ワインの品質を上げる「選果」の手法


品質の高いワインを造る上で、ブドウの栽培過程はワインの本質や個性を引き出すための重要な作業です。そして収穫したブドウはより健全なものを選ぶことでワインのポテンシャルをたかめることができます。この工程を「選果」と言います。
醸造の前にはこの「選果」という作業があり、こちらも醸造前の作業としてとても重要です。
古代より収穫したブドウはそのまま大桶に入れズミカルに足で踏みつけて圧搾していたというイメージもありますが、温度管理の出来るマロラクティック発酵など進化する中、大事な作業でもある選果はどのような手法で行っているのかを今日は紐解いてみたいと思います。
選果とは?
収穫時にブドウから未熟なものや劣化したもの、葉っぱや不要な物を取り除く作業を選果といいます。
ブドウ本来の特徴を引き出すためには、雑味となるものを除去しなければなりません。いかに上質なワインに仕上げるために、ここは欠かせない重要な工程となります。
選果を行うタイミングはいくつかあります。
ブドウの樹から収穫するとき
畑でブドウの樹から収穫する時に劣化したものは除いてしまいます。まずは第一段階の選果と言えるでしょう。
収穫した後のブドウを選果
畑では出来なかった選別を収穫後に行います。房の状態で未熟なものや劣化したもの、葉などの不要物を手作業や機械などで行います。
除梗したあとのブドウを選果
果実のついたブドウの房から梗を取り除き果粒のみの状態で行う選果です。最終的に状態の良い果粒のみを選果していきます。
どうやって選果するの?

収穫後の選果方法には大きく分けて2つあります。
果粒のついた房の状態。梗を取り除く除梗後に果粒のみの状態の2回行うのが一般的です。
手作業での選果
収穫後のブドウをハサミや手で未熟なものや劣化したもの、葉っぱや不要な物を取り除きます。小さなワイナリーではコンテナからひとつずつ手作業をするところもあります。
ほとんどのワイナリーが選果台を使って行います。
選果台はベルトコンベア式が多く複数人で行います。そうしてより精度の高い選果を目指します。
機械での選果
こちらもベルトコンベアなどでブドウ選果をします。ベルトが振動して網目から不要物を落としたり高速で果粒を流したりして、軽い葉や梗などが飛ばされるものなどがあります。物理的に取り除く機械ですね。
もうひとつに光学式の選果機があり、光レーザーなどで粒の大きさや糖度、不要物を瞬時に判断してエアーなどで分別できます。非常に高額(→通常の物と光レーザーの価格はどれくらいか・またはどれくらい差があるのか)ですが人手や作業時間が大幅に軽減されます。
それぞれこだわりを持つ選果の手法

選果は熟練した技術で人手のかかる作業でもあります。
「手作業」という事にこだわりを持つワイナリーでは、その時期だけ慣れていなくとも頼むアルバイトやボランティアなどを入れないところもあります。
または機械式であればブドウにストレスがかかってしまうことを避けたいという考えから、手作業を選ぶ造り手さんもいます。
しかし全てのワイナリーで品質を上げるために人手を集めることは難しく、工夫が必要となります。
例えば収穫前に普段から畑を知る作業人をかり出して、先に劣化したもののみを切り落として収穫を行います。なるべく効率よく作業ができるような工夫ですね。
手摘みが義務付けられているシャンパーニュ。果皮や種子は取り除くので多少の葉や梗などが入っていても果汁のみを使うので選果しなくとも問題はないと考えている生産者が多いようです。
まとめ
醸造の前にも様々な工程がある中でも選果は大変な作業ではありますが、良質なワインを作り上げるために欠かせない作業であることに違いありません。「選果は栽培の延長線にある作業だ」と考える栽培家もいます。あまりスポットのあたらない選果。上質のワイン造りには重要な作業だったのですね。このような作業を積み重ねてできるワインを今夜も美味しく頂けることに感謝です。

ライター 鎌田 陽(かまだ ひかる)
元ホテルマン。レストランを中心にソムリエとして勤務。ワインに関わって約10年、メーカーズディナーなどのイベントを企画・開催「ワインは人を幸せにする飲み物」をモットーにフリーランスライターとして活動中!