シャンパンの製法とは?ソムリエが分かりやすく解説
世界各国で親しまれ、結婚式やパーティシーンでも重宝する華やかなイメージがあるシャンパン。でもスパークリングワインとの違いや詳しい作り方まで知っている方は少ないようです。
今回はシャンパンの製法や種類をソムリエが分かりやすく解説していきます。
・そもそもシャンパンとスパークリングワインの違いは?
・シャンパン製法とは?醸造過程をおさらいしよう
・シャンパンの種類
・おすすめシャンパン3選 【ソムリエセレクト】
そもそもシャンパンとスパークリングワインの違いは?
スパークリングワインは世界中で作られていますが、シャンパンとの違いって何?と思う方も多いと思います。
どちらも同じ発泡性のワインを指しますが、シャンパンと名乗るにはAOC(フランスのワイン法)に規定された条件を満たしている必要があります。
スパークリングワインの種類
スパークリングワインは、「3気圧以上のガス圧を持った発泡性ワインであること」という定義があり、国によってさまざまな名称があります。主要なワイン生産国のスパークリングワインの名称は以下の通りです。
- フランス=ヴァンムスー、クレマン
- イタリア=スプマンテ
- ドイツ=シャウムヴァイン、ゼクト
- スペイン=エスプモーソ、カヴァ
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
→知っておきたいスパークリングワインとシャンパンの違い
シャンパンと名乗るためには
ではシャンパンと名乗るために必要な条件は何かというと、具体的には以下の通りです。
- 地域:フランスのシャンパーニュ地方で造られていること
- ぶどう品種:ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ(現在ではムニエの名称)、シャルドネの3種類か、いずれかを使っていること
- 醸造方法:シャンパン(シャンパーニュ)製法で造られていること
これらの条件の他、収穫高や醸造期間、アルコール度数など細かい規定を満たしたものだけがシャンパンと名乗れます。
中でも最も複雑なのがその醸造方法。こちらにフォーカスを当てて見ていきましょう。
シャンパン製法とは?醸造過程をおさらいしよう
それではシャンパン製法を紹介していきます。
ちなみに以下に紹介するのは一般的なシャンパンの製法で、生産者によって若干の差異はあります。
1.Vendenge (ヴァンダンジュ)ぶどうを収穫
9月の半ばから10月に収穫。シャンパーニュ地方全域で手摘みによる収穫をしています。黒ぶどう(ピノ・ノワールとムニエ)2/3、白ぶどう(シャルドネ)1/3の比率が一般的。
2.Epulchage 選果
収穫したぶどうを選果していきます。ここでは傷ものや未熟な実といった、醸造するに適さないぶどうを丁寧に除いていきます。
3.Pressurage (プレスラージュ)圧搾
選果したぶどうが傷まないように圧搾所へと運びます。
シャンパンの醸造に使える搾汁は以下の2つ。伝統的に4000kgのぶどうを房のまま一度に搾汁していきます。
・Tete de Cuvee(テート・ド・キュヴェ)
4000kgのぶどうから2050リットルの搾汁
・Taille(タイユ)
4000kgのぶどうから2550リットルの搾汁
搾汁の量があえて決められているのは、圧搾しすぎて質を落とさないため。シャンパンのクオリティを一定に保つために必要な決まりです。
4.Debourbage (デブルバージュ)清澄
圧搾した搾汁から、清澄剤を使用して不純物を除去します。
5.Premiere Fermentation(プルミエール フェルマンタシオン) アルコール発酵(一次発酵)
収穫したぶどうを畑ごと、ぶどう品種ごとにそれぞれ別タンクで発酵させます。この際、発酵期間は10~15日間ほど。
6.Fermentation Malolaquetic マロラクティック発酵(乳酸発酵)
造り手によっては、味わいにまろやかさを与えるためにリンゴ酸を乳酸に変える「マロラクティック発酵」を実施します。
7.Assamblage(アッサンブラージュ)調合
前年までの収穫で造ったワイン「ヴァン・ド・レゼブル」(Vin de Reserve)と、一次発酵させた原酒をブレンド。各メーカーのブランドイメージに合わせて調合するので比率はブランドによってさまざまです。
特別に作柄の良い年には、その収獲年でできたワインだけでブレンドし、ヴィンテージシャンパンが造られます。
8.Tirage(ティラージュ) 瓶詰め
二次発酵を促すために、蔗糖と酵母を混ぜたリキュール(Liqueur de Tirage)加えます。この際糖は1リットルあたり24gの蔗糖を加えています。瓶詰めの後は、カーヴに寝かせておきます。
9.Deuxieme Fermentation(ドゥジエム フェルマンタシオン)瓶内二次発酵
瓶内でふたたび2回目の発酵。糖はアルコールと炭酸ガスに分解され、酵母のかすは澱として沈殿していきます。おおよそ二次発酵が終わるのは6~8週間ほど。
10.Maturation sur lie (マチュラシオン シュール リー) 瓶内熟成
瓶熟成澱が沈殿した状態で熟成させます。ノン・ミレジメ(ノン・ヴィンテージ)の場合は法律上最低でも15カ月、単独年で造られるミレジメ(ヴィンテージ)の場合は最低でも36カ月の熟成義務があります。
一般的にはミレジメだと5年、プレスティージだと5~7年以上も寝かせることが多いです。
11.Remuage (ルミュアージュ) 動瓶
動瓶は、澱を瓶口に集めるためのシャンパンならではの醸造過程です。
5~6週間に渡って瓶を毎日1/8ずつ回転させていき、徐々に倒立状態にしていきます。非常に手間のかかる作業で、「ピュピトル」という澱下げ台をつかって、古くから手作業でやっている生産者もいますが、現在は「ジャイロパレット」という自動動瓶機を使った自動化がすすんでいます。
12.Degorgement (デゴルジュマン) 澱抜き
ルミアージュで澱を瓶口まで下げたら、次にその澱を取り除いていきます。マイナス20℃の塩化カルシウム水溶液につけて溜まった澱を凍らせることで、澱だけを取り除きます。
13.Dosage (ドサージュ) 補酒(リキュール添加)
デゴルジュマンによって失われた分を補い、シャンパンの味わいを調整するために、「門出のリキュール」(Liqueur d’Expedition)を加えていきます。門出のリキュールは特別に調合されたワインに糖分を混ぜたものです。これによってシャンパンの味わい(甘口か辛口か)が決まります。
最終的な残糖度によって区別されますが、ほとんどはBrut(ブリュット)と呼ばれる&~12g/Lに調整されます。
14.Bouchage(ブシャージュ)&Habbiage(アビラージュ) コルク密栓とラベル貼り
コルク栓を打って、針金で固定します。針金とコルク上部を支えるための金属の蓋を「ミュズレ」(Musulet)と言います。
そして最後にボトルにエチケットを貼ったら完成です。エチケットには必ずオフィシャルに交付された業者登録番号が記されています。
シャンパンの種類
ノン・ヴィンテージ(ノン・ミレジメ)(NV)
ノン・ヴィンテージはシャンパンの中でも最もスタンダードなタイプです。安定した品質を保つために、異なる年に収穫したぶどうで造ったワインをブレンドしています。黒ぶどうと白ぶどうは7:3の割合が一般的で、Brut(辛口)が定番です。
ヴィンテージ(ミレジメ)
ヴィンテージはラベルに記された収獲年のぶどうしか使えません。最低でも36ヶ月の瓶内熟成を経てリリースされます。単一ヴィンテージなのでその年ごとの個性を楽しめるのが特徴です。有名どころだと「ドンペリ」や「サロン」など。
プレスティージ
プレスティージはその名の通り「威信」を意味します。各メーカーが威信をかけて造る最高級品です。平均で5~7年、またはそれ以上の熟成期間を経てリリースされます。最上級の畑のぶどうを主体に造られるので、価格も比例して上がります。
ブラン・ド・ブラン
ブラン・ド・ブランは、(白の中の白)の意味。白ぶどう(シャルドネ)のみで造られるシャンパンです。ミネラル感が豊富で、エレガントなアロマが際立って香ります。新鮮な魚介類を使った前菜や、オイルをふんだんに使った料理との相性がとても良いです。
ブラン・ド・ノワール
黒ぶどう(主にピノ・ノワール)で造る白のシャンパン。シャルドネのみで造るブラン・ド・ブランに比べると、飲みごたえのある芳醇な飲み口に仕上がります。濃い口のメイン料理やジューシーなお肉料理と合わせてもしっかりとペアリングしてくれます。
ロゼ・シャンパン
白ワインと赤ワインをブレンドするタイプと、黒ぶどうの皮を短時間醸して醸造するタイプがあります。
おすすめシャンパン3選 【ソムリエセレクト】
最後におすすめのシャンパンを3選にしぼって紹介していきます。正直美味しいシャンパンは数多くあり、自分の好きなブランドや味わいは人ぞれぞれです。
そこで今回は一般的にもお買い求めしやすい「5000円以下」のボーダーを意識してセレクトしてみました。
ポメリー・ブリュット・ロワイヤルNV
1836年に誕生した老舗のシャンパーニュメゾン。ポメリーは甘口が主流だった当時、世界で初めて辛口のシャンパーニュを考案したと言われています。柑橘類の爽やかなアロマと、まろやかでいきいきとしたバブル。リーズナブルでコスパ高!なシャンパーニュです。
パイパー・エドシック ブリュット
1785年創業の歴史あるシャンパーニュメゾン。あのマリー・アントワネットに献上したシャンパーニュとして受け継がれています。カンヌ国際映画祭での公式ジャンパーニュということもあり日本でも定番になりつつあります。
美しいゴールドの色調で調和の取れたフルーティなアロマ。5000円以下で手に入るシャンパンならこの一本!
ニコラ・フィアット ブルーラベル ブリュット・レゼルヴ
1976年の創設と新興のシャンパーニュメゾンですが、販売数量は本場フランスで国内No.1の実力派です。世界各国の一流レストランや数々の航空会社で採用されているシャンパーニュです。
しっかりした泡立ちと鼻に抜ける焼きたてのパンのようなトースト香が特徴。ぜひ一度味わってみてください。