジュラシック・ドレライトと呼ばれる土壌や、マセドン・レーンジズの花崗岩質土壌、マクラーレン・ヴェイルの砂質ローム土壌などオーストラリアには多様な土壌が存在します。

オーストラリアの主なブドウ品種


オーストラリアで栽培されているブドウ品種は、すべてヨーロッパから移植されたものです。オーストラリア固有の品種や、現地で開発された交配品種はほとんど存在しません。白ブドウのChardonnayシャルドネ、Sauvignon Blancソーヴィニョン・ブラン、Semillonセミヨン、黒ブドウのShirazシラーズやCabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、Merlotメルロなどが生産量の上位を占めます。

2018年と2019年の比較によりワイン用ブドウ栽培面積の伸び率が高いのは、黒ブドウのMalbecマルベックや白ブドウのProseccoプロセッコです。また、栽培面積が広いのは黒ブドウのShirazシラーズ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、白ブドウのChardonnayシャルドネです。また、赤はMalbecマルベック、白はProseccoプロセッコがブドウ生産量において前年に比べ顕著に増えています。しかし、オーストラリアで最大の栽培面積を持つのは依然Shirazシラーズです。

ブドウ栽培面積と品種、生産量が多い順については教本の表を参考にしっかり暗記しておきましょう。

《教本参照》

オーストラリアのワイン法と品質分類


1929年、品質と国際市場における評価の向上を目的として、オーストラリア連邦政府の管轄のもとワインオーストラリア公社(WAC)が設立されました。オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)の食品基準4.5.1(ワイン製造要件)により、アルコール4.5度未満はワインとして認められません。補糖も不可で、220-亜硫酸(二酸化硫黄)や200-ソルビン酸、300-アスコルビン酸(ビタミンC)など、酸化防止剤と保存料の表示が義務付けられ、番号で記載されています。

地理的呼称(GI制度)は1993年に導入されました。決定権限は地理的呼称委員会(GIC)が所有し、歴史や地質、気象条件、収穫時期、排水状況、水源、標高、当該地区土地名の伝統的な利用という7項目が含まれます。オーストラリアの地理的呼称制度は、ヨーロッパの原産地呼称制度と似ていますが、ブドウ栽培とワイン製造方法についてはヨーロッパのような特定の原産地呼称の関連した厳格な規定や制約がなく、栽培・醸造面での自由度が高いという特徴があります。

オーストラリアには、ヴァラエタルワインとオーストラリア独自のヴァラエタル・ブレンドワインがあります。特定のGIで産出されたワインが85%以上含まれている場合、GIを表示でき、特定のヴィンテージのワインが85%以上含まれている場合はヴィンテージ表示ができます。複数のブドウ品種が使われている場合は、特定のブドウ品種が85%以上を占めていればその品種だけを表示できます。

2014年、「ワインオーストラリア公社」WACとワインの研究開発行政機関「オーストラリア・ブドウ・ワイン研究開発公社」(GWRDC)が合併し、オーストラリア・ブドウ・ワイン管理局(AGWA)が誕生しています。

オーストラリアワインの各生産地域とその特徴


オーストラリアのワイン産地は6つの州に存在し、2018年7月現在で114のGIがあります。ブドウ栽培面積は、南オーストラリア州が51%と最も広く、次いでニュー・サウス・ウェールズ州が23%、ヴィクトリア州が16%、西オーストラリア州が8%、タスマニア州とクイーンズランド州と続きます。

ここからは、州ごとに生産地域の特徴について解説します。

西オーストラリア州オーストラリア全体におけるワイン生産量はわずか2%ながら、比較的高価格帯で占められ、品質はトップクラス。 1820年代にパース北部からブドウ栽培が始まる。州政府の依頼により調査が進められ、当初から科学的裏付けを持って開発が進んだ地域であり、ボルドーに気候条件が似てワイン生産に適している土地とされた経緯を持つ。調査結果を受け、マウント・バーカーやフランクランド・リヴァーの畑にリースリングやカベルネ・ソーヴィニヨンのブドウ樹を植えたのがグレート・サザンの始まりです。ただし、その後急速に発展したマーガレット・リヴァーが現在、西オーストラリア州を代表する産地として国内外で知られている。 フリーマントル・ドクターという海風により暑さが和らげられ酒精強化ワインの生産に向いた地中海性気候のスワン・ディストリクトや州最大の有力生産地であるマーガレット・リヴァー、シラーズやリースリングの産地として知られているグレート・サザンなど9つのGIがある。 主要ブドウ品種は、白:Chardonnayシャルドネ、Rieslingリースリング、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、黒:Shirazシラーズ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、Pinot Noirピノ・ノワールなど。
南オーストラリア州オーストラリアワインの生産量の大半を担い、世界最古のシラーズのブドウ樹が存在している。国内ブドウ生産量の約50%を産出するオーストラリア最大の生産地域(2019年)。フィロキセラ被害を受けていない世界的にも稀有な産地。最も重要な産地はアデレード州域の6産地で、山地の上にあるエリアと平坦地の広がるエリアとがある。 バロッサ・ヴァレーやイーデン・ヴァレー、クレアヴァレーは宗教迫害を受けて移住してきたドイツ系移民の文化が、マクラーレン・ヴァレーはイタリア系移民文化が色濃い。 標高250~350mのバロッサ・ヴァレーと標高400~550mのイーデン・ヴァレーは、隣接しているもののバロッサレンジという峡谷によって分かれており、土壌の性格が異なる。その他、冷涼な気候で上質なスパークリングワインが生産されるアデレード・ヒルズや、1890年にスコットランド人のジョン・リドックがブドウを植えて開拓されボルドーに似た気候から最上級のカベルネ・ソーヴィニヨンが生産されるクナワラなど15のGIが存在している。 主要ブドウ品種は、白:Semillonセミヨン、Rieslingリースリング、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、黒:Shirazシラーズ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、Pinot Noirピノ・ノワール、Grenacheグルナッシュなど。
ヴィクトリア州中小規模の生産者が中心で、16のGIに400を超えるワイナリーが存在し、国内ブドウ生産量の約17%を産出する州(2019年)。ヴィクトリア州を代表するワイン生産地域であるヤラ・ヴァレーは州の中で最初にワイン用ブドウ樹が植えられた地域。ヤラ・ヴァレー以南は冷涼な気候を生かしてピノ・ノワールやシャルドネの生産に注力しており、ヤラ・ヴァレー以北はシラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に生産している。ヤラ・ヴァレーはモエ・エ・シャンドン社がシャンドン・オーストラリア社を設立するなど、大手シャンパーニュメゾンも注目している産地。 2003年から隔年で開催されている国際的イベントによりピノ・ノワールの重要生産地域として知られるモーニントン・ペニンシュラは、この10年でピノ・ノワールの産地として存在感が強くなってきている。他には、国内で最も標高の高いキング・ヴァレーなどがある。 主要ブドウ品種は、白:Chardonnayシャルドネ、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、Rieslingリースリング、黒:Shirazシラーズ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、Pinot Noirピノ・ノワール、メルロなど。
ニュー・サウス・ウェールズ州国内ブドウ生産量の約30%を産出する(2019年)。1790年代にシドニー周辺でブドウ栽培が始まり、オーストラリアのワイン産業が始まった州とされる。南オーストラリア州にワイン生産の中心が移った現在では、小規模なワイナリーが増え、シドニーから日帰り訪問できるとしてワインツーリズムが人気。 量販用ワインの重要生産地域で州の55%、国内の15%のブドウ栽培量を誇るリヴァリーナ、白ブドウのセミヨンや黒ブドウのシラーズを代表品種として栽培するハンターなど14のGIが存在する。 主要ブドウ品種は、白:Chardonnayシャルドネ、Rieslingリースリング、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、黒:Shirazシラーズ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、Pinot Noirピノ・ノワールなど。
タスマニア州1823年にはじめてワイン用ブドウ樹がもたらされ、小規模なブドウ栽培が続けられる中で商業用規模のブドウ畑が拓かれたのは1970年代に入ってから。島そのものの歴史は非常に古く、ジュラ紀に形成されたジュラシック・ドレライトという土壌が広範囲に広がっている。総収穫量の38%がスパークリングワインに使用される。 2019年のブドウ生産量は国内全体の1%。 主要ブドウ品種は、白:Chardonnayシャルドネ、Rieslingリースリング、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、黒:Pinot Noirピノ・ノワール、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、Merlotメルロなど。
クイーンズランド州日常消費用ワイン用のブドウ栽培からはじまり、現在は高級ワイン用のブドウ栽培が急成長している。生食用ブドウの栽培が長いグラニット・ベルト、温暖な気候で多様な土壌を持つサウス・バーネットの2つのGIがある。 2019年のブドウ生産量は国内全体の1%を切る。 主要ブドウ品種は、白:Chardonnayシャルドネ、Semillonセミヨン、Verdelhoヴェルデーリョ、黒:Shirazシラーズ、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン、Merlotメルロなど。

各地域の位置関係や主要なブドウ品種は教本の地図を参考にして覚えておきましょう。

《教本参照》

オーストラリアワインの特徴のひとつとして最後に触れておきたいのは、酒精強化ワインです。オーストラリアのワインづくりは、1880年代以降テーブルワインから酒精強化ワインへと移ってきました。現在では酒精強化ワインの消費量は世界的に減少しており、国内の生産量も減少しつつありますが、その存在はワイン造りの歴史においてとても重要です。

酒精強化ワインの主な生産地は、南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーとヴィクトリア州のラザグレンです。

2008年のEUとの合意により、シェリーやトポート、バーガンディといったジェネリックワインの名称が禁止されたため、2010年以降シェリーはAperaアペラ、ポートはFortifideフォーティファイド、リキュール・トカイはTopaqueトパークという名称にそれぞれ変更されました。リキュール生産者8社で構成されている協会が、3ヶ月ごとに生産した酒精強化ワインを「Rutherglenラザグレン」「Classicクラシック」「Grandグランド」「Rareレア」の4等級に評価分類しています。

ニュージーランド

北島と南島という2つの島から構成され、南北1,600kmに及ぶニュージーランドは、10のワイン産地が南緯35~45度の位置に分布しています。「遅れてきた」存在と言われてきましたが、欧州やアメリカ、オーストラリアなどの先輩産地が積み上げてきた栽培・醸造技術や知見をそのまま活用し、短期間に産地形成をした国として世界的な注目を集めています。

ニュージーランド全体のブドウ栽培面積は2019年時点で38,680haとボルドー地方の約3割です。ワイナリー数は2018年現在で697あり、ワインの総生産量は3,017,000hℓです。この25年間で、輸出量は右肩上がりで伸長が続いており、近年の全販売量に占める輸出割合は80%程度です。輸出先は、アメリカ、英国、オーストラリアがトップ3で、この3カ国で輸出の8割を占めます。

主要なブドウ品種として、1995年まではミュラー・トゥルガウが最大生産量を誇り、続いてシャルドネを多く生産していました。現在はブドウ収穫量の75%をソーヴィニヨン・ブランが占め、赤ではピノ・ノワールが代表品種です。

ニュージーランドワインの歴史


1819年に、英国人宣教師サミュエル・マースデンにより初めてワイン用ブドウ樹が植えられました。オーストラリアのシドニーから持ち込まれたとされています。実際にニュージーランドで最初にワイン造りを行ったのは「オーストラリアのブドウ栽培の父」であるJames Busbyジェームズ・バズビーです。1980年代後半からワイン産業がさかんになってくるまで、ニュージーランドにおけるワイン産業は国内消費主体の小さな産業でした。1840年にイギリスに併合され、1852年にニュージーランド自治領となりますが、それと前後して北島各地でワイン生産が広がっていきました。

1898~1899年にノースランドのワカピラウで初めてフィロキセラが発見されたことをきっかけにアメリカ系台木が持ち込まれ、台木に接木したブドウ苗木が普及していきます。その後20世紀前半まではハイブリッド種による酒精強化ワインの生産が主体でしたが、酒精強化ワインからテーブルワインへとワイン消費が変化していくのに伴ってさまざまな土壌に対応するミュラー・トゥルガウの栽培が広がっていきました。

ワイン生産の拡大によってブルゴーニュ地方と気候が似ているマーティンボローが新たなワイン産地として開発され、ミュラー・トゥルガウやカベルネ・ソーヴィニヨン、さらにソーヴィニヨン・ブランが栽培されるようになります。1988年以降、ピノ・ノワールのクローンとしてモレ・サン・ドニのドメーヌ・ポンソからもたらされたDRCエイベルやディジョン・クローンなどの品種が、今日のピノ・ノワールの生産の基礎を形成しています。

ピノ・ノワールが短期間に発展した要素のひとつとして大きいのが、生産者間の情報交換を活発化させ、ブドウの品質改善を促進した国際的なワインイベントの開催でしょう。2001年から4年に1回開催される「Pinot Noir NZ」や毎年開催される「Central Otago Pinot Noir Celebration」は、世界に情報発信する強力なマーケティングツールとなっています。

また、ニュージーランド政府は1980年代以降先住民のマオリ族の文化との融合を積極的に推進しています。テロワールと重なるマオリ語の概念「Turangawaewaeトゥーランガワエワエ」は、「人間が結びついている土地」という意味を持つ言葉です。2017年に開催された国際シンポジウム「ピノ・ノワール・コンファレンス」において主要テーマとして掲げられました。

ニュージーランドの気候風土


ノースランドやオークランドなどは、トロピカルな雰囲気の亜熱帯気候です。セントラル・オタゴは乾燥が激しい半大陸性気候を持つ国内唯一のエリアです。これら以外にも多様な気候条件が見られ、日本列島同様に南北に長いので、一般化して語るのが難しいです。

ニュージーランドの主なブドウ品種


白ブドウ品種では、Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、Chardonnayシャルドネ、Pinot Grisピノ・グリの順に多く、黒ブドウ品種では、Pinot Noirピノ・ノワール、Merlotメルロ、Syrahシラーの順に多いです。2019年の品種別栽培面積と生産量を教本の表でしっかり覚えておきましょう。

《教本参照》

ニュージーランドのワイン法と品質分類


ニュージーランドでは、ニュージーランド食品衛生安全局(NZFSA)が一連の法律に基づいてワイン生産の基準とラベル表記を管理しています。2007年のヴィンテージから85%ルールが適用されており、オーストラリアと同じく単一のブドウ品種や収穫年、産地名を表記する際はそれぞれ85%以上の当該品種・収穫年・産地のブドウの使用が義務付けられています。

2006年に地理的表示制定法が、2017年に地理的表示登録法が制定され、18の地域がGI申請し2019年7月現在で17の地域が登録されています。

ニュージーランドワインの輸出振興・マーケティング活動は、2002年に設立された「ニュージーランド・ワイングロワーズ」が担っています。また、独自の環境保全型農法「サステイナブル・ワイン・グローイング・ニュージーランド」の推進を行っており、現在ブドウ栽培地の98%がこの認証を受けています。

ニュージーランドの各生産地域とその特徴


ニュージーランドのワイン産地は北島と南島とに大きく分かれています。それぞれの特徴を解説します。

北島 Northlandノースランド Acuklandオークランド Gisborneギズボーン Hawke’s Bayホークス・ベイ Wairarapaワイララパ歴史的に重要で大手ワイン生産者が残るオークランドは、クロアチア移民によってニュージーランドワイン産業の基礎が築かれたクメウ、小規模生産者によるワインツーリズムがさかんなマタカナ、少量生産の高級ワインが産出されるワイヘケ・アイランドの3エリアに分けられる。 ワイララパは国内を代表するピノ・ノワール産地で日本人の生産者「クスダ・ワインズ」が存在するマーティンボローがよく知られている。 このほか、国内第2位のブドウ栽培面積と生産量を誇るホークス・ベイはボルドー品種とシラーの産地として重要。国内で初めてワイン用ブドウ樹が植えられたノースランドなどがある。 主要なブドウ品種は、白:Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、Chardonnayシャルドネ、Pinot Grisピノ・グリ、黒:Pinot Noirピノ・ノワール、Merlotメルロ、Syrahシラーなど。
南島 Marlboroughマールボロ Nelsonネルソン Canterburyカンタベリー Waitaki Valley North Otago ワイタキ・ヴァレー・ノース・オタゴ Central Otago セントラル・オタゴ国内のブドウ栽培面積の69%を占めるマールボロは、その面積の80%においてソーヴィニヨン・ブランを栽培し国内のワイン産業を支えている。ワイラウ川流域に広がるワイラウ・ヴァレー、国道6号を境に南側に広がるサザン・ヴァレー、ウィザーヒルズを超えた太平洋側に広がるアワテレ・ヴァレーという3つのサブリージョンで構成。 世界最南端のブドウ産地で、国内唯一の半大陸性気候を持つセントラル・オタゴは、生産者たちが任意のマーケティング団体COPNELを出資して作り、産地のプロモーションを行っている。 このほか、ネルソンやカンタベリーなど計5つのGIが存在する。 主要ブドウ品種は、白:Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン、Chardonnayシャルドネ、Pinot Grisピノ・グリ、黒:Pinot Noirピノ・ノワールなど。

それぞれの生産地域の位置は、教本で確認しておきましょう。

《教本参照》

ニュージーランドの食文化


移民国家であるニュージーランドは、食文化も多様化しています。英国の影響を受けたフィッシュ&チップス、羊肉や牛肉を使ったバーベキューをはじめとしてイタリアやタイ、マレー、中華、韓国、和食(寿司)などが見られます。

熱した石の上で葉や布に包んだ食材を蒸し焼きにする先住民マオリ族のHangi料理や、ポリネシア料理などの伝統食も現代的なアレンジを行って存在しています。これらの食事を楽しむための主要な酒類として、ワインが広く普及しているのです。

河野ゆみこ

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ことばワークス代表。  建築インテリア・ライフスタイル・起業経営・地域情報などのテーマを中心に、紙媒体・WEB媒体の各種コンテンツや電子書籍原稿の執筆、取材...

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