ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー(2018.7.17)

ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー

2018年7月17日、ボジョレーの造り手ドメーヌ・デュ・ビュイロンの当主、 ティエリー・ハレルさんが奥さんのソフィーさんと来日しました。

猛暑の中、都内某所で昨年(2017年)彼らの造った「ボジョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー」と「コトー・ブルギニョン・ルージュ・キュヴェ・アロブロジカ 2016」をテイスティングしながら、ティエリーさんの生い立ちや、ワイン栽培・醸造についてのこだわり、ヴァン・ナチュールについての考えなどについてお伺いしました。

代々受け継いで来た土地のルーツは15世紀

ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー

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【Q】まず、どんな環境で育ったか、またドメーヌの歴史を教えてください。
【A】私は1953年にボジョレーの地に生まれました。代々受け継いできた土地は15世紀までルーツを遡ることができます。かつては造ったワインを樽で売ったりしており、祖父の栽培したブドウをネゴシアンに納め、出来たワインを貰うといような物々交換のようなスタイルでブドウ栽培やワインに関わっていました。

また私の父はシトロエンに勤めていました。

25歳までディジョンにある醸造大学でワインについて学び、その後、コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエやルロワ等で研修し、1980年に家族の後を継ぎました。

その後、私の代から栽培から醸造、瓶詰めまでを一貫してドメーヌで行うようになりました。

自分にとってワインはパッションでありエスプリを表現すること

ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー

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【Q】他の道に進むことも出来たと思いますが、ワイン造りの道を選んだ理由を教えてください。
【A】純粋にブドウ畑での作業、そしてワインの醸造と、ワインに関わるすべての営みが好きで、憧れもし、気がついたらこの道を選んでいました。自分にとってはそれがパッションなのです。

栽培からワインにまでいたるまで、同じエスプリを表現していくことに魅力を感じ、それが全てだと言えます。

家族のルーツがボジョレーであり、私がこのワインの世界に入ることはごく自然なことでした。

「タイミングを逃さない」ことが何より大事

ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー

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【Q】栽培と醸造で気を付けていることや重要だと考えていることはなんでしょうか?
【A】栽培と醸造を通じて言えるのは、「タイミングを逃さない」ということが何より大事だということです。

「今がその時期」というそのタイミングで、妻も含め可能な限り人をかき集め巻き込んでの一丸となって作業します。

たとえば収穫はもとより、寒い冬の作業、発芽時期の作業、畑の針金を貼り直す作業などなど、、今がこの時期という、その時期に、それらもろもろのタイミングを逃さないことがとても大事なのです。

またそのタイミングはお天道様次第ということも出来ます。

収穫のタイミングについて言えば収穫前にブドウの味を丁寧にチェックしています。

ブドウの実を口に含んだ時の甘み、酸味などの果実味や、種も噛んだりと(タンニンをチェックするため)、総合的なバランスを定期的にチェックします。そこで「このバランスだ」と思った時が収穫のタイミングとなるのです。

ここまでが最初のステップ。次に醸造ですが、ブドウの重みで果汁をプレスするのですが、その最初のジュースを飲みます。

それは当然甘いのですが、そのジュースを味わい、それがどう変化していくかということをイメージしながら醸造のステップを進めてのです。

これも大事なのはタイミングです。

そして毎年シンプルで、かつ流用できるような仕組みを構築し、かつ実践していく。

当然のことながら改善点も出てくるので、それらを改善し、シンプルですが毎年同じプロセスでワインを作っていく。

これらが私たちが注力しているポイントです。

ワインは「土地の血液」

ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー

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【Q】比較的早い時期からオーガニック栽培に移行していますがその経緯を教えてください。またオーガニックワインであることの必然性についてどう考えているかも教えてください。
【A】オーガニックワインについては1998年にスタートしました。畑の無農薬への転換が1998年。そして2001年にオーガニック認証を取得しました。

ビオディナミの認証制度が出来たのは1991年頃でしたが、2001年当時でも、ボジョレーの生産者でオーガニック認証を取得している生産者は2〜3生産者ほどだったので、おっしゃるように比較的早い段階でオーガニックに移行しています。

なぜ比較的早くオーガニック栽培に移行したのかというと、その土地の味、言わば「ワイン=土地の血液」ということを正確に表現したいと考えていたからです。

外から物質を取り寄せて畑に混入すると、その土地の個性が薄れていってしまうのです。

外来品を持ち込まず、オーガニック栽培を実践することが土地の個性を守ることに繋がるという考えのもとで「ワインは土地の血液」と考えるならば、そうした営みは、ロジカルに明白なことであり、オーガニック栽培に移行したのは必然的なことでした。

ブルゴーニュワインを構成するルーツを表現したかった

ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー

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【Q】キュヴェ・アロブロジカについて教えてください。
【A】ご存じの通りローマ時代に我々の土地にはガリア人が住んでいました。

当時「アロブロジュ」という部族がローナルド地方に住んでいて「Vitis Allobrogica(ヴィティス・アロブロジカ)」というワインの表記がローマ時代の文献に見られます。

これはブドウ品種の名前で、一説によれば、現在のブルゴーニュワインを構成している、モンドゥーズやアリゴテもそうですが、生みの親、先祖なのではないか、と言われていて(確証はないが)私たちはそう考えています。

そのブドウのルーツとなったアロブロジカの名前をワイン名とすることで、土地の歴史と個性を表現したかったのです。

このキュヴェ・アロブロジカはボジョレーで作っているワインですが、ピノ・ノワール100%のワインです。

ただし樽に入れたあとのウイアージュ※にガメイを足しているので、ベースはピノ・ノワール100%ですが、結果的に概ねピノ・ノワール90%、ガメイ10%ほどのワインに仕上がっています。

我々はコート・ド・ニュイに似た畑を所有しています。つまり、そのパーセルは粘土質で南向きの斜面、日照条件が良く、土っぽさがブドウ、そしてワインに現れます。

キュヴェ・アロブロジカではその畑に代表されるようなコート・ド・ニュイっぽさを表現しています。

※ウイヤージュ:樽熟成中に蒸発しワインが目減りした分、ワインを継ぎ足すこと。

将来的には植樹本数を半分に

ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー

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【Q】息子さんが、ドメーヌで重要な役割を担いつつあると聞いていますが、息子さんのワイン造りの特徴を教えてください。
【A】私たちは現状は1ヘクタールあたり約1万本のブドウを植樹していますが、息子は将来的に、植樹本数を半分、つまり5,000本程度に制限しようとしています。

より土地の個性を表現したいということはもちろんですが、近年、湿度の高さによる病気が増えてきています。

そこで、ブドウの実をなるべく高い位置で実らせ、湿気の影響を受けにくくすることが大事になるのですが、一方で実を高くしすぎると、そのことで発生するうどん粉病などの病気もあり、そのバランスに気を使っています。

10年単位でみると収穫が1週間づつ前倒しになってきている。

ドメーヌ・デュ・ビュイロン インタビュー

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【Q】今日の東京はとても暑いです。フランスも年々気温が高くなっていますが地球温暖化についてどうお考えですか?
【A】もちろん温暖化についてはとても意識しています。

1980年代は収穫開始は9/15頃で、レイトハーヴェスト分でも10月初旬の収穫でした。それが1990年代には収穫開始は9月5日~7日頃。遅摘みは9月25日頃。

2000年代の収穫開始時期は8月末。遅摘みは9月15日頃。
2010年代になると収穫開始時期はは8月中旬となり。遅摘みは9月の一週目となっています。

つまり10年単位で一週間収穫が前倒しになっているのです。

もちろんブドウが良く実ることで糖度が高く、ワインは官能的な味わいになってきていることはありますが、収穫時期についてはブドウの味をみるだけでなく、計器でチェックするなどして、バランスのワインになるよう毎年対応しています。

日本で綺麗に開いた自分のワインを味わっていることに感動を覚える

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【Q】ご自身の造ったワインが日本で飲まれているということについてどう感じていいますか?
【A】日本で自分のワインを飲んでもらうことは若い頃からの夢でした。というのも、私がディジョンの醸造学校で勉強していた頃に、一緒に勉強していた日本人がいました。とてもワインについての詳しい方で、それで日本人に興味を持つとともに、同時に自分の造ったワインをいつか日本に輸出し、日本の方々に飲んで欲しいと思うようになりました。

そして、実際に船便や航空便で私たちのワインが日本に運ばれ、このように、今まさにティステイングしていると、深い感動を覚えます。またワインが綺麗に開いていてとても美味しく感じます。

※インタビュー中、2017のボジョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォーをティステングし、奥さんのソフィーさんが「よく開いていて美味しい」と感激していました。

ワインの香りは図書館のようなもの

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【Q】最後に2018年のブドウの生育状況について。また日本のヌーヴォーの消費者に対するメッセージをお願いします。
【A】まず生育状況についてですが今年(2018年)の5月はとても暑かったです。ブドウの生育には3段階ありますが、今年は5月頃のブドウの幹が伸びる第一生育期に、樹がとてもよく成長し、ブドウの実が高いところで結実しました。

6月になると湿気と寒さが訪れました。通常であれば湿気に起因する様々な病気が懸念されるところでしたが、ブドウの実の高さが幸いし、特にトラブルもなく順調に生育が進みました。

現在(7月)は、日本と同じくとても暑いです。

ボジョレーではよく言われることに「5月は8月」という表現があります。これは5月は8月もブドウの生育にとって重要な月であり、5月の天候と8月の天候、特に日照量が似通ったものになることが多いからです。

2018年ヴィンテージについては、、

生産者としては毎年希望を持ちたいですね、、「毎年最高の出来」と思いたいですが(笑)、いずれにしても自然の力次第、お天道様次第です。

次に、日本のワインの消費者へのメッセージということですが、これはメッセージというよりもワインの楽しみ方についてということになりますが、偏見のない純粋な心でワインを楽しんで欲しいと思います。

まず色を見て、香りを嗅ぎ、そして味わいを楽しみ、ワインが見せてくれる魅力的な世界観を感じ、想像することで自分の世界を拡げて欲しいです。

ワインの香りは図書館のようなものです。ワインを飲むたびに接する香りは、記憶に蓄積され、人生を豊かにしてくれるのです。

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