ワインやワインイベントの総合サイト | VINOTERAS(ヴィノテラス)

ワインやワインイベントの総合サイト
VINOTERAS(ヴィノテラス)

Vol.3 フランス概論、ボルドー

ソムリエ試験対策

ボルドーやシャンパーニュ、ブルゴーニュなど、世界的に有名なワインの産地を多く持つフランスは、スペインやイタリアと世界一位の座を争うワイン大国です。ソムリエ試験の中でもフランスワインの概要は重要なポイントであり、各項目をしっかり理解しておくことが求められます。

この回では、フランスワインの歴史や国内の生産地、品種の特徴について解説します。

目次
1.フランスワインの概要
2.ボルドー地方
3.ボルドー地方の各地区の特徴と主要なA.O.C.ワイン

▼この章に関連した動画▼

1.フランスワインの概要

世界的にも人気が高いフランスワインは、ソムリエ試験では出題頻度が高く出題範囲全体をしっかり押さえておきたいです。この章では、まずフランスワインに関する基本的な情報を頭に入れて、現代のフランスワインの全体像を把握することを目指します。

フランスワインの栽培面積と年間生産量

2020年にフランス財務省・税関間接税管理総局が出した統計によると、フランス国内のブドウ畑の総面積は752,935haです。
2019、2020年における品種別の栽培面積を見ると、黒ブドウ白ブドウ問わず栽培面積がもっとも広いのはメルロ(黒ブドウ)です。主な栽培地はフランス南西部に多く、ボルドー地方や南西地方、他ラングドック・ルーション地方で植えられております。
黒ブドウで2位はグルナッシュです。主な栽培地は南部のローヌとラングドック・ルーション地方です。3位はシラーで主な栽培地はローヌ、プロヴァンス地方です。
白ブドウ栽培面積1位はユニ・ブランです。栽培する南西部のシャラント、ボルドー、プロヴァンス、コルシカ島と広範囲にわたります。白ブドウ2位の栽培面積がシャルドネで主な栽培地はブルゴーニュ、シャンパーニュ地方です。3位がソーヴィニヨン・ブランで主な栽培地はボルドー、南西地方。ここは1位と2位を間違いやすいので注意しましょう。

年間生産量は非商品化の分を除くと45,785,051hlで、生産量では世界2位。世界1位のイタリアや世界3位のスペインと世界一を争うワイン大国です。2018年のワインの輸出額は89億ユーロと世界一を誇ります。最大の市場はアメリカだが、伝統的な輸入国であるイギリスも安定している、近年では、中国が急速に伸びている。

フランスワインの栽培面積や年間生産量、輸出額は大まかな数値でいいので暗記しておきましょう。

フランスワインの歴史

紀元前6世紀頃、古代ギリシャ人によってフランスにもたらされたブドウ栽培は、古代ローマ人の手によって紀元1世紀頃にローヌに伝わりました。その後徐々に北上し、ボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュなどフランス全土に栽培は広がりました。そして中世の時代、カトリック教会の権力が大きくなるにつれてブドウ畑も拡大したと言われています。

1789年のフランス大革命によって貴族や教会の財産からブドウ畑が没収されたことで、ワインは市民にも愛飲されるようになり、同時にワインがフランスの主要な輸出品目のひとつになりました。

しかし19世紀、立て続けにブドウ畑に病虫害が襲いかかります。ウドンコ病、1863年に発見されたフィロキセラ、そしてベト病です。
特にフィロキセラという害虫の繁殖による被害は甚大で、全土に拡大し国内のブドウ畑は根絶やしになってしまいます。やっと立て直せた後も、第一次世界大戦や世界恐慌といった影響で粗悪な質のワインや産地偽装ワインの流通が横行しました。

こうした動きを規制する運動を起こしたのが、シャトーヌフ・デュ・パプの生産者バロン・ル・ロワと国会議員ジョゼフ・カピュスです。1935年にI.N.A.O.(国立原産地及び品質期間)の前身を設立し、同年にA.O.C.(原産地統制呼称)を制定しました。

そして、20世紀後半の醸造学の発展により各地でワインの品質が向上しました。また、60~80年代に化学肥料や農薬を大量に使用した反省から、90年代に入ってからは自然や環境に配慮した栽培法が広がっています。

フランスワインの歴史は18世紀以降の流れを押さえておくことが大切です。

フランスの気候と風土

北緯42~51度に位置するフランスは、日本の北海道からサハリンと同じ緯度ですが、北大西洋の暖流が影響しているため、同緯度の他の地域に比べると温暖です。

地域により気候は異なり、大西洋に近いロワール川の下流やボルドー地方は海洋性気候、ロワール川上流やブルゴーニュ、アルザス地方は内陸にあるため、大陸性気候や半大陸性気候、地中海に面しているラングドックやプロヴァンス、南部ローヌなどは地中海性気候です。

土壌も地区によって違いがあり、ボルドーのメドック地区に見られる砂利質や右岸地区で見られる粘土質、ブルゴーニュ地方で見られる粘土石灰岩質、ローヌ北部の片岩や片麻岩、花崗岩などがあります。産地ごとに様々な特徴があり、また斜面や角度や向きなどが関係して多様なテロワールを形成しています。それらの特徴を押さえておく必要があります。

フランスワインの主なブドウ品種


フランスで栽培されているブドウ品種は数多くあります。栽培面積が多いブドウ品種と主な栽培地を下記にまとめましたので、シノニム(別名)とともに暗記しておきましょう。(上から栽培面積が広い順)

白ブドウ

Ugni Blanc ユニ・ブラン =Saint Émilion (des Charentes)サンテミリオン(デ・シャラント)シャラント、南西地方、ボルドー、プロヴァンス、
Chardonnayシャルドネ=Aubaineオーベーヌ=Gamay Blancガメイ・ブラン=Melon d‘Arboisムロン・ダルボワ=Beaunoisボーノワ=Melon Blancムロン・ブランブルゴーニュ、シャンパーニュ、ジュラ、ロワール
SauvignonBlancソーヴィニヨン・ブラン= Blanc Fuméブラン・フュメボルドー、南西地方、ロワール
Colombardコロンバールシャラント、南西地方
Cheninシュナン=Pineau de Loirピノー・ド・ラ・ロワールロワール
Sémillonセミヨンボルドー、南西地方
Melon de Bourgogneムロン・ド・ブルゴーニュ=Muscadetミュスカデロワール
MuscatBlanc a PetitsGrainsミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン=Muscat de Frontignanミュスカ・ド・フロンティニャンラングドック、ルーション、南部ローヌ
Vermentinoヴェルメンティーノ=Malvoisie de Corseマルヴォワジ・ド・コルス=Rolleロールコルシカ島、プロヴァンス  

黒ブドウ/グリブドウ

Merlotメルロボルドー、南西地方、ラングドック、ルーション
Grenacheグルナッシュ南西ローヌ、ラングドック、ルーション
Syrahシラー=Sérineセリーヌ  ローヌ、プロヴァンス、ラングドック、ルーション
Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨンボルドー、南西地方、ロワール、プロヴァンス、ラングドック
PinotNoirピノノワールブルゴーニュ、アルザス、ジュラ、ロワール、シャンパーニュ
Cabernet Francカベルネ・フラン=Bretonブルトンボルドー、南西地方、ロワール
Carignanカリニャンラングドック、ルーション、プロヴァンス、コルシカ島、南部ローヌ
Gamay Noir a Jus Blanc ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブランボジョレー、ロワール、サヴォワ

 

フランスワインの品質分類と表示

2009年3月以降、フランスでは地域にかかわらず植え付け可能なブドウ品種は自由化されました。ただしA.O.C.を名乗るには、規定に則って定められたブドウ品種を定められた条件で植え付けなければいけません。ブドウの栽培範囲やブドウ品種、最大収量、最低アルコール度数、剪定法や醸造法など、細かい規制が設けられています。

1949年にはA.O.C.の下位カテゴリーとしてV.D.Q.S.(地域指定上級ワイン)が制定されましたが、2011年までにEU共通のワイン法に準じてA.O.C.に昇格、またはI.G.P.(地理的表示保護)に吸収されて消滅しました。

地名を名乗らないワインについては、Vin de Franceヴァン・ド・フランスが2009年に制定され、品種や収穫年の表示は任意で可能です。ただし、リースリングやサヴァニャン(白ブドウ)、モンドゥーズやプールサール(黒ブドウ)など13品種については例外として表示できません。

ワイン法と品質分類や表示に関しては、似たような名称が多く難解ですがしっかり暗記しておきましょう。

2.ボルドー地方

フランスの南西部に位置するボルドー地方は、フランス国内でも1、2を争う銘醸地です。主要品種は、黒ブドウは、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、白ブドウは、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン。この地域のワインは、シャトーと呼ばれるワイナリーで醸造されるものがあり、シャトー所有のブドウ畑で収穫されたブドウで醸造され、瓶詰めまで一貫生産されたワインには、「Mis en Bouteille au Chateauミザン・ブテイユ・オー・シャトー」とラベルに表記することが許されている。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなど、赤も白も複数のブドウ品種の栽培が認められており、多くのワインが複数の品種をブレンドすることで造られている。ワインは主に赤ワインですが、甘口の白ワインも手掛けられ、近年ではロゼワインの人気も高い、また生産量は少ないが、クレマン・ド・ボルドーという発泡性のワインが作られています。

ボルドー地方の歴史や気候風土、各地区の主要ワインの銘柄などについて解説していきます。

▼この章に関連した動画▼

ボルドー地方の歴史

ボルドー地方にブドウ栽培が持ち込まれたのは、紀元1世紀中頃に占領した古代ローマ人によるものですが、ワイン産地として飛躍するのは中世以降のことです。1152年に、当時のボルドー地方を占領していたアリエノール・ダキテーヌがアンジュー伯・ノルマンディー公アンリと結婚し、彼がイングランド王ヘンリー2世に即位したことでボルドーは英国領となり、ボルドー産のワインが英国へ輸出されるようになったため名が知られるようになった。

15~16世紀に一度ワインの取引量が減少するものの、17世紀になるとオランダやハンザ同盟との交易発展に伴って、ボルドーは再び繁栄の時代に入ります。クラレットと呼ばれる赤ワインや辛口・甘口の白ワインが蒸留用として輸出されるようになり、優秀な技術を持ったオランダ人によって沼沢地だったメドック地区が干拓されました。

1855年に開催された、パリ万国博覧会で、ボルドーワインの格付けが行われた。赤ワインは当時から高値で取引されていたシャトーのワインを1級から5級まで格付けしたもので、第一級に4シャトー、第二級に12シャトー、第三級に14シャトー、第四級に11シャトー、第五級に16シャトーの計57シャトーが選ばれました。その後、相続分割や他のシャトーへの吸収等を経て、今日は61のシャトーが格付けされています。

1937年にシャトー・ムートン・ロッチルドが2級から1級へと昇格したのを唯一の例外として、改定が行われていない。この格付けを契機に、単なる飲み物に過ぎなかったワインが、嗜好品として価値を帯びるようになっていきました。

2016年にオープンしたワインのテーマパーク、ラ・シテ・デュ・ヴァンはワイン文化を伝える施設として注目を集めており、ボルドーはワイン文化における世界的な首都としてますます活気を高めています。

ボルドー地方の気候風土

日本の北海道とほぼ同じ北緯45度に位置するボルドー市は、暖かなメキシコ湾流の影響を受けた温暖な海洋性気候です。年間日照時間は2,000時間を超えており、ブドウの生育に欠かせない晴天に恵まれています。ただし年間の平均降雨量が900mmと比較的多いため、ブドウにしばしば灰色カビ病をもたらす一方、一部の地域ではブドウの貴腐化を促しています。

ピレネー山脈から流れるガロンヌ川と中央山塊から流れるドルドーニュ川が、ボルドー市のすぐ北で合流し、ジロンド川となって大西洋に注ぎ込むみ、ブドウ畑はこれら3つの川の周辺に広がっています。ガロンヌ川とジロンド川左岸は砂礫質土壌で、暖かく水はけの良い土地を好むカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適し、ドルドーニュ川、ジロンド川右岸は粘土質土壌のため、冷たく保水力のある土地に向いたメルロが適している。ガロンヌ川とドルドーニュ川に挟まれた中洲も粘土質で、メルロの栽培比率が高い地域です。

ボルドー地方の経済とワイン生産量

ボルドー地方はガロンヌ川やジロンド川から大西洋に通じているため、昔から海運業が盛んな土地です。ボルドーワインの取引はネゴシアンと呼ばれるワイン商によって行われるのが伝統です。ネゴシアンとは、ブランドである超有名シャトーから小さなプチシャトーまで複雑に入り組んでいるボルドーの販売形態の間に立つワイン商で、シャトーが直接小売業者と取引することは稀です。ネゴシアンを介したボルドーワインの取引は全体の7割、輸出の8割を占めています。

2020年のボルドーワインの生産量は4,885,51hl、栽培面積は114,868haで、輸出量は約173万hl(2億3,067万本)です。

ボルドー地方の郷土料理と食材

郷土料理にその土地で生産されたワインを組み合わせるのは、ワイン産地において基本的な考え方ですので、ペアリングをしっかり暗記しておく必要があります。

Lamproie à la Bordelaise(ヤツメウナギの赤ワイン煮)やAgneau de Pauillac (ポイヤック産仔羊)Boeuf de Bazas(バザス産牛肉)、Asperges du Blayais(ブライ産白アスパラガス)、Canelé(ワインの清澄に卵白を利用するため、余った卵黄を使ったお菓子。外はカリッと中はもっちりと焼き上げた菓子)などの郷土料理や食材は、ボルドーワインとのペアリングとしてよく知られています。

ボルドー地方の主要なA.O.C.ワイン

ボルドー地方全域のA.O.C.ワインには、シャトー元詰めのワインのほかにネゴシアンが域内の生産者から買い集めたワインをブレンドしたワインもあります。

Bordeauxボルドー赤、白、ロゼ
Bordeaux Supérieurボルドー・シュペリュール赤、甘口白
Bordeuax Claretボルドー・クラレ
Bordeaux Clairetボルドー・クレレ ※クラレとクレレに注意色の濃いロゼ
Crémant de Bordeauxクレマン・ド・ボルドー発泡白、発泡ロゼ (瓶内二次発酵、瓶内熟成期間は最低9ヶ月)

また、認定品種は次の通りです。

ボルドー赤)カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、マルベック(コット)、プティ・ヴェルド、カルムネール
白)セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデル+コロンバール、メルロ・ブラン、ユニ・ブラン(30%まで)
ロゼ)赤の品種+セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ(20%まで)
ボルドー・シュペリュール赤、白ともにA.O.Cボルドーに同じ。白は残糖17g/L以上。
ボルドー・クラレA.O.Cボルドーの赤と同じ
ボルドー・クレレA.O.Cボルドーの赤と同じ
クレマン・ド・ボルドー ※白にも黒ブドウが認められている。発泡白)カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、マルベック(コット)、プティ・ヴェルド、カルムネール、セミヨン、ソーヴィニヨン・グリ、他
発泡ロゼ)A.O.Cボルドーの赤に準じる

2019年、A.O.C.ボルドー及びボルドー・シュペリュール生産者組合は、温暖化対策として次の補助品種を認定しました。

トウリガ・ナショナル、アリナルノア、マルスラン、カステ
アルヴァリーニョ、リリオリラ、プティ・マンサン

3.ボルドー地方の各地区の特徴と主要なA.O.C.ワイン

▼この章に関連した動画▼

ボルドー地方は、8つの地区に分かれています。それぞれの地区の特徴と主要なA.O.C.ワインをまとめていますので、しっかり暗記しておきましょう。

メドック地区

ボルドー市北部を流れるジロンド川の左岸に広がるメドック地区は、砂や砂利が多い砂礫質の土壌で、カベルネ・ソーヴィニョンの生育に適しています。南のオー・メドックと北のメドックに分かれており、いずれもA.O.C.ワインとして認められているのは赤のみです。

このエリアで白ワインを造ると、A.O.Cボルドーに格下げしなければならなりません。

主要なA.O.C.ワインはMédocメドック、Haut-Médocオー・メドック、Saint-Estèpheサン・テステフ、Pauillacポイヤック、Saint-Julienサン・ジュリアン、Moulisムーリス(Moulis en Médocムーリス・アン・メドック)、Listrac-Médocリストラック・メドック、Margauxマルゴーです。

認められているブドウ品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、マルベック、プティ・ベルド、カルムネール。

主要なA.O.C.ワインがメドック地区のどのエリアで醸造されているかは、ソムリエ教本の地図をしっかり確認しておきましょう。

あわせて、メドック地区の1855年格付けワインについては、銘柄と生産している村をセットで覚えておくことが必要です。ソムリエ教本の格付け表をご参照下さい。

グラーヴ地区

ボルドー市の南、ガロンヌ川の左岸に沿って伸びるグラーヴ地区は、ガロンヌ川が運んできたギュンツ氷期の砂利に覆われた土壌を持ちます。もともとグラーヴとはその砂利を意味し、これが産地名となっています。ボルドー地方の最南部に位置し、ガロンヌ川からの輻射熱を受けるためメドック地区よりブドウの生育が早いです。

主要なA.O.C.ワインはGravesグラーヴ(赤、辛口白)、Graves Spérieuresグラーヴ・シュペリュール(甘口白)、PessacLéognanペサック・レオニャン(赤、辛口白)です。メッドクのA.O.Cが赤ワインのみに限られるのにたいし、白ワインの生産も認められています。

1855年に行われた格付けでは、メドックのワインに限定される中、唯一の例外としてグラーヴ地区で当時から名声の高かったシャトー・オー・ブリオンが選ばれました。

グラーヴ地区にも独自の格付けが存在し階級分けは行われず、16のシャトー名がワインの色とともに列挙されている。また、格付けに漏れたシャトーを対象とし、ボルドー商工会議所とジロンド県農業会議所の権威のもと、「クリュ・ブルジョワ」の格付けが発表された。審査は毎年行われ、2年前のヴィンテージの認定シャトーが、毎年9月に発表される。2019年には、2017年のワインが対象で、226のシャトーが認定を受けました。

サンテミリオン・サンテミリオン衛星地区

ドルドーニュ川右岸に位置する歴史的な街であるサンテミリオンと、バルバンヌ川を挟んだ北側に点在するいずれもサンテミリオンの名が付く4つのA.O.C.があり、サンテミリオン衛星地区と呼びます。いずれのA.O.C.も赤のみが認められており、白やロゼを造るとA.O.Cボルドーへ格下げとなります。

主要なA.O.C.ワインはSaint-Emilionサンテミリオン、Saint-Emilion Grand Cruサンテミリオン・グラン・クリュ、Saint-Georges Saint-Emilionサン・ジョルジュ・サンテミリオン、Montagne Saint-Emilion 

モンターニュ・サンテミリオン、Lussac Saint-Emilionリュサック・サンテミリオン、Puisseguin Saint-Emilionピュイスガン・サンテミリオンです。

栽培品種は、メルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベック、カルムネールを主要品種とし、補助品種としてプティ・ヴェルドを10%未満まで認めている。実際には、多くのワインがメルロ主体。

サンテミリオンの格付けは、第一特別級(プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ)と特別級(グラン・クリュ・クラッセ)の2階級となるが、第一特別級は上級のAとその下のBに分かれるため、実際には3段階である。最新の2012年の格付けで、これまでシャトー・オーゾンヌとシャトー・シュヴァル・ブランの2シャトーのみが君臨していた最高位の第一特別A級に、新たに加えられたシャトー・パヴィとシャトー・アンジェリュスの2つを覚えておきましょう。

▼この章に関連した動画▼

ポムロールとラランド・ド・ポムロール地区

サンテミリオンの北西に隣接するポムロールは、バルバンヌ川を境として、南にポムロール、北にラランド・ド・ポムロールがあります。粘土質の土壌でメルロが生産品種の80%を占めます。ポムロールのシャトーはいずれも規模が小さく、生産量が限られているため、他のA.O.C.ワインより高価なものが多くなっています。粘土に含まれている酸化鉄の影響で、官能的なフレーバーが醸成されるのが特徴です。

主要なA.O.C.ワインはPomerolポムロール、Lalande-de-Pomerolラランド・ド・ポムロールです。

フロンサデ地区

ポムロールやラランド・ド・ポムロールとイル川を挟んで西に位置しているフロンサデ地区は、「モラス・デュ・フロンサデ」と呼ばれる軟質砂岩と粘土石灰質が混ざった土壌を持ち、主要品種は、メルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン。補助品種としてマルベック、プティ・ヴェルド、カルムネールも認められているが、主要品種は比率で80%、ブレンドで50%を占めなければならず、カルメネールとプティ・ヴェルドの比率は、それぞれ10%以下と定められています。

主要なA.O.C.ワインはFronsacフロンサック、Canon Fronsacカノン・フロンサックでどちらもメルロ主体の赤ワイン。

コート地区

ガロンヌ川、ドルドーニュ川、ジロンド川の沿岸に位置するコート(丘)地区は、その名の通り丘陵地の斜面にブドウ畑があります。単なるコート・ド・ボルドーは赤のみに認められていますが、旧産地名がついたコート・ド・ボルドーは赤や辛口白、甘口白がありバラエティに富んでいます。

主要なA.O.C.ワインはC ôtes de Bordeaux コート・ド・ボルドー(赤)、Cadillac Côtes de Bordeauxカディヤック・コート・ド・ボルドー(赤)、Castillon Côtes de Bordeauxカスティヨン・コート・ド・ボルドー(赤)、Blaye Côtes de Bordeauxブライ・コート・ド・ボルドー、(赤、辛口白)、Francs Côtes de Bordeauxフラン・コート・ド・ボルドー(赤、辛口白、甘口白)、新たに加わったSainte-Foy Côtes de Bordeauxサント・フォワ・コート・ド・ボルドー(赤、辛口白、半甘口白、甘口白)です。

赤用品種の規定は全 A.O.C. 共通で、メルロ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベックを主要品種とし、補助品種のカルムネールの作付けは10%未満、プティ・ヴェルドは15%未満。マルベックを必ずブレンドしなくてはならず、補助品種の比率は15%以下と定められています。白用品種は、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、セミヨン、ミュスカデルを主要品種とし、コロンバール、ユニ・ブランが補助品種で、その作付け比率は、15%以下とします。

他にも、 Côtes de Bourgコート・ド・ブール(赤、辛口白)、Blayeブライ(赤)、 Côtes de Blayeコート・ド・ブライ(辛口白)も注目されている A.O.C. です。

アントル・ドゥー・メール地区

ドルドーニュ川とガロンヌ川にはさまれた広大な地域であるアントル・ドゥー・メール地区は、砂や粘土石灰など多様な土壌を持ち、同名のA.O.C.ワインをもつ辛口の白ワインで有名ですが、 A.O.C.ボルドーに格下げされるものの、赤ワインも多く造られています。また、特殊な微気候により、貴腐ブドウによる甘口ワインの A.O.Cもあります。

主要なA.O.C.ワインはEntre-Deux-Mersアントル・ドゥー・メール(辛口白)、Entre-Deux-Mers Haut-Benaugeアントル・ドゥー・メール・オー・ブノージュ(辛口白)、Bordeaux Jaut-Benaugeボルドー・オー・ブノージュ(辛口白、甘口白)、Premières Côtes de Bordeauxプルミエール・コート・ド・ボルドー(甘口白)、Cadillacカディヤック(甘口白)、Loupiacルーピアック(甘口白)、Sainte-Croix-du-Montサント・クロワ・デュ・モン(甘口白)、Côtes de Bordeaux Saint-Macaireコート・ド・ボルドー・サン・マケール(辛口白、甘口白)、Graves-de-Vayresグラーヴ・ド・ヴェイル(赤、辛口白、甘口白)です。

ソーテルヌ&バルサック地区

グラーヴ地区の南部に位置し、貴腐ワインで知られているソーテルヌ&バルサック地区は、ブドウが熟す秋口に川面から発生する霧の湿気によってボトリティス・シネレアという菌がブドウ畑に広がり、ブドウは水分が蒸発することで貴腐化し、こうして糖分、フレーバー、酸の凝縮した貴腐ブドウとなります。

主要なA.O.C.ワインはSauternesソーテルヌ(甘口白)、Barsacバルサック(甘口白)、Céronsセロンス(甘口白)です。主要品種は、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデル。果皮の薄い品種のほうが貴腐化しやすいため、多くはセミヨン主体となる。いずれも最低残糖量が45g/L以上なければいけません。

1855年の格付けでは白ワインも格付けされ、ソーテルヌ、バルサックのワインが対象とされた。シャトー・ディケムは別格扱いで、1級のさらに上のプルミエ・クリュ・シュペリュールに選ばれ、その下に1級のプルミエ・クリュ、2級のドゥジエム・クリュの計21シャトーが格付けされた。現在は27のシャトーが格付けされています。

ピックアップ記事

関連記事一覧