酒精強化ワインとは?ソムリエが分かりやすく解説
食前酒や食後酒として楽しまれる「酒精強化ワイン」。実際聞いたことはあるけど、どんな味わいでどんな種類があるのか、知らない方も多いかと思います。
そこで今回は酒精強化ワインの種類や味わい、楽しみ方をソムリエが分かりやすく解説していきます。おすすめの酒精強化ワインもセレクトしたので、ぜひ参考にしてくださいね。
酒精強化ワインって?ワインとの違いは?
酒精強化ワインの種類
酒精強化ワインの味わい、楽しみ方
おすすめ酒精強化ワイン3選【ソムリエセレクト】
酒精強化ワインって?ワインとの違いは?
酒精強化ワインは、ワインの発酵途中でブランデーなどの蒸留酒を添加して造られます。
糖分がアルコールに変わる前に強制的に発酵を止めるので、甘みを残したまま自然とアルコール度数も高くなります。
酒精強化ワインは別名「フォーティファイドワイン(fortified wine)」とも言われています。アルコール度数は通常のワインは10~15%ほどですが、酒精強化ワインは18~21%前後と高めです。
酒精強化ワインというと「甘口タイプ」を想像する方が多くいらっしゃいますが、中にはワインの糖分を減らしてからアルコールを添加して辛口に仕上げるタイプも多くあります。
食前酒には辛口タイプを、食後酒には甘口タイプを飲むのが一般的です。
酒精強化ワインの種類
酒精強化ワインは、スペインの「シェリー」、ポルトガルの「ポートワイン」、「マディラワイン」を総称して「世界三大酒精強化ワイン」、またはこれにイタリアの「マルサラ」を加えると「世界四大酒精強化ワイン」と呼ばれます。
まずは代表的なシェリー、ポートワイン、マディラワインの3つをおさえましょう。
スペイン:シェリー
シェリーは白ぶどうを原料にした白ワインをベースにつくられる酒精強化ワインです。スペイン語では「ヘレス」。シェリーに使われるぶどう品種は「パロミノ種、ペドロ・ヒメネス種、モスカテル種」の3種類のみが認められています。
また、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ、サンルカール・デ・バラメダ、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアを結ぶ三角地帯の中で造られたものだけをシェリーと名乗ることができます。
シェリーはアルコール度数や使われるぶどう品種、醸造方法によって極甘口タイプから辛口タイプまで幅広い違いがあるのが特徴です。
シェリーのタイプはフィノ、マンサニーリャ、アモンティリャード、オロロソ、ペドロ・ヒメネスと種類が分かれています。
シェリーのタイプ
- フィノ(Fino)パロミノ種から造られるキリッとしたドライな辛口タイプ。主に食前酒として好まれる。
- マンサニーリャ(Manzanilla)サンルカール・デ・バラメダで熟成される辛口タイプ。
- アモンティリャード(Amontillado)フィノを熟成させた琥珀色のシェリー。アーモンドやナッツ類のアロマ。
- オロロソ(Oloroso)濃い琥珀色で非常にアロマティックな芳香。アルコール度数は17%以上。
- ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximenez)ぶどう品種の名前でもあり、濃厚な甘口に仕上がる。
ポルトガル:ポートワイン
ポートワインは、黒ぶどうを原料にした「レッドポート」と白ぶどうを原料にした「ホワイトポート」に大別されます。日本にはじめてもたらされたのがポートワイン(諸説あり)とも言われ、最も馴染みのある酒精強化ワインかもしれません。
レッドポートは「ルビーポート」と「トゥニーポート」に大別されます。
・ルビーポート=平均3年前後の樽熟成の後に瓶詰めされ、色味が鮮やかなルビー色をしているため、ルビーと呼ばれます。少し冷やして食後酒として楽しまれることが多いです。
収穫されたなかでも特に優れたぶどうを使って長期間の熟成を経てリリースされる「ヴィンテージポート」や4~6年樽熟成させた「レイトボトルドヴィンテージポート(LBV)」は高貴で余韻の長いポートワインになります。
・トゥニーポート=Tawny(黄褐色)から来ており、小さい樽で寝かせて酸化が進み、黄褐色になっています。
長い年月樽熟成させているので(平均5~6年ほど)色素が沈着してトゥニー色になっています。
ホワイトポートは低温でレッドポートよりも長く発酵させています。最低アルコール度数は16.5%以上。辛口につくられることが多く、比較的食前酒として楽しまれています。
また、近年では早飲みタイプのロゼポートも人気です。
ポルトガル:マディラ
マディラはポルトガル領のマディラ島で造られていて、地名がそのまま名称になっています。倉庫内に太陽熱を取り込んで加熱する「カンテイロ(間接加熱)」、樽ごと乾燥炉に入れて人工的に加熱処理をする「エストゥファ(直接加熱)」など、独自の製法で加熱熟成をしています。
マディラの品種
- セルシアル(Sercial)冷涼な気候を好む。辛口タイプ。アルコール発酵を終えてから酒精強化。
- ヴェルデーリョ(Verdelho)冷涼な気候を好む。中辛口タイプ。アルコール発酵後半に酒精強化。
- ブアル(Bual)暖かい気候を好む。中甘口タイプ。アルコール発酵途中に酒精強化。
- マルムジー(Malmsey)海岸沿いの暑い地域を好む。甘口タイプ。アルコール発酵の初期に酒精強化。
- ティンタ・ネグラ(Tinta Negra)一般消費用としてマディラ島の全域で栽培されている。
その他の酒精強化ワイン
その他、イタリアのマルサラ、フランスのVDN(ヴァン・ド・ナチュール)、VDL(ヴァン・ド・リキュール)などがあります。簡単に押さえておきましょう。
・マルサラ イタリアのシチリア島で造られる酒精強化ワイン。カタラット種をベースにして造られるのが一般的。
・VDN(ヴァン・ド・ナチュール)天然の糖分をワイン中に留めることで甘みをのこした天然甘味ワイン。
・VDL(ヴァン・ド・リキュール)発酵する前のブドウ果汁にアルコールを添加し、樽で熟成させたもの。
酒精強化ワインの味わい、楽しみ方
酒精強化ワインは、主に辛口か甘口かによって楽しみ方が変わります。それぞれの飲み方や利用シーンを見ていきましょう。
辛口タイプ
主にシェリーやホワイトポートの辛口タイプの場合、食前酒として楽しまれることが多いです。また、トニックウォーターや炭酸と割ってアルコール度数を控えめにしたカクテルも作れます。シェリートニックやホワイトポートソーダなどのカクテルは、レモンを絞るとさっぱりした飲み口で、食中酒としても楽しめるのが魅力です。
冷やしたフィノやホワイトポートは、魚介類やチーズとの相性も良いので、食中酒としても活躍します。
甘口タイプ
ルビーポートやマディラなど、糖度が高くコクのある甘みを感じられる酒精強化ワインは、主に食後酒として楽しまれます。
濃厚なバスクチーズケーキやカカオ分の強いダークチョコレートとの相性は抜群。バニラアイスのポートワインがけといったオシャレな楽しみ方もあります。
またポートワインやマディラはお肉料理のソースに使われることもあり、食後酒として飲む以外にも汎用性があります。
おすすめ酒精強化ワイン3選【ソムリエセレクト】
高価で上品な酒精強化ワインも多々ありますが、ここでは比較的リーズナブルに楽しめる酒精強化ワインを3つに絞ってセレクトしました。
ゴンザレス ティオペペ
【アロマが良いコスパ高な辛口シェリー!】
冷やして食前酒としていただきたい王道シェリー。はちみつや柑橘類の爽やかなアロマで、フルーティな辛口に仕上がっています。氷をいれてロックスタイルでも、炭酸で割っても美味しくいただけます。
テイラー ファイン ルビー
【名門テイラーの甘口ポート!】
ポルトガルの名門である老舗のテイラーがリリースするルビーポート。
ぶどう本来の甘みを十分に感じられる濃厚な飲み口。そして値段もリーズナブルなので、デイリーに少しずつ楽しめます。家庭に一本置いておきたいポートワインです。
イーストインディア マデイラ 10年
【熟成マディラならこの1本!】
熟成感のある高貴な甘みと、茶色がかった琥珀色の色調。冷やして飲んでもいいですが、常温でゆっくり楽しむのもありです。フォアグラのソテーやガトーショコラのような濃厚な味わいにもぴったりと寄り添う上品な飲み口です。