1450年創業のクロアチアワインの生産者を訪ねて

クロアチアといえば、まず初めに思い浮かべるのは、スタジオジブリ「紅の豚」の舞台となった美しいアドリア海沿いの町「ドゥブロブニク」ではないでしょうか。
青く美しい海と瓦屋根のオレンジ、中世の面影を残した街並みと城壁は誰もが憧れる絶景です。
・・・と、海の街を連想していただいたところで、今回訪問したのは、そんな海岸沿いからは遠く離れた(!?)内陸の小さな町、首都ザグレブから350kmほど東にある「イロク」。
このイロクの街で古くからワイン造りをしている「イロチュキ ポドゥルミ」です。
ハンガリーのパンノンハルマ修道院から長閑な平原を車で走ること4時間半、「Ilok」の看板を発見です!

イロクの標識

一車線ずつの道路をスリリングに抜きつ抜かれつしながら「イロチュキ・ポドゥルミ」にたどり着くと、オーナーのユラ・ミハエルビッチ氏と、輸出や営業を担当しているカルメラさんが私たち歓迎してくれました!

ユラ・ミハエルビッチ氏

カルメラ氏

15世紀に城郭の地下に造られた、世界で初めてのワイン専用のセラー

15世紀に建てられた城郭の上に立つ博物館

博物館の地下にあるセラー

イロチュキ ポドゥルミの歴史は古く、1450年までさかのぼります。
当時周辺を治めていたニコラ・イロチュキ王が1450年に、古い城郭の地下にワインセラーを建設したことがこのワイナリーの始まりです。
このセラーは、世界で初めて造られたワイン専用の保管庫だったと言われています!
その後、時は流れて1697年にオデスカルキファミリーがこのお城にやってくると、今度はオデスカルキファミリーが、良質なワインを保つために自家で瓶詰めを始めます。
当時、町で飲まれているワインは、どこからか買ってきたワインを詰めていたところが多かったので、品質が保証されていませんでした。ファミリーは自分たちのワインのクオリティと評判を保つために、セラーを再稼働して瓶詰めを始めました。
フランス・ボルドーで行われる200年以上も前から瓶詰めをしていたというから驚きです!
このセラーの上の建物は現在博物館になっています。

1944年に第二次世界大戦の戦火で城は破壊されてしまったままでしたが、2003年に現オーナーのユラ・ミハエルビッチ氏が再建しました。

さて、可愛らしいワイナリーのレストランを抜け、早速セラーを拝見・・・
・・・とおもいきや、こちらは現在改装中。
イロチュキにはセラーが3つあり、こちらはなんと、会員制のワイン倶楽部を立ち上げ、お客さんがプライベートワインを造って保管できるセラーに改装している最中とのこと。
自分のオリジナルワインが造れるなんてロマンチック・・・
中は拝見させてもらいましたが、もう少しで完成!というところでした。

改装中のセラー

クロアチア流おもてなし

フライドチキン

クーレン

パラツィンカ

セラーを見せてもらった後は待ちに待ったランチの時間!
ビーフコンソメのパスタスープ、フライドチキンとサラダ、そしてクロアチアの伝統的な保存食KULEN(クーレン)とパラツィンカでおもてなししてくれました。
クーレンは豚の腸の皮にハーブやパプリカを詰めたものを次のイースターまで干したクロアチアの伝統的な保存食で、味はサラミのようでした。
パラツィンカも伝統的なクロアチアのデザート。もっちりした温かいクレープで、アイスとナッツと一緒にいただくのですが、クレープ自体が甘くないのであっという間に完食です!

偉大なるドナウのパワー、2000年以上の伝統、ユニークなテロワールを反映したワイン

イロチュキの畑

食事の後は車で葡萄畑へ!
イロチュキのワイン造りで最も重要なことの一つが畑の土壌です。
ヴコヴォ(vukovo)とプリンシパヴァ(Principovac)という2つの区画を含むイロク一帯は、他のエリアが大雨や湿気が多い時でも、いつも良く晴れて風通しが良いため、畑にストレスが掛かりません。
土壌は粘土、砂、堆積した土で水はけのよい恵まれた土壌です。
2つの畑はドナウ川に向かってなだらかな傾斜になっています。

イロチュキの所有する畑は全部で360haあり、ヴコヴォ135ha、プリンシパヴァ125ha、残り100haが信頼するパートナーの農家の畑です。

ヴコヴォの区画ではセレクションワインのブドウを植えており、ドライでフレッシュでカジュアルに楽しむワインなので、酸味を保つためにスクリューキャップを採用しています。

プリンシパヴァの区画はヴコヴォより少し高い場所にあり、プレミアムワインのブドウを植えています。こちらの畑のワインはドライだけど強くてリッチでエレガントな味わいのワインが出来ます。
シングルヴィンヤード(プリンシパヴァの区画を所有しているのはイロチュキのみ)であることも大きな特徴です。

クロアチアの土着品種グラシェヴィーナ

ヴコヴォの区画

さて、イロチュキ ポドゥルミではグラシェヴィーナという品種を使ったワインが多く造られています。
このグラシェヴィーナは、元々は北イタリア原産でオーストリアのヴェルシュリースリングやハンガリーのオラスリズリングと同一品種として知られていましたが、最近の調査でクロアチア固有のDNAのブドウだということが分かりました。
味わいは、独特のほろ苦いアフターが特徴です。青りんごやシトラス、白桃などの香りがあります。

最新技術を使った醸造

醸造設備

イロチュキの醸造所では常に温度管理をしながら全部で11,000,000ℓのワインを製造しているため、夜中も稼働しています。
収穫して運ばれてきた葡萄を写真の機械を使って除梗し、冷却してプレスし、パイプを使ってジュースを上部のタンクに移します。
町で売られているハウスワイン(クロアチア国内の3,000以上のレストランで使われています!)は、契約農家の葡萄を使いますが、機械で糖度、Ph、温度を測ってランク分けしています。
徹底した温度管理など新しい技術を使わなければ、今のようなユニークでフレッシュでクリスピーなワインは造れないため、最新の、高価なシステムを導入しています。

たくさんの輝かしい受賞ワインとそれを支えるチーフエノロジスト

チーフエノロジストZIMA氏(右)

Mrs.VERA ZIMAがチーフエノロジストとしてイロチュキのワインの醸造を担当しています。
彼女が醸造したイロチュキのワインは世界中のワインコンクールで評価されてメダルを受賞し、クロアチア国内でも最も多くの賞を獲っています。

英国王室献上ワイン

Traminer selected berry harvest 2015.jpg

歴史あるイロチュキ ポドゥルミですが、その長い歴史の中でも最も栄誉ある出来事といえば、1953年のエリザベス女王即位の際に11,000本のトラミナックプレミアムを献上したことです。
それ以降、チャールズ皇太子のクロアチア訪問やウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式、そして今年5月のヘンリー王子とメーガン妃の結婚式にもイロチュキのワインが納められました!
イロチュキ ポドゥルミのワインは、現在でも英国王室のワインリストにオンリストされています。

年に一度の収穫祭

収穫祭その1

収穫祭その2

さて、イロチュキを訪問したこの日の夜、ワイナリーから車で1時間半ほどの街「VINKOVCI」では、VINKOVACKE JESENI(ヴィコヴァチケ イェスニ)といわれる年に一度の収穫祭が開かれていました。
そこで私たちもお祭りに参加することに・・・!
このお祭りは農作物の収穫を祝うお祭りで、クロアチアの伝統衣装を着た地元の人々が楽器を演奏したり、伝統音楽に合わせてみんなが輪になって踊ります。
なんと2週間も続くというこのお祭りは、クロアチア国外からも多くの観光客が参加します。屋外のレストランでは大勢の人がクロアチアの伝統料理とワインを楽しんでいました。

クロアチアの郷土料理

サールマレ

サールマレ

鯰のグリル

クロアチアだけでなく、ルーマニアやモルドヴァでも食されているという東欧の郷土料理「サールマレ」は酢漬けにしたキャベツで巻いて煮込んだロールキャベツ。
キャベツの酸味がスープに溶け込んで、さっぱりとした味わいです。
そして鯰のグリル。ナマズ、と聞いてつい泥臭い味をイメージしてしまいましたが、火で炙った鯰は臭みがなく香ばしくて美味でした!
このお祭り会場でもイロチュキのワインがあちらこちらで楽しまれていましたよ。

お祭りで提供されたワイン

ワインの炭酸割り

また、クロアチアでは白ワインを炭酸で割る飲み方が親しまれていました。
暑い日にはビール感覚でゴクゴク飲めますし、食事の後半からワインに炭酸を注ぎ足して飲む人が増えます。
自分のペースで気軽にワインを楽しむスタイルは、気取らずリラックスしていて、心からワインと食事とそして友人たちとの時間を楽しみたいというクロアチアの人たちの気質がそのまま表れているようでした。

新しい取り組み

海中で熟成させたワイン

イロチュキでは、さまざまな新しい取り組みをしています。前述したように、会員制のワイン倶楽部でオリジナルのワインを造ることもそうですが、そのほかに現在、海中でワインを熟成させる試みをしています。
グラシェヴィーナ(2011VT)を8月に海中に沈めて、一年後に引き上げます。
海中から湧く7℃の湧き水を利用してワインを1年熟成させ、海中熟成ではない通常キュヴェと飲み比べるのです。販売は2015VTからです。

創業500年以上の伝統を大切にしながらも、常に新しいアイデアを探し、それを実現させていくイロチュキ ポドゥルミがこれからどのように進化し、ワインを造っていくのか、今後も目を離せません!

まだまだ日本では珍しいクロアチアのワイン。
遠い東欧の国に思いを馳せながら、皆さんも一度飲んでみませんか?
ドナウのパワーとクロアチアならではの地場葡萄、テロワール、楽しみ方・・・きっとまたワインの世界が広がることと思います♪
今回の訪問で美味しいワインとの出会いもありましたよ!
きっと皆さまに、まだ見ぬ新しい、美味しいワインをお届けできる日が来ると思いますので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。