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Vol 12 スイス、ハンガリー、スロヴェニア、クロアチア、英国

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ヨーロッパの中央に位置していながらEUに加入せず独自の農業政策を進めているスイス、19世紀には世界第3位のワイン生産国として繁栄したハンガリー、単一品種のブドウから生産するワインが主流のスロヴェニア、自家消費中心のワインを生産しているクロアチア、料理や食材とワインの組み合わせに多様なスタイルがあるイギリスは、それぞれ主なブドウ品種やワイン法などが異なっています。

この回では、スイス、ハンガリー、スロヴェニア、クロアチア、英国のワイン産業における歴史や気候風土、主なブドウ品種、ワイン法などの特徴について解説します。

目次
1.スイス
2.ハンガリー
3.スロヴェニア
4.クロアチア
5.英国

スイス 

中央ヨーロッパ南部に位置しているスイスは、EUには加入せず、環境保護に重点を置き、独自の農業政策を展開しています。隣接する5つの国の影響を受け、国内で4つの言語が使われるなど多文化の連邦国家です。国土の70%をアルプス山脈とジュラ山脈が占め、点在する湖は、大小約1,500に上り、ヨーロッパの主要河川の源流であるローヌ川、ライン川、イン川などはこの国のアルプスや氷河の恩恵を受けています。地形の高低差が4,441mと大きく、複数の気候の影響を受けていることから多様性のあるワインを生みだしています。

赤ワインが50%、白ワインが49%、ロゼが1%というワイン生産量の割合になっており、希少品種を含めるとブドウは約250品種に及びますが、ワインの生産を担う主なブドウ品種は約90品種です。

スイスワインの歴史


紀元前58年、ジュリアス・シーザーがローマ軍を率い、ヴァレー渓谷を越えてスイスに侵攻した際に、ブドウ栽培とワインづくりがもたらされました。ローマ人は、スイスの先住民族であるヘルヴェティア族が使っていたビールの貯蔵樽にヒントを得て、ワイン貯蔵を樽で行ったと言われています。

10~12世紀にかけて今日のスイスワインづくりの基礎が築かれ、急斜面を切り開いて次々とブドウ畑が整備されていきました。17世紀頃からローヌ川やライン川を利用したワイン交易が盛んになり、18世紀には多くの観光客が押し寄せるようになり、スイスワインは海外でも広く知られるようになりました。さらに19世紀後半に鉄道が整備されたことで、シャスラなどの品種が、ヴォー州から全土に広がります。

その後フィロキセラやウドンコ病などの被害を受けるものの、20世紀に入ると新しい品種の開発や古い品種の保護、自然環境に配慮したワインづくりが進められ、少量生産ながら高品質ワインの産地として更なる躍進を遂げています。

スイスの気候風土


スイス国内のブドウ畑は北緯45~47度、標高375~1,100mにあり、豊かな水源と日差しによって良質なブドウが育まれています。北からの寒帯性気候、南から地中海性気候、西から大西洋の海洋性気候、東から大陸性気候など様々な気候が存在し、各ブドウ品種は産地ごとに豊かな個性が感じられます。土壌はジュラ紀・白亜紀の地層が中心となっています。

スイスの主なブドウ品種


スイスで栽培されている白ブドウ品種は、栽培面積の約60%を占めるChasselasシャスラ(=Gutedelグートエーデル=Fendantファンダン)をはじめ、Müller-Thurgauミュラー・トゥルガウやChardonnayシャルドネSylvanerシルヴァーナー(=Johannisbergヨハニスベルグ=Rhinラン)、Petite Arvineプティット・アルヴィンなどがあります。

黒ブドウ品種は、栽培面積の約40%を占めるPinot Noirピノ・ノワール(=Blauburgunderブラウブルグンダー=Clevnerクレヴネール)をはじめ、Gamayガメイ、Merlotメルロ、交配品種のGamaretガマレ(=Gamay×Reichensteiner B13ライヒェンシュタイナー)、Garanoirガラノワール(=Gamay×Reichensteiner B28)などがあります。

主要品種については教本の表をしっかりチェックしておきましょう。

《教本参照》

スイスのワイン法と品質分類


スイスワインは連邦政府が制定する、1998年制定の「連邦農業法」、2007年の「ブドウ栽培とワインに関する輸入法」、1992年制定の「食料に関する規定」によって保護されています。ただし実質的な法の運用は、各州に委ねられています。

「連邦農業法」は生産規制や栽培地登録、輸出入規制、「ブドウ栽培とワインに関する輸入法」は植樹やブドウ樹の規定、ブドウの果実や果汁の質的規制、収量について触れているほか、糖度によってA.O.C.、Vin de Pays、Vin de Tableの3つのカテゴリーがあります。「食料に関する規定」はブレンドや添加物を含む生産・貯蔵など、食品衛生について触れています。

各州では連邦政府が制定した3つの法の下に、生産地域、収穫量、ブドウ品種など8つの規制があり、また連邦政府は2022年を目標に国政的な流通を意識したA.O.C.表示の改正に向け、調整を進めています。スイス全土で現在62のA.O.C.があり、各州の規定に従って使用できるブドウ品種や収穫量、最低必要糖度について定められています。

スイスワインの各生産地域とその特徴


スイスのワイン産地は以下3つの地域に大別されます。
スイス・ロマンド(フランス語圏):ヴァレー州、ヴォー州、ジュネーヴ州、ヌーシャテル州、フリブール州、ベルン・ビーレーゼー州、ジュラ州
スイス・アルモン(ドイツ語圏):西地区(アールガウ州、ベルン州ほか)
中央地区(チューリッヒ州、トゥルガウ州ほか)
東地区(グラウビュンデン州ほか)
スイス・イタリエンヌ(イタリア語圏):ティチーノ州、グラウビュンデン州(メソルチーナ)

次に、それぞれの産地について解説していきます。

スイス・ロマンド(フランス語圏) スイス最大のワイン産地ヴァレー州とレマン湖畔沿いを中心に世界遺産に指定されたラヴォー地区のブドウ畑など、多くの産地が点在するヴォ―州。フランス国境付近まで広がるジュネーヴ州、3つの湖の湖畔沿いに広がるヌーシャテル・ベルン・フリブルグの3州にまたがる地域。ヴァレー州はフィスパーテルミネンのようなヨーロッパの中で標高の高いブドウ畑があることでも有名。ジュネーヴ州やヌーシャテルなどの三湖地方は暖かな気候で、粘土や砂利などの特徴ある土壌条件と相まって味わい深いシャスラが産出される。 主要ブドウ品種は、白:Chasselasシャスラ、Chardonnayシャルドネ、Sylvanerシルヴァーナー、Marsanne Blancheマルサンヌ・ブランシュ、黒:Pinot Noirピノ・ノワール、Gamayガメイ、Gamaretガマレ、Garanoirガラノワール、Syrahシラー、Humagne Rougeウマーニュ・ルージュ、Cornalinコルナラン。 地方料理と食材はWalliser Trockenfleischヴァリサー・トロッケンフライシュ(ドライビーフ)、Racletteラクレット(ラクレットチーズとジャガイモの料理)、Papet Vaudoisパペ・ヴォードワ(ヴォ―州産ソーセージとねぎや玉ねぎのクリーム煮込み)。 主要なA.O.C.ワインはFendantファンダン(白)、Païenパイエン(白)、Petite Arvineプティット・アルヴィン(白)、Dôleドール(赤)、Dôle Blancheドール・ブランシェ(ロゼ)、Dorinドラン(白)、Salvagninサルヴァニャン(赤、ロゼ)、Oeil de Perdrixウイユ・ドゥ・ペルドリ(ロゼ) など
スイス・アルモン(ドイツ語圏)   19州あり、生産地区は西・中央・東の3地区に分かれている。ブドウ栽培には北限にあたる厳しい気候だが、豊かな水源とフェーン現象、太陽の日射に支えられている。西部は石灰層、中央部は石灰岩の砂岩、東部は氷堆石と片岩で掲載されている。ワイン生産量は、スイス全体の15%を占める。 主要ブドウ品種は、白:Müller-Thurgauミュラー・トゥルガウ、Räuschlingロイシュリング、Freisamerフライザマー、Completerコンプレーター、黒ブドウのBlauburgunderブラウブルグンダー、Garanoirガラノワール。 地方料理と食材はGeschnetzeltesゲシュネッツェルテス(薄切りの仔牛肉とマッシュルームのクリームソース煮込み)、Capunsカプンス(スイスチャードの葉に玉ねぎ、ベーコン、小麦粉の餡を巻き、クリームソースとチーズなどをトッピングして焼いたオーブン料理)。 主要なA.O.C.ワインはRäuschlingロイシュリング(白)、Blauburgunderブラウブルグンダー(赤) など。
スイス・イタリエンヌ(イタリア語圏.Ca.スイスで最も南部に位置し、イタリア国境に接したティチーノ州とその北東にあるグラウビュンデン州のメソルチーナで構成されている。 1907年にアメリカの台木にフランスのメルロを接木したことで、現在は栽培品種の85%がメルロで赤、白、ロゼワインがつくられる。 温暖な地中海性気候でブドウの成熟に適している。花崗岩や沖積土の石灰岩という土壌で、ところどころ粘土質が存在する。ワイン生産量はスイス全体の生産量の5%を占める。 主要ブドウ品種は、白:Chardonnayシャルドネ、Chasselasシャスラ、Sauvignon Biancoソーヴィニョン・ビアンコ、Sémillonセミヨン、黒:Merlotメルロ、Bondolaボンド―ラ、Cabernet Francカベルネ・フラン、Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニョン。 地方料理と食材はOsso bucoオッソ・ブーコ(仔牛のすね肉と野菜のトマトソース煮込み)、Polentaポレンタ(チーズソースなどをかけて主食として出されるトウモロコシの粉でつくる穀物粥)。 主要なD.O.C.ワインはTicinoティチーノ(赤、白、ロゼ)、Rosso del Ticinoロッソ・デル・ティチーノ(赤)、Bianco del Ticinoビアンコ・デル・ティチーノ(白)、Rosato del Ticinoロザート・デル・ティチーノ(ロゼ)。

3地域の中の細かい位置関係は教本の地図を参考にして覚えていきましょう。

《教本参照》

ハンガリー

「ドナウの真珠」と呼ばれるブダペストを首都とするハンガリーは、国の中央をドナウ川が縦断し、西から時計回りに、オーストリア、スロヴァキア、ウクライナ、ルーマニア、セルビア、クロアチア、スロヴェニアと7つの国と接し、国土は日本の約1/4です。北にタトラ山脈があり、南の地中海から温暖な空気が入り込む、穏やかな気候を持っています。

ハンガリーワインの歴史


ハンガリーでは紀元前からブドウ栽培が行われていましたが、本格的なブドウ栽培は古代ローマ人によってもたらされたと言われています。9世紀後半にキリスト教に改宗し、1000年にキリスト教王国が建国されたことで、ベネディクト派の宣教師達による商業的な革新がもたらされ、ワイン生産とブドウ栽培地域は拡大していきました。

1867年にハプスブルク帝国が解体されたことに伴い、ハンガリーワインの生産と輸出の扉が開かれ、フランス、イタリアに次ぐ世界第3位のワイン生産国となります。しかし1875年にはフィロキセラ被害に遭い、ワイン生産量は激減しました。

長いロシア支配を経て1980年代には新たな植栽が行われ、1989年に共和国へと体制転換してからは外国資本が多く入り、特にトカイ地方ではフランス資本によって、近代的なワイン造りが広く導入されました。また、他の産地でも外資による技術革新が進み、ワインの品質は飛躍的に向上しています。

ハンガリーの気候風土


主に大陸性気候で、夏は35度を超え、冬は9度近くになるという気温差が大きい大陸性気候です。標高は100~300mで、トカイ地方に唯一513mの山があります。

ハンガリーの主なブドウ品種


ハンガリーのブドウ栽培面積の2/3は白ワイン用品種が占めており、特に栽培技術が単純で病害に強いBiancaビアンカは、この10年で人気が高まっています。その他Cserszegi fűszeresチェルセギ・フューセレッシュやFurmintフルミント、Olaszrizlingオラスリズリング、Chardonnayシャルドネなどが栽培されています。

赤ワイン用品種では、Kékfrankosケークフランコシュが最も多く栽培されています。次いでCabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨンやMerlotメルロ、Zweigeltツヴァイゲルト、Cabernet Francカベルネ・フランなどがあります。

ハンガリーのワイン法と品質分類


ハンガリーでは、1956年にA.O.C.制度同様のワイン法が制定され、生産地区を14に分類して原産地の品質を保証してきました。国の自由化後の1994年には20に、1997年には改正ワイン法によって22の指定地域に分類されました。

2009年に発効された新しいEU規則に則って、2011年から3つのカテゴリーに分けられるようになり、FN(地理的表示なしワイン)、6のOFJ(地理的表示保護ワイン=I.G.P.)、32のOEM(原産地呼称保護ワイン=D.O.P.)となっています。

ハンガリーの各生産地域とその特徴


ハンガリーの生産地域は6つの地方に大別されています。それぞれの特徴を解説します。

バラトン地方  2000年以上のブドウ栽培の歴史があるバダチョニが代表的ナ産地です。その他、バラトン、バラトンボグラール、バラトン・フェルヴィデーク、バラトンフュレド・チョパク、バラトン・メッレーキ、チョパク、ドナウ以西、カーリ、ナジ・ショムロー、ショムロー、別荘地として知られるティハニ、ザラの13地域に分かれている。 このエリアの料理や食材はHalászléハラースレー(淡水魚をトマト、パプリカなどで煮込んだスープ)、fogasフォガッシュ(スズキ)のフライ又はグリル。
ドナウ地方ドウナウ川とティサ川に挟まれたハンガリー最大のワイン生産地域。広大なワイン産地を擁するドナウ、ヨーロッパ最大の連結したセラー地区であるハヨーシュ・バヤ、国内最大のワイン産地であるクンシャーグなどの8地域に分かれている。 この地方の料理としてGulyáslevesグヤーシュレヴェシュ(ハンガリーの国民食。牛肉、人参、じゃがいも、玉ねぎ、パプリカなどで作られたスープ状の煮込み料理。)
北ハンガリー地方エゲル市を中心とし、「エグリ・ビカヴェール」ワインで有名なエゲル、14世紀からブドウ栽培が行われていたビュックなどの5地域に分かれている。 この地方の料理としてPalóclevesパローツレヴェシュ(羊や豚、牛を使い、サワークリーム、ディルなどで味付けした具沢山なスープ)。ハンティングが有名なエリアの為、イノシシやキジなどの鳥獣を使った料理が食される。
北パンノニア地方ハンガリー北西端に位置し、オーストリアとの国境に接するショプロン、ハンガリーで最も古い生産地域の1つであるパンノンハルマ、ハプスブルク家に愛された「モーリ・エゼルヨー」の産地であるモール、など6地域に分かれている。
パンノン地方ハンガリー最南端の産地でボルドーとほぼ同緯度46度ヴィッラーニ、有名な赤ワインである「セクサールディ・ビカヴェール」の産地であるセクサールド、パンノン、トルナ、ヴィッラーニなど6地域に分かれている。
トカイ地方北端はスロヴァキア国境と接し、ゼンプレーン山脈の裾野に広がるワイン産地で、仏王ルイ14世が「王のワインにしてワインの王」と称した世界三大貴腐ワイン「トカイワイン」の産地として有名。フォアグラが名産。ゼンプレーン、トカイの2地域に分かれている。トカイの伝統品種以外で造るとゼンプレーンを名乗る。 トカイで認められているブドウ品種は、Furmintフルミント、Hárslevelűハールシュレヴェリュ、Sárgamuskotályシャールガムシュコターイ、Kobarコバール、Kövérszőlőクヴェルスールー、Zétaゼータ。 2013年にワイン法が改訂され、以下の様に等級分けがなされている。アルコール度、総酸度、残糖度などから品質の区分が行われ、樽熟成期間も異なる。 ・Esszenciaエッセンシア:貴腐ブドウのフリーランジュースからのみ造られる。残糖度450g/L以上。 ・Tokaj Aszúトカイ・アスー:2013年に改定された区分。残糖度120g/L以上。6プットニョシュと記載する際は残糖度が150g/L以上必要。義務ではないが、裏ラベルに残糖度の記載が認められている。 ・Szamorodniサモロドニ:“自然のままに”という意味がある。エッセンシアやアスー用のブドウの収穫は1粒ずつ行われるが、房ごとの収穫が可能。貴腐の割合によって辛口か甘口かが決まる。辛口は残糖度9g/L以下でSzárazサーラズと表記し、甘口は残糖度45g/L以上でÉdesと記載する。 ・Fordításフォルディターシュ:アスー用ワインの二番搾りの果汁をマストに加えて再発酵・熟成させたワイン。残糖度45g/L以上。 ・Máslásマースラーシュ:英語の“コピー”の意味。フォルディターシュ用のワインの搾り澱にマストやワインを注ぎ、再発酵・熟成させたもの。 ・Pezsgőペシュグー:トカイで造られるスパークリングワイン。

スロヴェニア

イタリアのトリエステの東側に位置し、イタリアやオーストリアとアルプス山脈を挟んで国境を接しているスロヴェニアは、紀元前から続く長いワイン造りの歴史を持っています。国土は日本の四国ほどの面積ですが、西にはアドリア海、北にはアルプス山脈、東にはハンガリー平原と地形は変化に富んでいます。1991年に旧ユーゴスラヴィア北部から独立し、2004年にEUに加盟しました。

緯度は北緯45度30分から47度で、ボルドー地方とほぼ同じです。生産者の約9割はブドウ栽培面積11ha以下の小規模生産者です。単一品種のブドウから造るワインが主流で、生産量の68%を白ワインが占めています。

スロヴェニアワインの歴史


紀元前6世紀頃の遺跡の一部にワインを飲んでいる祭りの風景が刻まれていることから、スロヴェニアではこの頃から独自のワイン生産を行っていたと推測されています。その後ローマ時代にまさに盛んになったものの、6世紀にスラヴ民族が移住してからはワイン生産がほとんどなくなりました。

スラヴ民族がキリスト教を受容したことでワイン生産は少しずつ再開され、14世紀からのオーストリア・ハンガリー帝国のもとで大きく発展しましたが、他国と同じく19世紀末のフィロキセラ被害の影響を受け、栽培面積はほぼ半減して現在の規模になりました。

スロヴェニアの気候風土


西にアドリア海、北にアルプス山脈、東にハンガリー平原と変化に富んだ地形を持っているため、気候や土壌も多様です。北西のイタリア国境沿いとアドリア海沿岸地域(プリモルスカ地域)は地中海性気候、北東のハンガリー平原(ポドラウイエ地域)は大陸性気候、南東部(ポサウイエ地域)は半大陸性気候となっています。

スロヴェニアの主なブドウ品種


国内では48品種が栽培されています。栽培面積が大きい順にみると、Laski Rizlingラシュキ・リーズリング、Refoškレフォシュク、Chardonnayシャルドネ、Sauvignonソーヴィニヨン、Malvazijaマルヴァジアなどが栽培されています。

スロヴェニアのワイン法と品質分類


スロヴェニアのワインの品質分類は、フランスやイタリア、ドイツの影響を受けていますが、これらの国より厳しい面もあります。2008年にEUの基準に基づいてP.G.I.(地理的表示保護)とP.D.O.(原産地呼称保護)が導入されました。全ワインの7割がP.D.O.にあたりますが、古くからスロヴェニアで使用されてきたZGPとして販売されることが多く、またZGP表示にこだわらない生産者も多いです。また、統制保証原産地で造られるZGPワインの中でも、伝統的に造られているワインはPTP(統制保証原産地産伝統的なワイン)で、4つあります。

スロヴェニアの各生産地域とその特徴


スロヴェニアの生産地域は以下の3つに分けられ、これらの中に9の統制保証原産地区があります。

プリモルスカ地域北はアルプス、南西はアドリア海に接する地域で、統制保証原産地区は4地区。白ワインの多いスロヴェニアでは珍しく、赤ワインの生産量が全体の46%と最も赤ワインの生産量が多い。スロヴェニアでは一番温暖な地域。クラス地区の土は酸化鉄を多く含む赤土で、レフォシュクから造られるクラシュキ・テランは有名。
ポドラウイエ地域北東部のハンガリー平原にあたる地域で、統制保証原産地区は2地区。スロヴェニア最大のワイン生産地域で、隣接するオーストリアやドイツの影響を受け、豊かでアロマティックな白が主流。中でもレイトハーベストとアイスワインが名高い。トラミネッツやレンスキ・リーズリングなどドイツから持ち込まれた品種が中心。
ポサウイエ地域南東部のクロアチア国境に隣接した地域で、統制保証原産地区は3地区。単一品種主体のスロヴェニアにしては珍しく、複数品種をブレンドしたワインが多い。軽くてアルコール度が控えめな白やロゼが中心で、ドレニスカ地区のCvičekツヴィチェックというロゼワインが代表的。

クロアチア

1991年にユーゴスラビアから独立したが、1995年までセルビア人との香草が続き、今でも国土の一部がボスニア・ヘルツェゴビナに分断されています。クロアチア語による正式な国名は「Hrvatskaフルヴァッカ」で、2013年にEUに加盟しましたが、通貨はユーロではなくクーナを使用しています。

国土は大きく4つに分かれ、それぞれ異なるバックグラウンドや文化を持っています。古くからワイン造りが行われていますが、そのほとんどは自家消費用で商業用はわずかです。白ワインを炭酸水で割ったゲミシュト、赤ワインを水で割ったべヴァンダといった飲み方も広く親しまれています。

クロアチアワインの歴史


クロアチアでは2500年ほど前からブドウ栽培が行われていました。中世にはワインの生産が拡大し、積極的に輸出されるようになり、一部の街では栽培やワイン醸造に関する法律も制定されています。15世紀にオスマンとルコが南東欧に上陸し、厳しい禁酒法が課されますが、司祭や修道士は例外としてワイン生産が許可されていました。クロアチアは20世紀に入るまでフィロキセラ被害を受けなかったため、その間にワインの輸出が急拡大しました。

ユーゴスラビア共産主義体制のもとに入り、ワインも協同組合が中心となり、品質よりも数量が重視されるようになりました。さらに、1990年代初頭から始まったクロアチア紛争により、多くの畑やワイナリーが損傷を受けました。こうした要素が重なり、ワイン生産者の多くが新世界へ向かい、ワイン生産量は激減しました。こうした中、ワイン産業の復活を目指し1995年にワイン生産者による協会・Vinistraが発足し、さらに2010年にはクロアチア商工会議所がクロアチアワイナリー協会を立ち上げました。

クロアチアの気候風土


アドリア海を挟んでイタリアの東に位置するダルマチア沿岸部とイストラは、イタリアとほぼ同じ緯度であり、温暖な地中海性気候です。対して北にアルプス、北東にパンノニア平原の西端をもつ内陸部は、寒暖差が激しく、夏は暑く冬は厳しい大陸性気候です。

クロアチアの主なブドウ品種


土着品種は約130種類あるものの、実際に使われているのはそのうちの30種類ほどです。全体の23%という国内最大の栽培面積を誇るのは白ブドウのGraševinaグラシェヴィナで、Malvazijaマルヴァジアや黒ブドウのPlavac Maliプラヴァッツ・マリ、Merlotメルロが次いで多く生産されています。

品種別の栽培面積やシノニムは教本でしっかりチェックしておきましょう。

《教本参照》

クロアチアのワイン法と品質分類


クロアチアでは、2004年から政府の審査委員会による官能評価にてブドウの選定を行っています。地理的表示に関しては、EUの原産地呼称保護(PDO)に基づき、3つのリージョン、12のサブリージョン、66のVinogorjaが制定されています。

テーブルワインでは、原産地表示なしのテーブルワイン(ストルノ・ヴィノ)と、原産地表記付きのテーブルワイン(ストルノ・ヴィーノ・サ・コントゥロリラノ・ボデゥリエトゥロ)に分かれます。上級ワインでは、統制保証原産地産上級ワインであるクワリテテゥノ・ヴィーノ・サ・コントゥロリラノ・ボデゥリエトゥロと、統制保証原産地産最上級ワインであるヴルフヌスコ・ヴィーノ・サ・コントゥロリラノ・ボデゥリエトゥロに分かれます。

クロアチアの各生産地域とその特徴


クロアチアの生産地域は、2013年のEU加盟に伴って3つに分けられました。それぞれの特徴を解説します。

大陸東部 (サブリージョン:2)フルヴァツコ・ポドゥナウリェは、クロアチア最東部にあり、ドナウ川沿いに広がり、グラシェヴィナとトラミナッツが代表品種。スラヴォニアは、国内最大規模のブドウ生産地として知られ、最も高い斜面にある畑のブドウから造られるアイスワインは、国際的に高い評価を得ている。
大陸西部 (サブリージョン:5)モスラヴィーナは固有品種と昔からの栽培方法を守り続けてきた。プリゴリエ・ビロゴラは首都ザグレブを有し、ザグレブ農業経済大学はこの産地を代表する生産者であり、研究教育機関としても機能している。ザゴリエ-メジュムリエはクロアチア最北で、白品種が多く栽培されている。プレシヴィツァはザグレブの西にあり、他の大陸性気候の産地同様に白品種中心。ポクプリエは大陸部で最小のサブリージョン。
沿岸部 (サブリージョン:5)フルヴァツカ・イストラはブドウ栽培面積約3,000haで、クロアチア最大の産地のひとつ。その他、フルヴァツコ・プリモリエ、シエヴェルナ・ダルマチア、土着品種が多いダルマティンスカ・ザゴラ、典型的な地中海気候のセントラルナ・イ・ユジュナ・ダルマチアの5地区がある。

英国

英国は、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド島の北アイルランドの4つの国で構成され、正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合国」です。高緯度のため、冷涼な気候ですが、イングランドは大西洋の暖流によって温暖な気候であることから多くのワイン生産者が散在しています。

世界第5位の国内総生産は金融などのサービス産業が8割を占め、農業人口は少ないですが機械化が進んでいるのが特徴です。英国のワイン生産の大半を担うイングランドとウェールズにはワイナリーが164軒あり、2019年時点でのブドウ畑の面積は3,578haです。スパークリングワインが69%、スティルワインが31%という構成で、主にイングランドのスパークリングワイン生産が大きく伸びています。主要なワイン産地としてケント、サセックス、ハンプシャーなどがあります。

英国ワインの歴史


紀元前1世紀頃には、ワインを好むベルガエ人(現在のベルギー周辺の人々)が南東部に進出してワインを持ち込んだと考えられています。6世紀末にキリスト教が広まると、ブリテン島南東部の修道院でブドウ栽培とワイン造りが行われるようになりました。12世紀頃まではワイン造りが盛んでしたが、その後「小氷期」と呼ばれる気温低下期間の到来や14世紀中頃のペスト流行、16世紀の修道院解散と土地没収といった様々な要因から衰退していきました。

1703年にポルトガルからのワイン輸入関税を下げたため、ポルトガルワインの輸入が増えました。また、19世紀中頃には、ウドンコ病とフィロキセラの被害を受けたため、ワイン輸入を促すためにワインの関税が引き下げられ、英国の上流階級はヨーロッパ各国からの輸入ワインを常飲するようになりました。20世紀前半には、戦時中に食糧難で穀物栽培が優先されたことでワイン生産が途絶えました。しかし1950年代には、商業的ワイナリーの先駆けとなったハンブルドンをはじめとしたブドウ園が相次いで開設され、70年代に増加のピークを迎えました。

1990年代前半からは協同組合が多く設立され、比較的安価なワインの大量生産と併せて、単一畑ワインなどの上級ワインを生産しました。同時期に黒ブドウの栽培と赤やロゼの生産が増え、またスパークリングワインが注目され英国を代表するワインとして国際的な評価を高めています。

英国の気候風土


北緯49~61度とかなり緯度が高く、最も北極寄りにあるワイン産地のひとつですが、メキシコ湾流の影響で、南部は比較的温和な海洋性温帯気候です。ただし、気温や降雨量は毎年大きく変動するため、毎年収量やワインの品質も変化します。

最近の1世紀以上にわたる温暖化で、ブドウ栽培が可能な地域が広がったことが、ヴィニフィラ種のブドウ栽培の拡大や、熟度が低めのブドウから生産されるスパークリングワインの増加の要因となっています。

イングランド南部には、シャンパーニュからイギリス海峡を越えて連なる白亜土壌の地層が露出しており、セブン・シスターズやドーヴァーの海に面した白い崖は海に侵食されたものです。沿岸部からやや内陸にかけての地域には、シャンパーニュと似た地層に恵まれた場所があり、シャンパーニュに倣った高品質スパークリングワインを造ることができます。

英国の主なブドウ品種


もともと冷涼な気候を持つ英国では、伝統的に栽培される品種は冷涼な気候に合わせた寒冷地向きのハイブリッドやドイツ系交配種が中心でした。しかし近年の気候温暖化や日照に恵まれたブドウ畑の増加、シャンパーニュスタイルのスパークリングワイン生産が盛んになったことなどを理由に、シャンパーニュの主要品種であるPinot Noirピノ・ノワール、Chardonnayシャルドネ、Pinot Meunierピノ・ムニエが栽培面積の上位を占めるようになっています。

英国のワイン法と品質分類


英国では、原則としてEUワイン法が現在も適用されています。2011年、イングランドとウェールズの地域表示を保護する形でワイン法が導入され、2015年にはP.D.O.に単独所有畑のダーニボールが、さらに2017年にはサセックスが追加登録されました。

ワイン法による分類では、①ワイン、②P.G.I.(地理的表示保護)、③P.D.O.(原産地呼称保護)の3カテゴリーがあり、P.D.O.には下記の表示が可能です。

・English Wineイングリッシュワイン:イングランドで収穫されたブドウのみで造ったワイン。スパークリングワインは、トラディショナル方式で澱と共に最低9ヶ月瓶内熟成させる。

・Welsh Wineウェルシュワイン:ウェールズで収穫されたブドウのみで造ったワイン。スパークリングワインは、トラディショナル方式で澱と共に最低9ヶ月瓶内熟成させる。

・Sussex Wineサセックスワイン:イングランドのサセックス地方で収穫されたブドウのみで造ったワイン。トラディショナル方式でスパークリングワインが造られ、澱と共に最低12カ月瓶内熟成させ、澱抜き後の瓶熟成と合わせて最低15か月の熟成期間が必要。

・Darnibole Wineダーニボールワイン:イングランドのコーンウォール州に位置する生産者キャメル・ヴァレー・ヴィンヤードが単独所有する5haの畑のワイン。

また、伝統的表現として認められている呼称として、British Wineブリティッシュワインがあります。ブリティッシュワインは、輸入ブドウや濃縮ブドウ果汁などを原料として英国国内で生産された酒類を示すもので、価格・品質共に低いです。イギリス産ブドウのみを使って醸造されたワインと混同しないよう注意しましょう。

河野ゆみこ

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ことばワークス代表。  建築インテリア・ライフスタイル・起業経営・地域情報などのテーマを中心に、紙媒体・WEB媒体の各種コンテンツや電子書籍原稿の執筆、取材...

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